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2日後。次の依頼はダングレストから帝都へ重要荷物の搬送、兼、護衛である。
久しぶりの故郷、帝都に帰れることに私は、ある決心をしていた。
「ね、ユーリ。今度、帝都に帰ったら付き合ってほしいところがあるの」
「ん?どこへ行くんだ?」
「今は秘密ー。帰ったら案内するよ。ラピードも連れてきてね^^」
「?」
数日掛けて帝都へ戻ってきて。昼前には依頼を達成し終えて宿で解散。
ユーリと私は自宅にしている別の宿に戻ってきた。
ユーリとラピードは部屋に戻っていき、私は花屋へ。
「こんにちはー」
「はい。あら!いらっしゃい、久しぶりね」
「また"いつもの"お願いします」
「はいよ。あんたも頑張るねえ。ここじゃないのに熱心に通ってるんだろ?」
「はい^^お義兄ちゃんとお姉ちゃんの特別な場所だから」
私の口から義兄の単語が出ると、店長さんは目を閉じて悲しそうな顔をした。
すまないねえ、と詫びを言い、花束を作り始める。私は首を横に振った。
あの10年前の戦争でお義兄ちゃんは立派に戦い抜き散っていった。
まるで、お姉ちゃんの後を追うように。
「ううん。お義兄ちゃんは騎士だったんだもの。
立派に戦ったもの、お姉ちゃんもきっと誇ってる」
「本当に幸せ者だねぇ喜んでるよ2人とも。
あんたもあんまり無理しないでおきよ?…はい、出来たよ」
「ありがとう、おばさん!きっとお姉ちゃんたちも喜びます」
色取り取りに満ちた花束を渡され、私は笑顔で支払いを済ませる。
「気を付けて行ってくるんだよ!」
「大丈夫。今日は強い用心棒連れてくから」
「用心棒?おや、もしや…ユーリかい?」
「えへへ。まあ、そんなとこ^^」
「なら安心だ。あの子は元気でやってるかい」
「相変わらずですよ。やんちゃでねー」
「そこはほら。あんたが手綱を引いてやんな」
「あはは。取ったり取られたりですよ。じゃあ、いってきます」
おばさんに手を振って別れ、自室へと戻って来る。
必要の道具一式と花束を手にし、隣の部屋へ移動。
「ユーリ~!ラピード~!今から出かけるよー。前言ってた用事、用心棒に付き合って~!」
コンコン、ノックするとすぐにユーリとラピードが出てきた。
「用心棒?あんたには必要ないだろ・・・・って、何だその大荷物は」
「両手ふさがってるから、帝都外に出るには、どうしてもユーリとラピードの力を貸してほしくて」
バケツに布巾、タワシにひしゃく、ホウキ、花束…確かにこれだけ持って戦闘などできない。
「分かった。で、どこまで行くんだ?」
「少し歩くけど近くの森林奥にね。花束を散らしたくないから戦闘はユーリ達任せになる。ごめんね」
「いや、別にいいけどよ。じゃ、いくか」(刀を肩にかけたスチル絵)
「わふう!」
魔物をばっさばっさ捌いていく一匹と一人。私はその後をついていった。実に快適な道筋である。
「さすがユーリとラピード。もうあと少しで着いちゃう」
「おう。任せとけ」「あおん!」
「あ。お水汲んでくるね」
予定地までの道すがらに、小さい川があり、バケツに水を汲んですぐユーリ達のとこに戻る。
ユーリが持つって言ってくれたが私は遠慮した。戦闘に集中して、用心棒さん。と笑顔で返す。
「しょうがねえーなー。足元気を付けてこいよ?」
「私はそこまで鈍くさくないわよ。さ、行くわよ」
案内で先導し、森林の中を歩く。
そして森の奥まったところ、一際大きめな木の下に"それ"はあった。
ユーリが唖然と目を見開いている。
「おいおい、これはまた、すげぇな」
「うん。私のお姉ちゃんが眠ってるの」
"それ"とは地面に石碑。それも名前が彫られていた。
名前と共に綴られている、メッセージ。――‐愛する人、ここに眠る。
私は横にバケツを置き、しゃがんで、そのメッセージを優しく撫でる。
「お姉ちゃん、久しぶり。しばらく来れなくてごめんね。
今日はね、お姉ちゃんもビックリする人を連れてきたよ」
そう言ってユーリとラピードに振り返る。おいで、と手を振る。
ユーリは頭の後ろを掻きながら私の隣にきて、同じく片膝をついた。
ラピードはその後ろで座っている。
「あー…その。なんだ。オレ、ユーリだ。あんたが助けた坊主だよ。あの時はありがとな」
じゃっかん照れくさそうに言う姿に、私は噴き出した。隣から睨まれるが知らんふりだ。
私はすぐ立ち上がって、ホウキを手に墓回りの掃除を始める。
「ふふふ。ユーリは見違えたでしょ?かっこよくなっちゃって。あ、美人さんかな」
「おい」
隣から突っ込まれたが私は無視。
掃き終わり、次はタワシと汲んだ水で墓についた苔や汚れを落としていく。
ユーリが「布巾を貸せ」と言うので渡したら、汚れを落としたところから拭いていくではないか。
(え、手伝ってくれるの?…嬉しい。まるで家族のようで)
やっぱりユーリたち連れてきて良かったと思う。
「…立派な墓だな」
「うん。お義兄ちゃんが全財産はたいて建ててくれたの」
戦争が始まる2年前。お姉ちゃんが事故で亡くなった時。
お義兄ちゃんはお姉ちゃんのお墓を作ってくれた。帝都のはずれに。
下町にも墓地はあるが、何故義兄はこんな帝都外れに作ったのか。
いつか1度だけ教えてもらった。
"此処"は特別な場所――お姉ちゃんと出会った場所なんだって。
こんな立派な石碑…お義兄ちゃんは本気でお姉ちゃんを愛していたんだ。
だから残った私だけでもきれいに手入れしたいし、護っていきたい。
「は?お兄ちゃん?あんたに兄なんていたか?」
「いたよ。正確には義兄だけどね。立派な騎士様だったのよ。ふふ、お姉ちゃんの旦那様」
「はああああああああ!!?」
ユーリが驚いて布巾をぼとっと落とす。あ、これ初めて言ったんだっけ。ごめーん。てへ。
「結婚してたのかよ!?」
「そうよ。人妻の魅力に、ユーリくんはメロメロになったわけだ。かわいー。あはは」
「笑うな!」
私の頭をはたくが、それも照れ隠しだろう。2人して掃除しながらも穏やかで楽しい時間だ。
「お姉ちゃん、いっぱい話したい事があるんだ。
騎士になった事、世界を旅した事、ギルドの事、そして何より――ユーリの事」
「…何だよ」
ユーリを見た。むすっとした顔しちゃって。ごめんってばー。
(お姉ちゃんがキューピッドになってくれるなんてね)
ようやく磨き終わり、ユーリも拭き終わる。
そして、2人はお墓に花を供え。静かに黙祷を捧げる。
「育ててくれてありがとう、お姉ちゃん。私、ユーリの花嫁になるから」
「!!?」
ユーリが絶句している。私はなおも続ける。
「お姉ちゃんの残してくれた絆が私達を結んでくれたよ。私、幸せになる。だから心配しないでね」
「……」
「? ユーリ??」
おもむろに隣からグイッと肩を寄せられた。
ユーリの方に顔を向かされ、キスの雨を降らせてくる。
「ん、ユーリ。ちょ、ビックリするじゃない」
「それはこっちのセリフだ。ったく、先越されちまうなんて世話ねえわ」
「え?」
「オレだってずっと言いたかったんだからな。あんたを一生大事にするって。誓わせてくれ」
「!!!」
ユーリは私の左の掌を取って頬ずりする。まるで大切に、慈しむように。
そして薬指に口付ける。今度はこっちが絶句した。
「ユーリ…!」
「過去も。現在も。未来も。果ては魂の旅路にも。オレたちは互いにどこまでも一緒だ。
愛してるぜ。この世に一人だけのオレの花嫁…どうか結婚してください」
ユーリが慈しむような眼差しで微笑むから。
私は迷わずユーリの胸に飛び込んだ。
「…はい!ユーリ、只一人。貴方だけを愛します。どうか私の旦那様になってください」
ザァ…!っと風が舞い上がる。まるでお姉ちゃん達が祝福してくれるように。
ぎゅうぎゅうと抱きしめて、彼の胸元に顔を埋めて。思い切り彼の香りを吸い込んだ。
「大好き。愛してる。お爺ちゃんお祖母ちゃんになっても。ずっと手を繋いでいたい」
「ああオレもだ。しぶとくジジイまで生きてやるさ」
「わおーん」
夕暮れになろうとしている刻。風に吹かれて花びらが吹き抜けていく。
私と、ユーリと、ラピードと。2人と1匹の影は楽しそうに弾んでいた。
(お姉ちゃん、お義兄ちゃん、また来るね。
今度は…家族が増えてるかも?なんてね)
*ユーリにとって、これは初恋を終わらせる"けじめ"であり。
*ヒロインにとって、家族に紹介する。"一生の宝"を得たのです。