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「おいっちに、さんしー、ごーろくっと」
「ユーリおはよー。今日も朝からストレッチご苦労様」
「おう!剣振るうには身体が資本だからな。ほら、あんたも一緒にやろうぜ^^」
「いいよー。うーん、朝は空気が気持ちいー」
「にいに、さんっし」
「ごーろく、しちはちーっと」
ある程度体操を終わらせ、2人でユーリの部屋に戻って来る。
ラピードは寒いのかユーリのベッドで伏せて寝ている。
今度はさらに柔軟を利かせる体操をするのが今のマイブームになっている。
おかげで冬でも身体はポカポカ、しばらく温かいのだ。
最初は自分が足を広げて前に姿勢を倒し、ユーリが背中を押してくれる。
「さすが。あんた前より体柔らかくなってきたなあ~」
「誰かさんが毎日いろんな体勢で頑張ってくれてますから?お陰様で」
「ははは。そうかオレのお陰か。それは嬉しい事で」
「こっちは全然嬉しくない」
ジト目で皮肉っても、本人は嬉しそうにニヤニヤしてるし。その伸びた鼻をへし折ってやりたい。
「っ、ふっ、んっ、んん!ここでストップ。1、2、3、4、5……10。っふう、もういいよユーリありがと」
限界まで筋を伸ばし、ちょっと負荷をかけたとこで止めて10秒。
いい感じに伸ばせて体はポカポカだ。
「んっとに。あんたっていちいちエロイな声が」
「朝っぱらから盛るなエロ―ウエル!」
ユーリの頭にチョップをくらわす。
「いいから次!ユーリは腕たせ伏せ100回!」
「ほいほいっと。おちゃのこさいさいだ」
交代してユーリが腕まくりして腕たせ伏せを始める。それににやりと笑う。
「ふぅん。それならもっとハンデは必要よね?」
「ぐほお!!?あ、あんた!それは無理が…!!」
「何よ。重いっての?(# ゚Д゚)」
「いえ滅相もない」
ユーリの背中にどしんと座ったのだ。これぞ尻に敷いたって言うのかしら。
もちろん内心楽しんでやってる。さーて、どこまでやれるかしら?
「く、じゅ、く!ひゃ・・く」
「ほらほら腕がプルプルしてませんか?ユーリさん?」
「ぐう・・・!も、もう、いいだろ?」
「そうね~ユーリは頑張ったし。最後は私がアフターケアしてあげる」
背中から降りて、ユーリを仰向けにし、すぐさま腕ひしぎ十字固めを決める。
「あだだだ!!?どこがアフターケアだ!」
筋を伸ばしてあげてるのに。そんなに痛いのかしら?床をべしべし叩いている。
「あんた、オレに恨みでもあるのか!?」
「いやあね、ユーリもたまには特別な体勢を体験してごらん、なさい!」
ユーリが力ずくで起き上がったので、さらに三角絞めをしてあげた。
「ぐはあ!ギブギブ!!」
ユーリが叫んでるのに、ラピードはベッドでこっちの様子を呆れたように、わふうと欠伸をしている。
すると1階から「ユーリ!朝からうるさいよ!さっさと朝ごはん食べに降りてきな!」との声が。
あら。女将さんからのお叱りなら、ここまでね。床で伸びてるユーリを放って先に部屋を出る。
ドアを閉める際の「しばらくは正常位だな…やっぱ怒ってんじゃねーか」の声に知らんふり。
1階に下りながら考える。ユーリの朝ご飯に好物を譲ってあげよう。
(きっと、されたこともコロッと忘れて、満面の笑顔で「サンキューな」と
美味しそうに頬張るに決まってるんだから)
想像して自然と笑顔が漏れてしまう。フレンが太陽なら、ユーリは月だ。
ユーリの笑顔は月夜を照らし導いてくれる笑顔だ。頼もしく、かっこいいのだ。
騎士時代、なぜフレンではなく、ユーリを選んだのか。
きっとユーリは忘れてるだろうし、私も言うつもりはない。
(私が体調崩して休んだ時。私の好物をこっそり作ってくれた事。
まさか、それがユーリの手作りだったなんて。同じ下町の知り合いで騎士仲間ってだけなのに。
同僚から後で聞いて驚いた。街中で私が買い食いしてるのを見かけたって。何それ。ふふふ)
可笑しくて。笑って。胸がぽっと温かくなって。彼の何気ない気づかいに切なくなって。
彼は気まぐれだったかもしれない。でも私は。そんな優しさに恋をしたのだ。
旅の途中で、あの夜、何も語らず抱きしめてきた彼から伝わった臭い。
誰よりも弱者の為に心身砕いて、一瞬一瞬の今を大事にするあまり。
すぐに気づいたけど、ユーリは何も言わなかったし、私も何も言わなかった。
こんな私を受け入れてくれた人。本当は不器用で泣けない人。
フレンは光を、未来を選び。ユーリは影を、現在を選んだ。だから…。
―――きっと裁かれるときが来る、ってユーリは言ってたけど。
(裁かれるくらいなら、本当なら私が先に貴方を手にかけたい。
夜、隣で眠る貴方の首を何度見たことか。でも誇りがそれを邪魔する。
大好き。大好きすぎて、おかしくなりそうよ)
私の想いがどれだけ重いか、恐ろしいか知らないだろう。
騎士時代に勇気を出して告白した自分の誇りと想いにかけて。
私を受け入れてくれた彼に恥じない人生を。ユーリの為だけに生涯を捧げると。
裁かれても、処遇を受け入れても、私はユーリを最後まで見届ける。
彼の魂は私だけのもの。絶対に誰にも渡さない。
もちろん、ユーリにも教えてあげなーい。それくらいの意地悪、許してね。
(愛してる、ユーリ。つい意地悪しちゃうのも、照れの裏返し。愛が溢れてくるの。
だってエロい声だなんて言うんだもの。まったく、どっちがよ。
先に恋したのは私なんだからね?ユーリが知らないユーリを知っているんだから。
ユーリのクセ、ユーリの性格、視線で、どんな感情か。私はわかるもの)
だから旅で私まで置いて一人で抜け出そうとした時はさすがに本気で怒った。
先回りしてドロップキック食らわしたわよ。
ラピードは匂いで気づいたろうけど私の味方よ。だから吠えない。
あの時、言ったよね?傍に居るって。
『ん。いいぜ。(こりゃフレンに後で一発殴られるかもな)』
『ほ、ほんとに?嘘みたい…。ユーリ、ほんとに私でいいの?』
『くどい。2度は言わねぇ。あんたが言ったんだろ?オレがいいって』
『もちろんよ!たとえ世界中がユーリの敵になったって私は傍にいる。覚悟してね』
『おーお。熱烈だね~(悪いなフレン。あんたの想い人、取っちまって。その分、大事にする)』
ね。私は告白した“あの日”を忘れない。
貴方が私だけのになった日。恋人になってくれた日を。
そして、夜。私はユーリに迫られていた。
「今朝はやってくれたな?覚悟はいいな?」
「ふふ。ユーリったら。まだ根に持ってたの?」
私は迫られながらも、本当に仕方のない人ねと微笑み返す。
ユーリの帯紐を解いてあげたら、彼はニヤリと笑み衣服を脱いでいく。
「今日はね、久しぶりに昔のこと思い出しちゃった」
「ん?なんだよ藪から棒に」
私の服を脱がしながらも、ユーリは私の顔にキスの雨を降らせてくる。
そう。これ。ああ・・大切にされてるなあ、って。
「ユーリ…」
急に切なくなって、彼の首に腕をを回して抱き着いた。
「ユーリ。ユーリ。ユーリ」
「どうした?」
「好き。本当にどうしようもなく貴方が大好き。愛してるの(手にかけたいくらいに)」
「っ?あんた、何考えてる?」
私の様子に瞬時に勘付いたのか、衣服を脱がすのを止めて、私の顔を覗き込む。
「ダメ!!!私の顔見ないで。きっと酷いから」
さらにぎゅうと抱きしめて、彼の肩もとに顔を埋める。
ああ。彼の肩が涙で濡れてしまった。絶対に気付かれた。
するとユーリからも抱きしめられて、そして顎をグイと持ち上げられた。
漆黒のような、満月のような、揺れる涙越しに見えた眼差しに射抜かれた。
「オレが何も気づいてないと思っていたのか?…バカだな。前から知ってたさ」
「んんん!!?やっ、ユーリ!?」
激しい口付けをされて、私はユーリを突っぱねようとした。
「オレから逃げるな!オレはあんたの想いから逃げねぇ!」
「っっ!」
「あまりオレを怒らせるなよ――オレだってあんたの命も、心さえ!!」
ドサッとベッドに押し倒され、ユーリが上に馬乗りになる。
すると優しい手つきで私の首元にユーリの手が絡みついてきた。
「ゆ、ゆーり…?」
まさか。まさか―――。
「誰にも渡さねえ。フレンも。あんた自身にだってな!!」
真綿を締めるみたいに徐々に苦しくなってくる。
「ゆぅ、り」
意識が遠くなりそうになって、ユーリの頬を撫でた時。締め付けは遠のいた。
「は、はは・・何やってんだ、オレ。これじゃあ、あんたの事言えねえじゃねえか!」
こんな泣きそうな叫び、今まで聞いた事があったろうか?私は堪らなくなって。
「ユーリ。お願い。今夜は私を壊して。滅茶苦茶に!ドロドロに!」
腕を、脚を広げて。絡みつくように抱き着く。全身で彼の愛に溺れたかった。
「ああ・・オレも壊れたい。じゃないと、どうにかなっちまいそうだ…っ」
私の後頭部を鷲摑み、また激しく口付けてきた。今度は私からも口づけを返す。
「は…っ、この髪も。爪の一欠けらだって、本当は渡したくないよ」
「オレだって…!たとえ親友を裏切っても。あんたを譲る気はねえ」
「…え?」
「あんたはオレの大事な女だ。なあ…一緒に、死んでくれ、な?」
「!!?」
それは事実上の告白だ。裁かれても。地獄へ落ちようとも。一緒の道行きを共に。
「あんたが言っただろ?オレがいいんだ、って」
「そ、そのセリフ!」
「はは。悪いな。あんたも、オレも、難儀なこった。ずっと一緒だ。死んでも離さないぜ」
「ユーリ…」
「ん?」
「最っ高の男だわ!!!」
私は泣いていたのが嘘のように満面の笑みで起き上がり、くるんとユーリと入れ替わる。
「もう大サービスしちゃうから!ユーリ、覚悟はいい?^^」
「ははは。現金な女。もちろん受けて立つぜ?^^」
狂ってる。だがこれで良いのだ。
愛に狂い溺れてしまえば待つのは等しく世界からのさよならだ。
だが、この男は言ってくれた。「さよなら」ではなく「またね」と。
だから私は後悔はしない。ユーリと言う男に恋したことを。