テーブルの上が綺麗に片付いた頃、天気は最悪だった。
ついには雷まで鳴り出した。
そして大分近い場所に落ちたのか、ドーンという激しい音がした。

その直後、1人が動いた。


「……おやすみ」

「おい貴様、何故逃げる。怖いのか？」

「は？そんなわけないじゃん。それはレヴィが1番分かってんじゃないの？」

「うしし、すげー動揺してんだけど」

「ベルまで何言って……」


その瞬間、電気が消えた。


「あら、雷のせいでブレーカーが落ちたのかしら。真っ暗で何にも見えないわ」

「って、どさくさに紛れてどこ触ってんだぁ！かっ捌くぞぉ！」

「……」

「オレの財布を盗もうとしてんのはマーモンだな？こんなことすんのはマーモンしかいねぇよな？」


スクアーロがポケットに入れていた財布を盗まれそうになっていると電気がついた。
そこにはある異変があった。


「……何座ってんの？」


ベルがしゃがみこんでいるエルザに近づこうとするとまた電気が消え、部屋が暗くなった。

外では雷が轟いた。


「ひゃっ」

「うわっと」


エルザは思わずベルに抱きついた。

自分の腕の中で震えているエルザを見てベルは優しく背中をポンポンと叩いてやった。

その光景に皆が驚きつつも、1つの考えに到達した。


「エルザちゃんの苦手なものって、もしかしたら雷？」

「それはない。オレが試した」

「じゃあ暗闇かしら」

「暗殺者が暗闇を怖がってどうすんの。しかも王子が試したっつーの」

「つーことは暗闇と雷が合わさるとダメなのかぁ？」


停電は1分程度で直った。

安定した電気の供給。
もう暗闇に慣れた彼らには必要のない光が戻ってきた
むしろ眩しく感じるほどだ


「ベル、エルザはどんな様子だぁ？」

「……寝てる」


エルザはベルの腕の中で立ったまますやすやと眠っていた。
顔はベルの胸の中に沈めている。

雷は止み、エルザの規則正しい呼吸が聞こえるほど静かになった。

ベルは立ったまま寝たエルザを器用にお姫様抱っこの体制に持ち込んだ。


「寝かしてくる」

「ん……お…兄ちゃ、」


ベルは他の幹部たちに背を向けて、その場を去った。

エルザの声はベルにしか聞こえなかった。