愛の行方
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『dawn』ツアーが開催され、無事全ての公演チケットを手に入れられた。
だが、いざツアー開始となれば、終演後のメンバー握手会で思わぬことが起きていて……
「すみません、」
スタッフに声をかけられ、並んでいた黎くん握手会の列から離脱させられる。
最初は何かしてしまったのかと慌てたが、今はため息を吐くばかり。
「暁さんですか?」
言いにくそうなスタッフを見て、予想し得る名前を出せば、肯定の返事。
ここでスタッフに何を言おうと、無駄だというのは学んだ。
私を列から出すのはスタッフだが、それを強制しているのは暁さんだ。
何度もやめてくれといっているのだが、
「だって俺のファンなのに黎のところに並んでるのはおかしいやん?」と主張する。
私が望んで並んでいるのだと言っても、まるで聞こえていないように
「列間違えたらあかんで?」と言う。
どうやら変な執着をされてしまったようで、過剰なスキンシップや、黎くんのところに行かせてくれない、といった束縛をされるようになった。
暁さんのファンと話していて分かったのだが、握手会などのイベントで、距離をぐっと近付けられるようなことはないらしい。
知ったときは物凄く混乱した。
そんなこんなで、最近はまったく黎くんと話せていない。
せっかくのツアーなのに、感想を伝えられないのは辛い。
今日こそは暁さんの暴挙を止めようと、意気込んで彼の元へ向かう。
「あ、ちょっとええ?」
口を開こうとした時点で遮られ、腕を掴まれた。
そのまま人目がない裏通路まで連れて行かれ、そっと離される。
「なぁ、連絡先交換しようや」
ちょうど周りに人が居ないとはいえ、ファンが沢山居るこの場で、私的な誘いを持ちかけている。
どうして私にそこまでするのか謎だが、あくまで黎推しな上、恋愛感情は一切持っていない私の答えはひとつだった。
「結構です」
私の返答に一瞬目を見開いたかと思えば、すぐに微笑み
「あー遠慮してるん?」
と、見当違いの答えを出した。
いいから交換しようや、と迫る彼の言葉に、否定しようとすれば、人差し指を口元に当てられ、シー、と黙らせられる。
「気にしなくてええよ、ほらスマホ出して?」
そう言いながらも勝手にポケットに手を入れられる。
咄嗟に身を引けば、腰に手を回されぐっと引き寄せられる。身長差を使われ、手の届かない位置に掲げられて、勝手に登録された。
「これでいつでも話せるで、」
嬉しいやろ、と続けられた言葉に、思わずため息をついた。
「暁さん、そろそろ……」
スタッフの呼びかけに、手を振りながら関係者以外立ち入り禁止スペースに入っていく。
私の手には、友だち欄に”暁”と表示されている携帯。
今すぐ削除したい気持ちだが、そこまでの勇気はない。
あれだけ強引に登録した人が、ブロックでもされていることに気付いたら、何をするかわからない。
帰り道、訳のわからないことになっているストレスを発散するため、ひたすら美味しいものを食べた。
ツアーの良いところは、色々な名物が食べられることだろう。