期間限定小説

※ヤンデレ/監禁匂わせる表現あり


『年越し』



 広い部屋で二人きり、電気もつけずに肩が触れ合う距離で座る。

「俺は、君だけいればいい。だから、絶対離れないで」
 低く響く声は、いつもの強気な姿とは違い弱々しい。

 それでも、私を抱く腕、繋がれた手に込められた力は強くて、彼らしいなと思う。


 強くないから、精一杯繋ぎ止めようと決して離さない。

 酷く不器用で、常識外のことを平気でする彼を鬱陶しく思ったことも1度や2度ではないが、嫌いと言っても、反抗しても、何をしても彼は離れなかった。
 
 次第に絆されて、仲良く年を越すような関係になった。

 去年はチョーカー。鎖と共に行動が制御された。
 比べて今はどうだろう。自由になり、縛られているのは薬指だけ。

 彼の手が私の左手にはめられた指輪をなぞった。
 これは、束縛の証。

 左手の薬指——心臓に繋がるといわれているが、間違いない。
 私は、彼に心臓を握られてるも同然だ。


「今年もよろしくね。来年も、その次も、一生」
 窓から射し込む月明かりで、微かに見える時計の針が12で重なる。
 同時に、甘く、蕩けるような笑みを浮かべる彼。

 __瞳の奥には、暗く深い独占欲の色。


「うん。ずっと……一緒にいようね」




_これで、正しかったんだ。

 諦めるしかないから。彼は、逃がしてくれないから。
 微かに震えていることに気付かれないよう、繋いだ手に力を込めた。

 バレる前に、はやく、止まって……!



『……なんで震えてんの?』

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