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ありがとうございます。ささやかですがお礼にお話を。

「おれのこと嫌いなのか?」
見透かしたように笑みを浮かべながら聞いてくる男は私の事をよく分かってると言えるだろう。
少し控えめに、悲しそうに目を伏せながら聞かれれば、ちがう、と即座に返してしまう。すると、
その返答に満足そうに口角を上げる彼は、私の天敵だ。
初めてあったのはいつだったか。いつの間にか彼の姿は日常に溶け込んでいて、思い出すのも難しい。けれど、普通の出会いでなかったことは覚えている。
突如、私の前に現れた彼はいわゆる"ストーカー"だ。本来なら出会った時点で逃げて警察署に行くべきだけど、何故今一緒にいるのかは長くなるため割愛。
ともかく、私と彼との関係は複雑なのだ。友人でもなく、恋人でもなく、家族でもない。だけど、全てに当てはまるような距離感。
「そういえば何でも許されると思ってない?」
「さぁな」
私は今彼に説教をしているはずだが、全く悪びれない様子に頭痛がする。
「毎回言ってるけど、私のためだとしてもやりすぎなの!」
「やりすぎないように気をつけておまえが奪われでもしたらおれはどうなる?」
冷淡に返してきたその言葉にはお前ならわかっているだろう、というある種の信頼が感じられる。
実際にそんなことが起きようものなら、彼はこちらの世界での能力使用禁止、という破れば厳罰の法律を平気で破り、即座に私を取り返すだろう。この男の前に義務となっている契約者―私との間に結ばれた「能力を絶対に使わない」という約束など意味はないだろう。
本当は絶対に能力を使えないよう、彼のいた世界で弱点である石を埋め込んだ首輪をつけるはずが、完全なる私の不手際でこの男にはつけられていない。
「……そろそろ、私への執着を捨ててもいいんじゃない?」
「は?何を言っている。お前が近くにいないなら死んだも同然だ」
当たり前のように返され、頭痛が更に酷くなる。思わず目を閉じて頭を抑えれば、頭痛の原因から声をかけられる。
「頭痛ェのか?俺が診てやるぞ」
「ほら、こっちにこい」
ソファに座っている彼が自分の足の間をポンポンと示す。
そんなに近くなくてもいいのに。
言っても無駄なことなので、渋々立ち上がり、座った。
何も言わずに後ろから手を回し体全体で包み込むように抱きしめられる。
「診てくれるんじゃなかったの?」
「気力補充だ。……それに、お前のそれは病気でも何でもないだろう」
何でもないように返す彼に呆れる。この人は最初から何もかもわかっていてただ抱きしめたいがために座らせたんだろう。

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