愛の結晶
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終演後、夢心地のまま友人らと夕食をとる。
食べ終わった頃には感想を言える程度にはなり、各々話しながら駅まで歩く。
ひんやりとした夜風が火照った身体を少しずつ冷まして、落ち着いてくる。
駅構内でそれぞれ別れの挨拶を済まし、電車へ乗り込む。
混んではいたが運良く席が空き、座わることができた。ライブの感想をまとめつつ、数十分揺られる。
本当に、良いライブだった。
ある程度書き出したあとぼーっと頭に浮かんだのは単純な感想だった。でも、この一言に尽きる。
焔さんのツイートや、友人達にリプを送っていれば、あっという間に目的地についた。あとは10分ほどで着く家まで歩くだけ。
疲労はあったが、街頭もあまりない夜道では他の目を気にせずに余韻に浸れる。
帰り道、思う存分ニヤけつつ振り返るのが習慣になっていた。
だから、地面に映る自分じゃない誰かの影と、重なるもうひとつの足音には気付かなくて。
——誰?
慌ただしく動いていた脳内思考が一斉に止まり、背後から鳴るコツ、コツ、という音が頭に響く。
サーっと血の気が引いていく感覚。
立ち止まってしまったのが、いけなかった。
上手く身体が動かせなくて、意図せず止まってしまったけれど、もし追い越されたら自意識過剰で済む。
そんな思考もどこか頭の隅にあったんだろう。
だから、私の影と誰かの影が重なって、動く気配がないことに、本当に不味いことが起きているのだと本能が理解した。
意思とは関係なく、震える足が動き出す。
体力なんてないから、すぐに息が切れて、苦しくなって、身体が重くなる。
それでも、背後から聞こえる足音は止まず、離れることもない。
家の近くに交番があるから、そこまで行けば大丈夫。
なのに、街灯に照らされた道は終わりが見えない。
なんで、いつもはすぐ着くのに!!
酷い焦りで感覚がおかしくなっているのか。冷や汗は止まらず、服がびしょびしょになっている。
風が当たるたびに突き刺さるように冷たいが、構っていられない。
さっきから、足音が近付いているのだ。
距離を引き離そうと限界までペースを上げているが、身体に力が入らない。
——交番に着く前に、その時は訪れた。
「は、あっぶな……そんなに走ってどうしたんですか?」
足が縺れ、コンクリートが目の前に広がった時、腹部にゴツゴツした手の感触。つぎに、強い力で体制を直された。
暗くて顔が見えないが、二十代頃の男性な事は間違いないだろう。
もしかしたらここまでの出来事は偶然かもしれない、と一縷の望みにかけて絡んだ腕を解こうとしたら、さらに強い力で抱かれた。
「っやだ!離してよッ、ストーカー!」
大声を出したはずなのに、掠れた音が喉からぎこちなく出る。
密着している人でさえ聞こえるか聞こえないかの声量で、人が助けにくるなんてありえない。
絶望的な状況に、視界がぼやけた。