優しすぎる君
アロウズの指揮官や高官が来るパーティに潜入したティエリアのバックアップをするため、運転手として同じく刹那が潜入していた。
そしてロックオンも潜入はしなえど、ダブルオーとセラウ゛ィーの見張り兼、CBの活動に慣らすためと今回のミッションに参加していた。
三者互いに周りの音声が聞こえる様に、そして連絡用にと特殊な通信機を持って。
『すまない。敵に見付かってしまった。今からそちらに合流する。』
通信機からティエリアがケルディムの中で待機してるロックオンと、違う場所でティエリアを待っていた刹那に言った。
『了解。』
『OK。』
ティエリアの通信機から2人の声が返ってくる。
「さてと、別嬪さんが帰ってくるまで待つとしましょうか。」
結局待つことに変わりないロックオンは、ケルディム内で足を伸ばす。
暫くすると突然通信機から別の声が聞こえた。
『嫌だ!放せ!』
その声に思わず驚き、伸ばしていた足を元に戻した。
『どうした!?』
ロックオンは慌てて聞き返す。
しかし、返ってくるのは『嫌だ』『放せ』『止めろ』と懸命に叫ぶ赤褐色の強い瞳を持つ青年の声だけ。 どうやら、何かの衝撃で通信機のスイッチ入ったらしい。
『応答しろ刹那・F・セイエイ!』
ティエリアが通信機越しに叫ぶ。
その叫び声からは明らかに焦っていることが分かる。
しかし、まともな応答は刹那から返ってこない。
それどころか『ウワァァァァァ・・・ガシャン』と悲鳴が聞こえてすぐに何かが壊れる音がした後、通信機からノイズだけが聞こえる様になった。
「まさか・・・」
ロックオンの頭に最悪な状況が浮かぶ。
『刹那・・・』
ティエリアも浮かんだらしく、声に力が無い。
ロックオンはいても立っても居れず、ハロを残してケルディムの外に出て刹那の元へ向かった。
通信機には発信機機能もついているため、刹那の居場所は目の前に出された画面で確認出来た。
「この森ってガンダムを待機させてる場所と真逆じゃねぇか・・・」
何故そんなとこに刹那が?と一瞬疑問に思ったが、今はそれどころじゃない。
とにかくロックオンは無事を祈りつつ森に向かった。
森に入り、居場所に着くとそこには無惨な姿をして倒れている刹那がいた。
全裸で、両手首はYシャツで頭の上で一まとめに縛られており、体全体に精液と無数の暴行の痕。
首には掴まれていたらしく大きな手の跡に所有痕が残されている。
顔にも暴行の痕があり、特に頬は赤く腫れていた。
そして周囲には彼が着ていた服が散らかっており、そのポケットからは踏まれたのか、ボロボロになった通信機が半分出ていた。
「っう・・・刹那・・・」
あまりにも酷すぎる状態にロックオンは呆然とするがすぐに我に返り、手首の戒めを解いたあと、刹那を抱き締めた。
「刹那っ刹那っ・・・」
名前を呼ぶが意識がない彼からは返事が返ってこない。
「刹那・・・!」
口腔に手をやると、ついてきたのは精液の他にドロリとした赤い液体・・・。
そして顔をよく見ると涙のあとが乾いていたが、うっすらとついていた。
「くっ・・・」
ロックオンは唇を噛み締め、刹那の首元に顔を押し付けると涙を流した。
まだ若い、二十歳になったばかりの青年を襲った悲劇に、いくらカタロンのスパイとして潜り込んでいたロックオン、いやライルでも、敵の非残虐的なやり方に涙を流さずにはいられなれない。
「ロックオン!」
そこに会場から逃げてきたティエリアがやって来た。
ハァハァと息を切らしている。
刹那とは反対(つまりガンダムを待機させてる場所)の道を走っていた彼は、敵に見付からない様に遠回りしてここに来たからだ。
そしてティエリアも刹那の姿と周囲を見て呆然とした。
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