愛の行方
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「それじゃ、乗ったら感想送るから!よろしくね!」
駆け足で去っていった友人。
何事もなくライブが終わり、彼女は仕事に駆り出されていく。
ライブ本編が短めでアンコールまでいられたからか、足取りは軽かった。
友人を見届けた後、握手会の列に並ぶ。
感想をまとめるのに時間がかかるため、なるべく後ろの方で……と言われた通り、最低でも30分はかかるであろう位置。
列が進んでいき、目の前に並ぶ人が少なくなっていくたび、鼓動が早くなる。
物販の代理はあれど、握手会で黎くん以外のメンバーのところに並ぶのは初めて。
送られてきたメッセージを何度も見て、心の中で復唱する。
うん、大丈夫。
そうしている内に私の番になり、スタッフに案内される。
接触イベント自体は何度も体験しているはずなのに、手汗と動悸が凄い。
自分でも驚くぐらい緊張している。
「初めまして、よな?」
机を挟んで置かれたパイプ椅子に座れば、伺うように聞かれた。
代理です、とは言わずに曖昧な肯定で返し、伝えたいことリストを思い浮かべ、なるべく友人の言葉そのままで口に出す。
話している最中ずっと目が合っていてより緊張したが、普段伏せ目な黎くんの方が珍しいんだろう。
人見知りの私にとっては目を合わせない黎くんの方がありがたいな、なんて考えながら、ライブの感想を言っていれば、
最初は握手だったはずが、話している内に指の間にするりと、骨張った指が通り俗に言う”恋人繋ぎ”になる。
私が推している黎くんは基本、最低限の接触なため、驚いて口が止まる。
「ん?どしたん?」
ぎゅっ、と強く握る暁さんは、悪戯な笑みを浮かべている。
わかっていてわざとやっているんだろう。
ただ、私は黎くん一筋なため恥ずかしさ、嬉しさよりも、困惑が強い。
居心地の悪さに、繋いでいる手を引き抜こうとする私をどう思ったのか、
「照れなくてもええんやで? 君のこと気に入ったし、今から俺の”トクベツ”やから」
絡んだ手の上からもう片方の大きな手で包み込まれて、ぐっと引き寄せられた。
特別、と耳元で囁かれさすがに顔が熱くなる。
きっと赤く染まっているであろう顔を見て、満足気に手を振る暁さん。
恥ずかしさを誤魔化すように立ち上がり、足早に外まで歩いた。
暁さんって、こんなファンサービスしてくるんだ……。
いつもとは違う距離の近さに戸惑う。
これを耐えるファンの人、凄いなぁ……私は恥ずかしさで話したい内容が飛んだ。
ほとんど伝えたあとだから良かったけど。
トクベツ、なんて言われたが、きっとそれもサービスの一環だろう。
この時の私はそう思っていた。まさか、初見で認知されるなんてことはないでしょう、と。