手にした光は闇にへと誘われ
目を覚ますとどこもかしこも真っ暗で、自分以外誰もいない。
音もなく、ただ寂しいこの空間に誰かいないかとライルは歩いて探すと、目の前に1人の青年が倒れていた。
「誰だ?」
近付いてよく見るとそれは唯一自分と言う存在を認めてくれて、そしてこんな自分を受け入れてくれた恋人、刹那だった。
「刹那!」
プトレマイオスが敵の襲撃を受け地上に落ちてしまったせいで、離れ離れになってしまった恋人の姿を見てホッと安堵をしたのもつかの間、よく見ると着ているブルーのパイロットスーツはボロボロで右腕には酷い傷を負っている。
「刹那・・・待ってろ今すぐそっちに・・・!」
傷を負った刹那を助けようと目の前まで行こうとすると、突然刹那の体が浮いた。
いや、誰かが刹那を横抱きにし立ち上がったのだ。
ライルは刹那を抱き締め立ち上がった人物の顔を見て、驚きのあまり目を見開いた。
今自分が着ている同じモスグリーン色のパイロットスーツを着て、右目に眼帯。
そして自分と同じ顔、姿を持つ、刹那が以前に愛し4年前の戦いで宇宙に散った片割れ・・・
「にっ、兄さん・・・」
「よお、久しぶりだなライル。」
ライルの双子の兄、ニールだった。
ニールは驚くライルに薄く微笑んだ。
「どうして・・・ここに・・・」
その薄笑い背筋がゾクリとしながらも、ライルはニールに尋ねる。
「どうしてって、愛しい刹那を迎えに来たんだよ。」
さも同然の様に言うニール。
「迎えにってまさか・・・止めてくれ!刹那を連れてかないでくれ!」
その言葉を瞬時に理解するとライルは顔を青ざめながら叫ぶ。
それにニールは再び薄笑いしながら言い放つ。
「それは出来ないな。恋人として。」
「勝手に死んだくせに何が恋人だ!刹那は兄さんが死んだことで心に深い傷を負ったんだぞ。」
4年前に起こったことを刹那から以前聞いたライルは、兄の自分勝手な言葉に怒りを露にする。
「もちろん、知ってるよ。だから2度と傷付かないようにこうやって来たんだろ。」
「何だと・・・」
「だからさ、刹那はこれ以上戦うとまた傷付くから、その前に連れて行くのさ。そしたら体にも心にももう傷がつくことはない。それに、恋人の俺がずっといるんだから癒されて一石二鳥って事だ。」
ニールは横抱きにしている刹那の額に優しくキスを送る。
「・・・違う!兄さんは刹那の気持ちを無視している。刹那は兄さんやこの世界のために戦っているのに・・・」
ニールが連れていくとこで刹那が絶対傷付かないと言う保証もない。
ましてや、それは叶えられなかったニールの願いのために、そして世界から争いを無くすために戦ってる刹那の意思を完全に無視し、自分の考えていることをぶつけてるだけ。
ライルはギュッと強く拳を握る。
「確かにそれはそうだ。でも、だからこそ刹那を守らなければならない・・・なぁライル、お前は刹那を守れてるのか?」
ニールが再び薄笑いをしながら聞く。
「そりゃ当たり前だ!」
「嘘つけよ。元にお前は刹那を守れなかった。こいつの怪我がその証拠だろ。」
そう言うとニールは血で染まった刹那のボロボロのパイロットスーツを見る。
「っつ・・・」
ニールの言葉に、ライルは言い返すことが出来ない。
作戦とはいえ、離れて、それも後から待機していた敵にやられてしまい、別々の場所に行ってしまった。
地上に墜落し運悪く無線なども壊れてしまい、連絡を取り合う事も出来ない状態になった。
刹那の無事を祈るだけで、無理に探しに行かない自分の心にライルは悔むしかなく、その場で膝をおって呆然とした。
「ほーらな。ライル、お前も俺と一緒みたいなもんさ。守りたい守りたいと思っていても結局は周りとかも気にしすぎて、守ることが出来ず、傷付けてる。けどまぁ、俺は2度と刹那を周りを気にせずに絶対に守ってやるけどな。」
ニールは余裕気にライルに言ったあと、刹那の癖のついた黒髪を愛しそうな表情で撫でると歩き始めた。
それに呆然としていたライルは我に返り叫ぶ。
「兄さん待ってくれ!頼むから・・・頼むから刹那を連れてかないでくれ!」
刹那が自分の元からいなくなる悲しみと、2度と会えなくなる悲しみ、そして自分の刹那に対する気持ちが合わさり涙が溢れ出す。
「頼むから・・・頼むから兄さん・・・俺から刹那を・・・」
泣き叫びながら必死に手を伸ばすも、それは暗闇を掴むだけで刹那を抱えたニールには永久に届くことはなかった・・・
end
あとがき↓
シリアスちっくな話になりました。ってかニールが壊れてるようなダークなような・・・(^ω^:)
これは15話の刹那が夢でニールに会ったシーン見て思い付きました。
夢を見たのが刹那ではなく、ライルだったらと。
1/1ページ