今日の任務、絶対退屈そー。

パーティーに紛れてたった1人を殺せと？
しかもその役目はオレじゃないとかマジふざけんな。
正装すんのめんどくせ。

オカマは忙しそうに走ってるし。
そういえば、エルザをドレスアップするとかなんとか言ってたな。

面白そうだし行ってみよ。

ルッスーリアに見つからないようにエルザがいる部屋にたどり着くのは案外簡単だった。

あいつに見つかると「男子立ち入り禁止よん」とか言ってうるさいしな。
つーかお前も男だろ。


「どうかなされたんですかベルフェゴール様」


勝手に扉が開いたと思ったらドレスを身に纏った見知らぬ女が声をかけてきた。
ハイヒールの音を響かせ近づいてき、オレの前でニッコリと微笑む。
誰だこいつ？


「何しに来たの」

「おまっ、エルザ！？」

「うん、そうだけど」


スッゲー大人びて見えた。
こいつ確かオレより2歳年下なのに年上かと思った。

女は化けるってこういう意味だったのか……。
つーか笑ったとこも初めて見た。


「変じゃない？」

「何が」

「さっきの仕草とか化粧とか、色々あるでしょ？」

「別に普通。あっ、肩にゴミついてる」


取ってやるから後ろ向け、と言ったもののゴミなんてない。
ちょっとイタズラしてやろうと思っただけ。

ゴミを取るという口実でエルザに近づき耳に息を吹き掛けた。

どんな反応をするかという純粋な好奇心だった。


「ひゃっ……な、何すんのよ変態！」

「だれが変態」

「お前だよ。触れんな近寄んなどっか行けよ」

「あら、ベルちゃん。男子は立ち入り禁止よ～」


本物の変態に玄関で待ってるよう言われたからしかたなくその場を去った。

よっぽど耳にいたずらされたことが嫌だったらしい。
にこやかに手を振るルッスーリアとは対照的に、エルザは真っ赤な顔をして睨んでくるのが去り際に見えた。