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メイドパニック!

⑤磯谷ゲンドウ







「騒がしいと思ったら何をしてるんだ。」


「ゲンドウ!」


力強い手でアラタの腕を掴んだのは第2小隊隊長のゲンドウだった。
彼もハルキ達同様のウェイターの制服に身を包んでいる。

驚いていれば、その後ろにはリンコもおり、心配そうにこちらを見ている。


「実は・・・」


すぐにサクヤが事情を説明する。
ある程度聞いた後、ゲンドウは納得するとすぐにキャサリンを呼んだ。


「キャサリン・ルーズ。」


「何よ?」


「もういいだろう。アラタのこの姿は。」


「えー、せっかく可愛いのに・・・」


「だが、このままだと珍しい姿見にたくさんの輩がやって来る。」


「いいじゃない、お客さんが増えるんだから。」


「俺が危惧しているのはそうじゃない。中には、アラタの姿だけ見て何も注文しないで帰る客もいると言うことだ。そしたら売上金を稼げないだろう。」


「うっ・・・」


「それに、その中に混じって女子生徒を盗撮する輩も出てくる可能性も少なくは無い。」


ゲンドウの言葉に最初は不服を持っていたキャサリンだったが、理由を聞いて何も言い返せなくなる。

残念そうにため息を吐くと、渋々と言った表情で『分かったわよ』と担任の美都にその事を伝えるために職員室に向かった。
その足取りは何処と無く重そうだ。


「確か予備のウェイターの服があったな。お前はそれに着替えてこい。」


「ゲンドウ・・・サンキュー!あとで何か奢るな!」


「分かったから、早く行ってこい。」


やっと恥ずかしいこの服から解放されることが嬉しくて、笑みを浮かべながら礼をするアラタ。
それにゲンドウが小さく笑みを浮かべ頷きながら、急かすように言えば、同じ第2小隊のセイリュウが『あっちにあるぞ』とアラタを案内する。


それを見届けた後、ハルキ達の方に改めて向き直ると深いため息を吐き、呆れた表情をした。


「お前達、みっとも無いとは思わないのか?」


「すまない・・・」


「ふん。」


「けっ。」


「・・・」


ゲンドウの言葉にハルキは申し訳なさそうに謝るものの、ヒカル、キョウジ、ムラクの3名はどこ吹く風。
そんな3人に再びため息を吐くと、ゲンドウは更に話を長々と続けた。


一応ハルキ以外の3人も反省はしているらしく、ゲンドウの説教じみたその話を逃げることなく聞いていた。



そんな中、サクヤが隣にいたリンコにこっそり問う。


「ねぇ、もしかしてゲンドウってさ、アラタのこと好きなの?」


「好きって言うか、付き合ってるよ2人とも。」


「えっ!?」


「だから、ゲンドウさんは正直今回のメイド服の件は嫌だったみたい。こっそりアラタに声かけていたし。でもアラタは『少しくらいだし我慢する』って言ってたし、美都先生も了承していたから渋々我慢していたみたいだけど・・・」


『こんな事になって堪忍袋の緒が切れちゃったのね』とあっさり言うリンコに、色々と衝撃を受けたサクヤはただ苦笑いをするしかなかった。




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