「おかーさん！おにーちゃんがぶった！」

「だってローズが…」

「喧嘩しないの。ほら、２人ともごめんなさいは？」




小さな村のありふれた日常

４歳と６歳の子どもの些細な喧嘩を止める母親


裕福ではないが『普通』である幸せがたくさん詰まっていた

子どもの父親はいない


それでも幸せだった

母子とも仲良しで今の生活に大満足だった


川は清らかで透明に近く夏の遊び場ともなり、山は豊富な山菜の宝庫

その全てがキラキラ輝いて、宝石よりも美しかった


それらを壊したのは運命という名の奇妙な巡り合わせだった──……












「……カルトちゃん、エルザちゃん！」

「…どうしたの？」

「そんなところにいたらまた風邪引いちゃうわよ。そうそう、ボスが呼んでいたわよ」

「分かった」




いつものように木から飛び降りた

また"仕事"か


溜め息をつきながら、幻となった甘い過去に別れを告げた


平和で大好きだったあの頃にはもう戻れないし、夢でしか描けない


でも……

あれを壊したのは紛れもなく、自分──