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sugar

 「おはよう、蒲原君」
 夢の中ならいくらでもおはようと返せたはずなのに、いざ本人を目の前にすると動くことすら出来なかった。
 俺の片思い中の相手、谷崎歩。常に何を考えているか分からない奴。陰キャ眼鏡なのにすごいモテる。頭は良くて、テストであいつが1位以外を取ったところを俺は見たことがなかった。
 昼休み、女共が鬱陶しくて人気の少ない裏庭に逃げると女の声とあいつの声がした。
 「谷崎君!私と付き合って!」
 なんともベタなセリフが聞こえてくる。あいつの方を見ると、こんなこと慣れっことでも言うようにさらりと
 「ありがとう。でも、僕は君を好きにはなれない」
 そう言って微笑んだあいつを見た瞬間からだがしびれた。笑った顔なんて初めて見た!身体中が雷に打たれたようにビリビリして、顔に血が上った。それが俺の初恋だった。
 1日中あいつの事が頭から離れない。気づいたら目で追ってしまう。夢の中であいつは俺の彼女で、普通に会話だってできる。それなのに現実では、会話どころか目すら合わせられない。
 あいつが欲しい。あいつに告った奴は徹底的にいじめてもう二度とあいつに近づけなくしてやった。
 そして今日、不意打ちだった。いきなりの挨拶だった。心臓が飛び跳ねて、驚きで声が出なかった。挨拶を返せないままあいつは行ってしまった。
 「キャーッ!」
 女子逹から真っ黄色の声が聞こえる(男含む)。
 「谷崎様としゃべっちゃった!」
 キャーキャーと騒いでいる。
 「谷崎は相変わらずだな」
 隣にいた宮本が呟く。
 「あいつってなんであんなにモテるんだ?」
 「そりゃあお前、容姿端麗で頭もいい。しかも優しいんだぜ?もてるに決まってるだろう」
 あいつが容姿端麗!?確かに髪はさらさらだし、鼻筋も通ってるけど…。
 「ほれ、谷崎が中学ん時の写真」
 そう言って差し出されたスマホの画面には眼鏡を外したあいつが写っている。思わず魅入ってしまった。これは、モテるはずだ。
 「俺にもこの写真くれ」
 「いいけどなにに使うの?」
 「秘密」
 そんなことを話していたら教室についてしまった。さっきの事謝った方がいいよな~…。なんか口実無いかな。
 「ねぇ、これ生徒会長に渡しといてくんない?」
 生徒会長と言うのは、谷崎の事だ。まぁいいや、これで近づく口実ができた。
 「谷崎!これ生徒会の」
 いつも通り他の人にするのと同じように話しかける。
 「…ありがとう」
 かわいいいい!なんなん!?理性を保ちながら
 「さっきはごめんね?無視しちゃって」
 「別に気にしてないよ。大丈夫」
 あ、これ以上は無理だ。逃げよう。
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