昨日の雨が嘘だったように晴れた朝。
小鳥もさえずりながら空を飛んでいる。


「ん……朝…？」


目を開けると隣にはティアラをしたままのベルがいた。
体の下には布団、つまりベッドの上で寝ているのだ。

勢いよく起き上がって周りを見渡すとお菓子の袋や衣服が散らばっていた。

この汚さ……
間違いない、ベルの部屋だ。

前に1回だけ見たことある。
初めての任務という名の入隊試験の日だ。


「やーっと起きたか」

「……何で私、ベルの部屋で寝てるの？」

「だって昨日、お前が雷にビビってオレに抱きついてきてそのまま眠ったじゃん」

「本当に？まさかとは思うけど変なことしてないよね」

「何で王子が嘘つかなきゃなんねーの。しかもお前になんかちょっかい出さねーし。つか、お前が離してくんねーから風呂にも入れてないんだけど」


ベルはダルそうにベッドから下りて浴室に向かった。
覗くなよ、という警告と共に扉を浴室の閉めた。


「誰が覗くか」


ベルに聞こえないように呟いて部屋を出た。

廊下を歩きながら考える。

もしかしたら、ベルの近くでは安心して眠れるのでは──…。
いや、そんなことはあるはずがないと脳内で否定する
しかし、否定しきれない自分もいる。
もしこれが事実であるのなら、何故そうなるのかが分からない。

いや、分かる必要もないだろう。
無理やりその考えを振り払った。


「あーあ、雷と暗闇が怖いだなんて……バカにされるだろうな」


あの暗くて怖い闇の中、おぞましい光から必死に守ってくれたのはたった1人のお兄ちゃんだけ。

たった1人の私のヒーローだけなんだ。

まさかベルに守ってもらうなんて夢にも思わなかった。