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メイドパニック!

①法条ムラク






手袋をはめた手により、ポスンとアラタは彼の胸の中に収まる。
ゆっくりと見上げれば、彼の自分とは若干違う紫の瞳とかち合う。


「ムラ、ク・・・」


「瀬名アラタ・・・」


小さく笑みを浮かべ優しく名前を呟けば、ムラクはミハイル達に目線を送る。
それに気づいたミハイル達第6小隊はその意味を瞬時に理解し、苦笑いを浮かべると小さく『いけ』と言う。
ムラクはミハイル達に『すまない』と礼をするとアラタに呟く。


「少し我慢しててくれ。」


「えっ、ムラク何を・・・うわっ!?」


次の瞬間、体が宙に浮く。
すぐに自分がムラクにより横抱き、所謂お姫様抱っこをされていることに気づいたアラタだが、それを言う前にムラクは走り出した。


後ろからたくさんの抗議の言葉が聞こえていたが、それは徐々に消え去っていく。
また同時に、バイオレットデビルとして恐れ高いあの法条ムラクが、メイド服を着た1人の生徒を横抱きにして走っていくと言う普段はあり得ない姿を、他の生徒達が物珍しい気な瞳で見ている。


そんな視線をものともせずムラクはしっかりとアラタを抱え、走る。
またアラタも落ちまいと目を瞑りながら、ムラクの体にしがみつく。








やがて、2人は外に出て人気の無い所にやって来た。
そこは、よくムラクと会う展望台。


「ここなら平気か・・・アラタ無事か?」


「あ、あぁ何とか・・・」


ゆっくりと降ろされたアラタは返事をするが、表情はどことなく疲れている。
それを見たムラクは申し訳なさそうに彼の頬にそっと触れた。


「すまない。けれど、あの場ではそうするしかなかった。」


「いいって分かってるから。ムラクが困ってる俺のためにしてくれた事だし、連れ去っていく時、本当はとても嬉しかったんだ。」


「アラタ・・・」


頬に触れる手に己の手を重ね、ニコッと笑うアラタを見て、ムラクは自分の胸が満たされていく感覚に陥る。


「ムラ、ク?」


「していいか?」


「えっ、んっ・・・」


返事をする前に唇が塞がれる。
アラタは抵抗をせず、それを自然と受け入れる。


「ム、ラク・・・」


「アラタ・・・」


ゆっくり離されれば、アラタはそのままムラクを抱き締める。
それに少し驚きつつも、ムラクも抱き締め返す。


「珍しいな、お前からこうするなんて。」


「へへっ、ムラクと2人っきりなんて中々無いからな。たまには・・・な。」


ムラクとアラタは恋人同士だ。
だが、互いに敵同士でもあり、有名人のため、個人的に会ったり2人っきりになるのは難しい。

そのためこう言った機会はめったに無い。


「そうか、確かにそうだな。」


「あぁ」


「そしたら、暫くはこのまま2人でいるか?」


「そうしたいけど・・・出来れば俺、着替えたい・・・」


「我慢しろ。また戻れば捕まる。」


「・・・分かったよ。」


ムラクの言葉は一理あるためアラタは渋々諦める。
だが、久しぶりの2人きりの時間はとても穏やかで気持ちがよかった。






(ところでアラタ、あの写真は待ち受けにしていいか?)


(あの写真?)


(先程撮ったお前のメイド服の・・・)


(絶対止めろ!恥ずかしいから!)


(・・・分かった(仕方ない。現像して持ち歩くか))


(何だよ今の間は・・・。)



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