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「お先失礼します」
「お疲れ様です!」
ロビーまで歩く足取りはとても軽い。
今日は忙しかったが上司に褒められ、担当していたプロジェクトの反応はとても良く達成感で一杯だ。
家までの帰路を歩いていれば、美味しそうな惣菜屋さんを見かけ、ハムカツを一つ買って食べながら歩く。
美味しいものを食べられ、家に帰ったらゆっくりソファでくつろぎながらテレビで好きな番組を見れる。なんて幸せ。
鼻歌を歌いながら歩いていれば、会社の近くな家ということもありすぐに家に着く。
鍵を開け、ドアを開けばいつもの変わらない我が家。
最近置き始めた芳香剤のおかげで部屋全体にアネモネのいい香りがする。
靴を脱ぎ、食べ終わった紙袋を捨て、上着を脱いでソファに座れば一気に体の力が抜けた。
ふー、と息をつきテレビをつける。あ、ちょうど私の好きな番組だ。
そのまま、着替えも忘れて熱中して見た。
コンコン、と音が響く。今いいところなのに。
あぁでもこの前注文した評判のいいお菓子が届いたのかもしれない。浮かれてモニターで確認せずに鍵を開けた。
カチャリと音が響いた途端、ドアノブに手を掛けていないのに扉が開いた。
びっくりして顔を上げれば、
自分より10センチほど背が高く、黒いパーカーを羽織った男がいた。
深くフードを被っていて口元しか見えない。
一瞬誰かと疑問に思ったが、私に向けられたナイフで全て思い出す。
“約束”……思い出した途端、恐怖心に身体が震える。
硬直している間に、バタンとドアを閉め、腹に刃先を当て静かな声が耳に入る。
「裏切ったやろ、あの時の約束はどうしたんや?」
低く唸るような声と怒りの混じった瞳に身体がすくんで動けない。
「ごめん、なさい」
かろうじて絞り出せた謝罪の言葉に、目を細めたのが見えた。
が、すぐにやってきた声にならない痛みに視界が暗くなった。
目に光が入ってくる。ぱちり、目を開ければ天井が見え、仰向けに寝ていることに気付く。
腰になにか違和感があり、触れてみれば包帯が巻かれていた。
「あ、あんまり触ると痛むで」
忠告通りズキズキとした痛みがした為、そっと手を離す。
様子を伺うように覗き込む顔に息が止まる。
恐怖心ももちろんあったが、フードを取ってはっきりと見える顔はとても整っていて、かっこいいな、と呑気なことを思う。
「動けるか?痛かったら無理せんでええで」
落ち着いて声をかけられると滅多に聞くことのない関西弁で話していることに気付く。
とりあえず身体を起こそうとしてみれば、お腹に刺すような痛みが走り、声が漏れる。
「ダメそうやな」
その様子を見てひとつ息をつくと、
「その身体じゃ動けないだろうけど、一応言っとくわ。逃げ出そうとか思っても絶対逃がさへんからな。……俺結構お前のこと信じてたんよ、裏切られるとは思っとらんかった」
刺々しく吐き出された言葉からは怒りと悲しみを感じ、申し訳なくて俯いてしまう。
部屋の中に重苦しい空気が流れているところに
コンコン、とノックの音が響く。
「この部屋に住んでいる方を探しているのですが、いますか?」
扉越しに聞こえてきたはっきりとした声。警察だろう。
それを聞くとあからさまに不機嫌な顔になりちっ、と舌打ちを零す。
この隙に……逃げ出せるのではないか?
立ち上がりナイフの元へと手を伸ばした時、身体の向きが私から逸れた。
__今だ。
勢いをつけて立ち上がり、一直線に玄関へと向かおうと1歩踏み込む。瞬間、強く腕を掴まれ、引き寄せられる。
「ッ……!逃がさへんで、お前は俺とここで死ぬんや」
引っ張られた直後、肌がピリッと裂ける痛み。すぐに激痛が襲いかかってくる。どくどくと流れる血の感覚を最後に、目の前が暗くなっていった。
ぬるり、大量にかかった返り血で握ったナイフが滑る。
ぐっ、っと念の為もう一度深くつき刺せば、流れ出る赤が床に血溜まりを作る。
ナイフを引き抜き、狙いを定めるように自分の左胸に切っ先を押し付ける。
服が裂け、皮膚がチクリと痛む。
「俺もすぐそっちに行くからな」
意識をなくした彼女に話しかけ、手に力を込めた。
to be continued……?