闇の中の光 まとめ読み
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季節はまだ肌寒さを残す春。
青く澄んだ海を見渡せ、緑の森がすぐ後ろにある崖の上。
ここには墓代わりに作られた、粗末な十字架に見立てられた木が2つ並んでる。
この崖は一般人では簡単に辿り着けない場所にある上に、そもそも後ろの森に誰も深入りしようとしない。
私は自分で作った墓と呼ぶには苦しい出来のものに向かって呟いた。
「お母さん、」
もちろん、墓に呼び掛けても返事は来ない。
「お兄、ちゃん」
自然と声が震えてくる。
何回呼んだって同じことなのに。
頭では分かってる。
分かってるよ、そんなこと……!
「てめぇか」
ふいに低い声が後ろからした。
振り返ると顔が傷だらけの男がいた。
気配を感じなかった。
否、感じることが出来なかった。
誰もここに来ないと思いつつ、一応注意は払っていたつもりなのに。
この男、ただ者ではない。
頭の中で色々な考えを巡らしていたらまた話しかけられた。
「"黒の狂犬"ってのは、てめぇのことか」
右手が自然とピクッと動く。
「……そうだよ。でもその通り名はあんまり好きじゃないな。で、こんなところに何しに来たの?」
「はっ、察しがいいな。オレの下で働かねぇか?」
……成る程ね。そういうことか。
どこかの組織の幹部だろうか、態度がずいぶんとでかい。
前置きなしで本題に入るあたり、拒否権はないといったようにも聞こえる。
まあ、私の答えはいつも決まっているけどね。
「悪いけどそれは出来ない」
どこの組織も一緒。
私が暴走してしまえば──壊滅してしまう。
居場所がなくなるのは嫌だ。
大切なものを失うのももうたくさんだ。
だったら最初から作らなければいいだけの話。
だから作らない、居場所も仲間も……。
本当は喉から手が出るほど欲しい。
でもそれ以上に怖い。また失ってしまうのが。
そんな想いを知ってか知らずか彼は私にきっかけを与えてくれた。
「てめぇが何しようが簡単に壊れるほど脆くねぇよ、うちの組織は」
この鋭い紅い目は……。
どうやら、この男の言うことは信用していいらしい。
早く結論を出せ、と言わんばかりに後ろの森がザァァと揺れる。
──答えは決まった。
「来い、ヴァリアーへ。オレはそこのボスのXANXUSだ、てめぇの名前は何だ」
「私の、名前は──」
お母さん、お兄ちゃん、聞こえてる?
こんな私にもまた居場所ができたよ。
→1話
青く澄んだ海を見渡せ、緑の森がすぐ後ろにある崖の上。
ここには墓代わりに作られた、粗末な十字架に見立てられた木が2つ並んでる。
この崖は一般人では簡単に辿り着けない場所にある上に、そもそも後ろの森に誰も深入りしようとしない。
私は自分で作った墓と呼ぶには苦しい出来のものに向かって呟いた。
「お母さん、」
もちろん、墓に呼び掛けても返事は来ない。
「お兄、ちゃん」
自然と声が震えてくる。
何回呼んだって同じことなのに。
頭では分かってる。
分かってるよ、そんなこと……!
「てめぇか」
ふいに低い声が後ろからした。
振り返ると顔が傷だらけの男がいた。
気配を感じなかった。
否、感じることが出来なかった。
誰もここに来ないと思いつつ、一応注意は払っていたつもりなのに。
この男、ただ者ではない。
頭の中で色々な考えを巡らしていたらまた話しかけられた。
「"黒の狂犬"ってのは、てめぇのことか」
右手が自然とピクッと動く。
「……そうだよ。でもその通り名はあんまり好きじゃないな。で、こんなところに何しに来たの?」
「はっ、察しがいいな。オレの下で働かねぇか?」
……成る程ね。そういうことか。
どこかの組織の幹部だろうか、態度がずいぶんとでかい。
前置きなしで本題に入るあたり、拒否権はないといったようにも聞こえる。
まあ、私の答えはいつも決まっているけどね。
「悪いけどそれは出来ない」
どこの組織も一緒。
私が暴走してしまえば──壊滅してしまう。
居場所がなくなるのは嫌だ。
大切なものを失うのももうたくさんだ。
だったら最初から作らなければいいだけの話。
だから作らない、居場所も仲間も……。
本当は喉から手が出るほど欲しい。
でもそれ以上に怖い。また失ってしまうのが。
そんな想いを知ってか知らずか彼は私にきっかけを与えてくれた。
「てめぇが何しようが簡単に壊れるほど脆くねぇよ、うちの組織は」
この鋭い紅い目は……。
どうやら、この男の言うことは信用していいらしい。
早く結論を出せ、と言わんばかりに後ろの森がザァァと揺れる。
──答えは決まった。
「来い、ヴァリアーへ。オレはそこのボスのXANXUSだ、てめぇの名前は何だ」
「私の、名前は──」
お母さん、お兄ちゃん、聞こえてる?
こんな私にもまた居場所ができたよ。
→1話