短編集
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日は3月14日。
ユーリにプロポーズされて浮かれていた私は、すっかり忘れていた。
――今日がホワイトデーであることを。
ギルドの街ダングレストで。私達は宿屋で一息ついていた。
「今日もお疲れさん」
「ユーリもね。最近はギルドも軌道に乗って休む暇がなかったね」
「ま。首領(ドン)が頑張ってくれているからな。でもここらで1度休暇も必要か」
「そうだよ。せっかくカロルくんがお休みくれたんだから、ゆっくり休も?」
ブレイブ・ヴェスペリアはそこそこギルドでも人気になりつつある。
世界を救った功労者たち、ってのもあるけど、それ以上に皆強いのだ。
魔導器(ブラスティア)が世界から消えても、その実力は折り紙付きである。
だからか、特にユーリの実力(戦闘でも料理の腕も)を見込んで、
単独で依頼をしたい人も出てくるのだ。
「ああ…まあ、そうなんだけどよ。オレはもういっちょ踏ん張りますか」
「この頃ユーリ毎晩忙しいね?そんなに頑張って…何か欲しいものでもあるの?」
夜遅く帰ってくるから、最近ご無沙汰で欲求不満だ、と言外に含めた。
それにユーリは苦笑して私の頭をくしゃっと撫でてきた。
「おう。どーしても欲しいものがな。けっこう高ぇんだわ」
「そう…。あまり無理しないでね」
「まぁ今夜で上がりだから心配すんな。これで払える」
(本当に何を買うんだろう?普段は節約志向であまり物欲なんて無いのに)
おもむろに左手を取られ、にぎにぎと指を挟んで握られる。
「――‐おし。再確認良し。じゃあ最後の仕事行ってくるわ」
「へ?なに?何だったの???」
ユーリの謎の行動に首を傾げるが、本人は嬉しそうに鼻歌を歌いながら出て行った。
夜も更けて。深夜にも届きそうな時間帯にユーリはやっと帰ってきた。
「ただいま―…っと。あんた、まだ起きてたのか?」
「おかえり。今夜で上がりでしょ?お疲れ様」
ユーリの自室で持っていた私は労う意味で彼にお茶を入れてあげる。
ユーリも「ありがとな」と言ってソファにドサッと腰を下ろした。ちょっと疲れてるみたい。
はい、とお茶を渡し、受け取ったユーリは「ふぅ」と肩の力を抜いたみたいだった。
「ん。やっぱあんたが淹れてくれるのが一番 美味ぇ」
「それは光栄の至り^^」
「あー。それで、だな…」
「ん?どうしたの?」
「先月頑張って作ってくれただろ、ほら」
なぜか照れくさそうに頬を掻いて視線を逸らすユーリに私は首を傾げる。
飲み終えたカップをテーブルに置き、ユーリは立ち上がると私に距離を詰めた。
「チョコ。嬉しかったぜ」
「なんだ、そんな事。いいよ私が好きでユーリに贈ったんだから」
「で。だな…あー…」
頭をガシガシとかきながら口ごもるユーリに、様子が変だなと眉を寄せる。
「さっきから、どうしたの?疲れてるなら早く寝ましょ?もう遅いんだし」
「あっ、ちょ!待った待った!」
「んもう!何なのよ。はっきりしなさい!」
自室に引き返そうと思ったら、引き止められるし。歯切れ悪いし何なのだ。
「だからっ―――これ!受け取ってくれ!」
「へ?」
ずいっと差し出されたのは小さい包み。
「今夜…あ。もう過ぎちまったけど、これホワイトデーのお返しだ」
「あ…。すっかり忘れてた」
そうだよ。確かにホワイトデーだった。それでユーリはタイミング窺ってたのか。
受け取った包みは軽い。でも何か小さな箱のような形だ。
「今開けていい?」
「え、ああ…いい、けどよ…(///)」
珍しくユーリの顔が赤い。え?ちょ、どうしたの!?
「何でユーリが赤くなってんのよ」
「Σばっか!仕方ねえだろ!これでも緊張してんだ察しろよ!!」
「えええ~?」
察しろって、んな無茶な。逆ギレ反対ー。ってことで包みをさっさと開ける。
出てきたのは赤い小箱。ん?しかも高級な手触り。パカ、と開けてみれば。
――月夜に照らされてキラリと光る、紫の光。
私は絶句していた。え、何これ何これ。噓でしょ…。
「ゆ、ユーリ…これ…」
見開いたまま、ユーリを振り返れば――今、気づいた。
彼の左手の薬指には、同じく光る紫の煌めきが。
「――言っただろ。あんたはオレだけの花嫁だってな」
「!!」
「それ、貸せ。…付けてやる」
むしろ強奪する勢いで取られたんだが。私も唖然としたままユーリを見るしかない。
「ああ…サイズ合って良かったぜ。これでオレたちは夫婦だ」
するりと薬指に嵌められた。ユーリは満足そうに頷いて恋人繋ぎで握られた。
「世界に2つとない、完全オーダーメイドだ。誰にも真似はさせねえ、オレ達の証だ」
「……っっ」
「お、おい!!?」
もう我慢できなかった。涙がせきを切った様に溢れ流れ落ちた。
ユーリがビックリしてる。早く嗚咽を堪えなければ。でも、でも――!
「ユーリ…あり、がと。嬉しい。本当に嬉しい」
この指輪のために毎日頑張ってくれてたんだね。
ねえ、ユーリ。ホワイトデーに指輪を贈る意味を知ってる?それはね?
「「――永遠の愛」」
だろ?とユーリにしてやったりと、悪戯っ子な笑みを向けられ。
私は、もうサプライズにも程があるわよ、と涙をぬぐいながら苦笑する。
「思い出したんだよ。ハンクスじいさんも指輪を大切にしてたなーって」
「そういえば…。あ、この宝石…ユーリの眼の色だ」
「それを言うな。他意はなかったんだ、たまたま宝石言葉で薦められたからで…」
「宝石言葉?え、なになに?ききたい」
「何だったか。すまん忘れちまった。だが17年後にまた同じ宝石を贈るつもりだぜ」
「え?なんで」
「その宝石特有の婚式だってよ。ま、ど忘れしてたらぶん殴ってくれ。すぐ買いに行ってやる」
「ふふふ。ユーリらしい。分かった、覚えておくね。ねえユーリ」
「なんだ?」
「一生、大切にするね。今日という日に贈った意味に誓って」
ちゅ、と触れるだけのキスを贈る。それに目を見開くユーリ。
「ずっとずっと。永遠だから。私はついてくよ。死んでも離さない、でしょ?」
「ああ…!もちろんだ。誰にも渡さねえ。オレだけの妻(ワイフ)だ」
ぐっと腰を抱き寄せられ、ユーリから口づけられる。私も同じだけ返す。
――私の夫(ハビー)。世界にただ一人、貴方だけよ。
ユーリ。私を選んでくれて、ありがとう。愛してるわ――
【あとがき】
宝石は、アメジスト。宝石言葉は、誠実・高貴・心の平和などです。
愛を守護する宝石とも言われ、アメジストを持つことで愛の心が芽生えて、
周りの人に真実の愛を届ける力を与えてくれるという伝説もあります。
17年後…39歳のユーリかぁ。好い!!!