このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

メイドパニック!

⑨剣菱ワタル







「アラタさん!」


そこにいたのはロシウスの制服を着た焦げ茶色の髪の少年。
ハルキやヒカル等は『誰だ?』と首を傾げるが、ムラク達は知っていたため驚く。


「ワタル!?」


「お前どうしてここに・・・」


バネッサとミハエルに呼ばれてワタルはそちらに振り向くと、いつも通りの明るい笑顔で『先輩こんにちは』と挨拶をする。
それを見た後、ワタルはすぐに呆然とするハルキ達に向き直った。


「えっと、ジェノックの皆さん始めまして!僕ロシウス第27小隊隊長の剣菱ワタルと言います!よろしくお願いします!」


真っ直ぐな目を向けて勢いよく自分の名前と所属を言うワタルに対し、『あ、あぁよろしく』と少しばかりハルキ達は勢い負けをする。
挨拶が終わるとワタルはアラタの方を向いた。


「ところでアラタさん。これは仮装か何かですか?」


「いや、ジャンケンで負けてこんな格好させられて・・・」


「そうなんですか!?それはちょっと気の毒ですね・・・」


「アハハ・・・もう笑うしか無いよな。」


「そんな事無いですよ。とっても可愛いです。」


「ワタル、それ男の俺に言う言葉か?」


「男とか関係無いです。アラタさんだから言うんです。アラタさんは実際に可愛いですし、さすが僕の彼女ですよ。」


「うーん嬉しいような悲しいような・・・まっいっか。サンキューなワタル。」


親しげに話す2人だが、ここで様々な疑問が生まれ、聞きたいことが増える。
何より、一番聞きたいのはさっきワタルが言った言葉・・・


「ワタル、お前今瀬名アラタの事を『彼女』と言わなかったか?」


ムラクが代表して聞けば、ワタルは『そうですよ』と一言。
そしてアラタに負けない程の満面の笑みで答えた。


「アラタさんは僕の恋人です。と言っても、最近付き合ったばかりですけどね。」


その瞬間、何かにピシリとヒビが入る音が聞こえる。
それもムラクの方から。
しかし、それを気にすることなくワタルは続ける。


「切っ掛けはムラク先輩なんです。ムラク先輩がアラタさんのことをよく注目していろとか言ったから、それから僕、あのLBXを使うアラタさんをずっと見てたんです。そしたら、それに気付いたアラタさんが声かけてくれて、一緒に話すようになって・・・それで・・・」


「好きになった、と?」


「はい!」


カゲトの問いに嬉しそうに答えれば、またムラクの方でピシリと言う音が鳴る。
そしてまるで止めをさすようにワタルは言った。


「全部ムラク先輩のお陰です!ムラク先輩があぁ言ってくれなければ、僕今ごろアラタさんと付き合うことも、知ることもしませんでした。本当ありがとうございます!」


頭を下げて礼をすると中に入り『何かオススメはありますか?』とユノやアラタに問う。
問われた2人は彼を席に案内しながら答えた。



そんな光景を見ながらムラクは自分が『1人の敵として、ライバルとして』との意味で言った言葉をただ後悔した。
そしてその彼の手の中には、ヒビが入りすぎて、半壊状態(崩壊が正しいかもしれない)のCCMが握られていた。





end
10/12ページ
スキ