17時、太陽が町全体を真っ赤に染めあげる時刻。
私は目を覚ました。


「やーっと起きたか」

「何でここにいるの？」

「あのオカマヤローに無理やりいさされたんだよ」

「私は……？」


確かお腹を満たすために屋敷に入ったらルッスーリアに会って……。
それで思いっきり蹴りを入れられたのか。

記憶が曖昧だが、そんな感じだろう。


「40度だって。大人しくしとけよ、って言ってるそばから何してんの？」


ベッドから降りようとしている私を見て、ベルは少しイラついたようだった。
声のトーンが下がった。


「ベッド落ち着かない。お腹も空いたし……」

「我慢しろって。メシなら持ってくるし」


扉が開き、閉まる音がした。

数十分後、ベルがお粥を持って戻ってきた。
なんとまぁ不思議な光景だ。

そんなことを口にしたら殺されかねないので絶対言わないけど。


「ししし、ちゃんとベッドにいたんだ」

「うん、不本意ながらね」

「はいはい、良い子良い子」


頭を撫でられたときに昨日のことを思い出した。

すると急に体中の熱が顔に集まってきたので体ごと顔を背ける。
何でこんなにドキドキしているんだろう。


「食える？」

「……」

「なんなら特別に王子が食べさせてあげようか？」

「け、結構です！」

「ししし、冗談に決まってんじゃん」


完全にバカにされてる。
最悪だ……。

恥ずかしさを紛らわすため、大人しく差し出されたお粥を食べることにした。


「なぁ、昨日何があったわけ？」

「！」

「あのオカマが何かうっさいんだよねー。スクアーロもいつもに増してなんかウザいし」


覚えてないんだ。
確かにすごく酔ってたから覚えてないことは不思議ではない。

なんだろう、1人で悩んでてバカみたい。


「別に。何にもなかったよ」


体はしんどいけど、心はスッキリした。