君に捧げる薔薇の告白
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(降参の神子様)
「……~~~~っ!!?」
唇に落ちてきたのは、柔らかな感触と、それとは裏腹な強烈なまでの「意志」だった。
髪を引っ張られ、強引に引き寄せられた視界の中で、ハニーの潤んだ瞳が真っ直ぐに俺を射抜いている。
(…は? え、ちょ、今の…ハニーから、した、よな?)
心臓が、薔薇を買いに走った時よりも激しく警鐘を鳴らしている。
俺様としたことが、思考が真っ白だ。
24年生きてきて、女の子にこんな風に「食われた」のは初めてかもしれない。
「もう一回っ!!」
「ふごっ……!?」
二度目の、さらに深い口づけ。
鼻先をかすめる彼女の熱い吐息と、必死に背伸びをする彼女の健気な重み。
それが、俺がどれだけ言葉を尽くすよりも雄弁に「あんたを愛してるんだ」と叫んでいるようで、
胸の奥がじんわりと熱く、そしてひどく疼いた。
(……参ったな。これじゃ、どっちが格好つけてるのか分かんないじゃん)
あんなに自信なさげに震えていたくせに。
いざ覚悟を決めたら、俺の手を引いて泥沼から引きずり出したあの時の「強さ」で、
今度は俺の心を丸ごと奪いにくる。
唇を離した彼女は、肩で息をしながら顔を真っ真っ赤にして俺を睨みつけている。
その表情があまりに愛しくて、俺は思わず、
さっき落とした薔薇よりも鮮やかな赤に染まった自分の顔を片手で覆った。
(……ああ、もう。本当にずるいのは、君の方だよ)
「…ハニー。君、それ自覚してやってる? だったら相当な悪女だぜ…?」
指の隙間から見えた俺の瞳は、きっと今、熱に浮かされたみたいに蕩けているに違いない。
「脱がしたい」なんて軽口、言わなきゃよかった。
だって、こんな顔をされたら、もう一歩も動けない。
彼女に振り回され、翻弄される心地よさ。
かつて「神子」という偶像(アイドル)だった俺を、
ただの「ゼロス・ワイルダー」という男に引き戻し、
狂わせるのは、後にも先にも、目の前のこの子だけだ。
(……一生、勝てる気がしないなあ)
俺は自嘲気味に、けれどこの上なく幸福な気分で、
再び自分からその唇を奪いに行くために、ゆっくりと腰を屈めた。
「……っ、はぁ。……ね、ゼロスくん。私の気持ち、もう疑わない?」
肩で息をしながら、真っ赤な顔で胸元を掴んでくるハニー。
さっきまであんなに自信なさげに「大勢のひとり」なんて泣きそうな声をしていたのが嘘のようだ。
俺様はといえば、まだ唇に残る熱に痺れたまま、完全にノックアウトされていた。
髪はボサボサにされ、神子としての格好良さもへったくれもない。けれど、不思議と気分は最高だった。
「……疑うわけないだろ。あんな強引なキスされたら、俺様、もうハニーの所有物になった気分だよ」
俺は苦笑いしながら、自分の頬に残ったハニーの熱をなぞった。
そして、床に散らばったオレンジ色の薔薇を一枚、指先で拾い上げる。
「あーあ、せっかくの100本が台無しだ。俺様がカッコよく決めるはずだったのに。
ハニーがそんなに熱烈なんだもん。予定が狂っちゃったよ」
「……うう、だって。ゼロスくんが変なこと言うから……っ」
急に羞恥心が戻ってきたのか、ハニーが顔を隠して蹲りそうになる。
それを逃がすほど、俺様は甘くない。
今度は俺が、彼女の細い腰を引き寄せ、逃げ場のない試着室の壁と自分の腕の間に閉じ込めた。
「ちょ、ゼロスくん……!?」
「いい? ハニー。さっきの、お返し。…今度は俺様が、ハニーを泣かせる番」
低く囁くと、ハニーの肩がビクッと跳ねる。
さっきの強気はどこへやら、上目遣いで俺を見上げる瞳は期待と不安で揺れている。
そのあまりの愛らしさに、俺の奥底にある独占欲が、ゆっくりと首をもたげた。
「自信がないなら、骨の髄まで俺様が刻み込んであげる。『君以外、何もいらない』ってさ」
指先で彼女の顎をクイッと持ち上げ、至近距離で視線を合わせる。
俺様の目は、きっと今、ハニーの心臓を止めてしまうくらい真っ直ぐで、熱い。
「……もう一回、していい?」
「……っ。ずるい、聞かないでよ……」
「はは、そうだね。ハニーが先に始めたんだ。……最後まで付き合ってもらうぜ?」
今度のキスは、さっきの熱烈なやつとは違う。
とろけるように甘くて、深くて、逃げる隙間も与えないような。
オレンジ色の薔薇の香りに包まれた狭い空間で、俺たちは何度も、何度も、
互いの存在を確かめるように唇を重ねた。
「……愛してるよ、ハニー。俺様の全部を、君にあげる」
耳元で誓う言葉は、誰にでも言う甘言じゃない。
24歳のゼロス・ワイルダーが、一生をかけて守り抜くと決めた、たったひとつの「真実」だった。
宿の硬いベッドに身を投げ出し、ゼロスは天井を見上げた。
部屋には、昼間店員に無理を言って包ませた、あの床にぶちまけたはずの九十九本の薔薇が、
花瓶に収まりきらずにそこかしこへ飾られている。
部屋中に満ちる、むせ返るようなオレンジの香り。
「……はは、マジかよ」
腕で目元を覆い、ゼロスは独りごちた。
昼間の自分の振る舞いを思い返すと、あまりの必死さに顔から火が出そうになる。
神子として数多の女を口説いてきたはずの自分が、あんな狭い試着室で、
一人の女の子に拒絶されるのをあんなにも恐れていたなんて。
けれど、それ以上に脳裏に焼き付いて離れないのは、彼女の「逆襲」だ。
(……あんな顔、見たことなかった)
髪を引っ掴まれ、強引に奪われた唇。
泣き出しそうな瞳で、けれど逃げることを許さない強い意志で自分を求めてきた、あの瞬間のハニー。
自分を裏切り者と知りながら、泥だらけになって「戻ってこい」と叫んだあの時の強さが、
今は俺への愛として牙を剥いてくる。
不意に、右手が自分の髪に触れた。
彼女に力任せに引きずり下ろされた、後頭部の感触がまだ残っている。
「……『脱がしたい』なんて、よく言えたもんだよ。俺様の方が、余裕で完敗してんじゃん」
自嘲気味に笑いながら、彼はそっと自分の唇を指先でなぞった。
今まで誰にでも振りまいてきた安っぽい口付けとは、何もかもが違った。
彼女が自分にぶつけてきたのは、単なる好意じゃない。
ゼロス・ワイルダーという、欠陥だらけの男のすべてを飲み込もうとする、剥き出しの執着だった。
(……一生、逃がしてやんないからね)
暗闇の中で、彼の蒼い瞳がふっと細まる。
彼女が「大勢のひとり」だなんて不安にならないように、明日からもまた、飽き飽きするほど愛を語り続けよう。
今度は試着室のカーテン越しじゃなく、もっと近くで。
「……おやすみ、ハニー。明日も、明後日も、ずっと俺様を振り回してよ」
薔薇の香りに包まれながら、彼は満足げに瞳を閉じた。
24年かけてようやく見つけた、たった一人の「特別」を、夢の中でも抱きしめるために。
「……~~~~っ!!?」
唇に落ちてきたのは、柔らかな感触と、それとは裏腹な強烈なまでの「意志」だった。
髪を引っ張られ、強引に引き寄せられた視界の中で、ハニーの潤んだ瞳が真っ直ぐに俺を射抜いている。
(…は? え、ちょ、今の…ハニーから、した、よな?)
心臓が、薔薇を買いに走った時よりも激しく警鐘を鳴らしている。
俺様としたことが、思考が真っ白だ。
24年生きてきて、女の子にこんな風に「食われた」のは初めてかもしれない。
「もう一回っ!!」
「ふごっ……!?」
二度目の、さらに深い口づけ。
鼻先をかすめる彼女の熱い吐息と、必死に背伸びをする彼女の健気な重み。
それが、俺がどれだけ言葉を尽くすよりも雄弁に「あんたを愛してるんだ」と叫んでいるようで、
胸の奥がじんわりと熱く、そしてひどく疼いた。
(……参ったな。これじゃ、どっちが格好つけてるのか分かんないじゃん)
あんなに自信なさげに震えていたくせに。
いざ覚悟を決めたら、俺の手を引いて泥沼から引きずり出したあの時の「強さ」で、
今度は俺の心を丸ごと奪いにくる。
唇を離した彼女は、肩で息をしながら顔を真っ真っ赤にして俺を睨みつけている。
その表情があまりに愛しくて、俺は思わず、
さっき落とした薔薇よりも鮮やかな赤に染まった自分の顔を片手で覆った。
(……ああ、もう。本当にずるいのは、君の方だよ)
「…ハニー。君、それ自覚してやってる? だったら相当な悪女だぜ…?」
指の隙間から見えた俺の瞳は、きっと今、熱に浮かされたみたいに蕩けているに違いない。
「脱がしたい」なんて軽口、言わなきゃよかった。
だって、こんな顔をされたら、もう一歩も動けない。
彼女に振り回され、翻弄される心地よさ。
かつて「神子」という偶像(アイドル)だった俺を、
ただの「ゼロス・ワイルダー」という男に引き戻し、
狂わせるのは、後にも先にも、目の前のこの子だけだ。
(……一生、勝てる気がしないなあ)
俺は自嘲気味に、けれどこの上なく幸福な気分で、
再び自分からその唇を奪いに行くために、ゆっくりと腰を屈めた。
「……っ、はぁ。……ね、ゼロスくん。私の気持ち、もう疑わない?」
肩で息をしながら、真っ赤な顔で胸元を掴んでくるハニー。
さっきまであんなに自信なさげに「大勢のひとり」なんて泣きそうな声をしていたのが嘘のようだ。
俺様はといえば、まだ唇に残る熱に痺れたまま、完全にノックアウトされていた。
髪はボサボサにされ、神子としての格好良さもへったくれもない。けれど、不思議と気分は最高だった。
「……疑うわけないだろ。あんな強引なキスされたら、俺様、もうハニーの所有物になった気分だよ」
俺は苦笑いしながら、自分の頬に残ったハニーの熱をなぞった。
そして、床に散らばったオレンジ色の薔薇を一枚、指先で拾い上げる。
「あーあ、せっかくの100本が台無しだ。俺様がカッコよく決めるはずだったのに。
ハニーがそんなに熱烈なんだもん。予定が狂っちゃったよ」
「……うう、だって。ゼロスくんが変なこと言うから……っ」
急に羞恥心が戻ってきたのか、ハニーが顔を隠して蹲りそうになる。
それを逃がすほど、俺様は甘くない。
今度は俺が、彼女の細い腰を引き寄せ、逃げ場のない試着室の壁と自分の腕の間に閉じ込めた。
「ちょ、ゼロスくん……!?」
「いい? ハニー。さっきの、お返し。…今度は俺様が、ハニーを泣かせる番」
低く囁くと、ハニーの肩がビクッと跳ねる。
さっきの強気はどこへやら、上目遣いで俺を見上げる瞳は期待と不安で揺れている。
そのあまりの愛らしさに、俺の奥底にある独占欲が、ゆっくりと首をもたげた。
「自信がないなら、骨の髄まで俺様が刻み込んであげる。『君以外、何もいらない』ってさ」
指先で彼女の顎をクイッと持ち上げ、至近距離で視線を合わせる。
俺様の目は、きっと今、ハニーの心臓を止めてしまうくらい真っ直ぐで、熱い。
「……もう一回、していい?」
「……っ。ずるい、聞かないでよ……」
「はは、そうだね。ハニーが先に始めたんだ。……最後まで付き合ってもらうぜ?」
今度のキスは、さっきの熱烈なやつとは違う。
とろけるように甘くて、深くて、逃げる隙間も与えないような。
オレンジ色の薔薇の香りに包まれた狭い空間で、俺たちは何度も、何度も、
互いの存在を確かめるように唇を重ねた。
「……愛してるよ、ハニー。俺様の全部を、君にあげる」
耳元で誓う言葉は、誰にでも言う甘言じゃない。
24歳のゼロス・ワイルダーが、一生をかけて守り抜くと決めた、たったひとつの「真実」だった。
宿の硬いベッドに身を投げ出し、ゼロスは天井を見上げた。
部屋には、昼間店員に無理を言って包ませた、あの床にぶちまけたはずの九十九本の薔薇が、
花瓶に収まりきらずにそこかしこへ飾られている。
部屋中に満ちる、むせ返るようなオレンジの香り。
「……はは、マジかよ」
腕で目元を覆い、ゼロスは独りごちた。
昼間の自分の振る舞いを思い返すと、あまりの必死さに顔から火が出そうになる。
神子として数多の女を口説いてきたはずの自分が、あんな狭い試着室で、
一人の女の子に拒絶されるのをあんなにも恐れていたなんて。
けれど、それ以上に脳裏に焼き付いて離れないのは、彼女の「逆襲」だ。
(……あんな顔、見たことなかった)
髪を引っ掴まれ、強引に奪われた唇。
泣き出しそうな瞳で、けれど逃げることを許さない強い意志で自分を求めてきた、あの瞬間のハニー。
自分を裏切り者と知りながら、泥だらけになって「戻ってこい」と叫んだあの時の強さが、
今は俺への愛として牙を剥いてくる。
不意に、右手が自分の髪に触れた。
彼女に力任せに引きずり下ろされた、後頭部の感触がまだ残っている。
「……『脱がしたい』なんて、よく言えたもんだよ。俺様の方が、余裕で完敗してんじゃん」
自嘲気味に笑いながら、彼はそっと自分の唇を指先でなぞった。
今まで誰にでも振りまいてきた安っぽい口付けとは、何もかもが違った。
彼女が自分にぶつけてきたのは、単なる好意じゃない。
ゼロス・ワイルダーという、欠陥だらけの男のすべてを飲み込もうとする、剥き出しの執着だった。
(……一生、逃がしてやんないからね)
暗闇の中で、彼の蒼い瞳がふっと細まる。
彼女が「大勢のひとり」だなんて不安にならないように、明日からもまた、飽き飽きするほど愛を語り続けよう。
今度は試着室のカーテン越しじゃなく、もっと近くで。
「……おやすみ、ハニー。明日も、明後日も、ずっと俺様を振り回してよ」
薔薇の香りに包まれながら、彼は満足げに瞳を閉じた。
24年かけてようやく見つけた、たった一人の「特別」を、夢の中でも抱きしめるために。