悪戯とアルコール
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改めて常識の通じなさを実感してからは、ネットやらバイト先の先輩を通じて酔いやすいお酒について警戒するようにしたし、“レディーキラー”なんてたいそうな名前がついたカクテルについては色や材料まで調べた。
不意に酔うことはない、なんて油断混じりに呟いたとき。
「これで悪い男に騙されないね」
愉快そうに笑うお兄さんは、相変わらず真意の読めない瞳で、ただ感情表現が豊かになった気もする。
思わず「悪い犯罪者が目の前にいますけどね」などと口走ってしまえば、「もう一杯飲みたいの?」と彼が口つけていた度数の高いウォッカを唇に押しつけられた。
じゃれあいのように軽快なテンポで交わされる会話も、手元に囲んでいるアルコールによって異様な雰囲気を醸し出す。
彼はどこからみても大学生以上の成人男性で、私は制服から卒業できない学生——未成年。
僅かに開いた口のすき間に、容赦なく傾けられたアルコールが注がれる。
首筋を伝ってひやりと胸に落ちる雫がきもちわるくて、意識を取られれば喉に流し込まれた液体を微量飲み込んでしまった。
「あーあ、めっちゃ溢れてんじゃん」
どの口がいう。喉に出かけた言葉を飲み込んで、彼を睨む。
「ちゃんと拭いて、ほら」
意図にも介さず渡されたハンカチを、嫌々受け取る。
広げた瞬間ふわりと匂ったのは、高貴と表現したくなる香り。身も蓋もないことを言ってしまえば、明らかに高級デパートか香水専門店にしか並べていなさそうな香水。
「意外ですね、」
主語もなにもない呟きでも、視線の先で察したのかあぁ、と反応した彼。
「金だけはあるから。別にそんな好きでもないんだけどね」
「やっぱり高いんですか?」
「んーっと幾らだったかなぁ、多分2万とかそこら」
つまらなそうに補足を挟んだ彼は、すぐに興味をなくしてタッチパネルを弄ぶ。
数分も経たずとして途切れた会話でも、金銭感覚が随分違うことは理解できた。
深くは話してくれない、謎だらけの男性。
どうして一緒に居るんだろう、なんて最初から脅されている立場としては相応しくない考えを巡らせた。なんで、こんなにお兄さんのことが気になってしまうのか。
態度や行動が緩和してきている、なんて幻想にしか過ぎなくて、実際彼は優しくもなっていないのに人は適応していってしまうようだ。
黒に染まらないように。決意を固めて飲むアルコールは、変な味がした。