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「なにしてるの?」
聞き慣れた低い響く声が耳元でつまらならなそうな口調で呟く。
……冷や汗が止まらない。
何か行動を起こしてくれれば、言い訳はどうすれば良い?そもそもなんでここにいるのか、何故なにもしない?頭の中がぐちゃぐちゃになっていく なんで、どうして。
腰に手を回され甘える様に背中に身体をぴったりと付けられる。そのまま肩に顔を乗せられ、光が映し出されていない目で私を見てくる。
手が震える なにもしてないよ なんでもない そう言いたいのに上手く言葉を紡げない唇に焦り、苛立ちを覚える。
「何でこのチェーンは外れてるんだろうね? 掛けたはずなんだけどな……」
そう呟き、私を抱き締めたまま
目の前でぶら下がっていたチェーンをじゃらじゃらと音を立てて掛ける。
数秒の沈黙。
それを破ったのは柊だった。「何か言ってよ。俺が分からないとでも思ってんの?」耳元に口を近付けられ、苛立っている事が察せられる声で聞かれる。
身体の芯まで鳥肌が立つ。その声一つで支配されてしまうのではないかと危機感を覚える声に、生まれてからの喜怒哀楽全ての感覚・感情を混ぜ合わせたような、言葉に出来ない不気味さを感じる。
「何もしてないです。」
迷った末、出た言葉は果たして正解か不正解か。冷たい視線を向けられごめんなさい、と謝罪の言葉を口にしかける。
いや、ここまで来たなら最後まで突き通して、今度こそ、私への愛は歪んだモノだということを自覚して貰いたい。
「梨音が何もしてないのにこのチェーンは外れたんだ?」
鼓膜に響く低い声にぞくっとしながら言い返す。
「元々掛けるの忘れてたとかじゃない?」
わすれてた、かぁ……
反復する様に呟いた柊は腰に回していた手を戻し、私から離れた後、話している間ずっと合わせていた視線を外した。
……怖かった。張り詰めた空気から解放された安心感で涙ぐむ。
「あぁ、そういえば今日の夕飯何にする?」
何でも大丈夫。だけど、冷蔵庫の豆腐と卵が明日までだよ~ じゃあ味噌汁で使うかな そんな“いつも通り”のやりとりをしているけど__柊の目は不気味な程据わっていた。
「柊?」
一言呼んでも
「んん、なに?」といつも通りな返事が返ってこない。
代わりに返ってきたのは身の自由を奪う抱きしめと、耳元での「あんなわかりやすい誤魔化し、騙されるわけないだろ」という声だった。
これは、だめだ。
甘い蜜をさらに煮詰めたような感覚が全身に広がる。くらっとしながら横を見ると僕の首筋、肩の近くを噛んでいる。
「ねえ 梨音は俺のこと、愛してるよね?」
何度聞かれたのか数えきれないな……回答なんて、はい以外の選択肢はない。
どこで間違えたんだっけ。とりあえず“歪んだ愛を自覚してもらう”なんて事は、自殺行為でしかなかったんだろうね。
歯型の跡はうっすらと血が滲んでいる。その上、生暖かい舌でなぞられ傷口は刺激を受け続けている。痛い、声を押し殺して耐えても涙は零れる。
時折こちらを見る目は、私の涙の跡も予想内なんでしょう。「泣かないで」と言ってるけど、口角は上がっている。
それに、私の目を見つめながら、そんな悲しそうな顔しないでよ、と言う君の顔は微笑んでいる。
大嫌い。
そう言えたら楽なのに。
私も君に依存しているんでしょう、君の言葉を気持ち悪いと思っているのに。君のする事が気持ち悪いと思っているのに。
どうしても、抱き締める手を払えない。
「よしよし……もう逃げようとすんなよ?」
頭を撫でられながら最後の方はとても低い声で言われて、何回も頷く。
床に固定されていた視線を上げると、寝室の方を見てその後私を見て、んー と首を傾げた後また寝室へ視線を投げる。
めちゃくちゃにされるんだろうなぁ。イヤだけど、今シなかったとしても明日襲われるんだろうから。
大人しく柊のベットへ歩いていった。
寝室に入って直ぐ手を引かれ、そのまま柊のベッドに押し倒される。
「ねぇ~していーい?」
甘い調子の声で聞いているけど、覆い被さる姿からは色気が出ていて、その気は無いはずなのに“襲って欲しい”なんて感情が沸き上がる。
ここで頷いてしまったら私の中のなにかが壊れる気がして、静かに首を振った。
「だめなの?」
顔の横に置いていた両手で顔を包まれ、視界も暗くなる。首筋についた『独占欲』の傷に生暖かい息がかかる。
そのまま大きな手は下へと移動し、視界が明るくなり柊と目が合う。
「もう一度聞くよ。していいよね?」
先程の甘い声とは比べ物にならないほどの、妖艶な雰囲気を纏う声に身体の奥が疼く。
私が抗えないと知っているから。それなら有無を言わさない口調で確認してこないで襲えばいいのに。貴方は私一人くらい押さえつけられるでしょう? それでも確認を取るのは優しさなのか歪んだ感情のせいなのか、きっと後者だろう。
首を縦に振り、柊に身を委ねる。
一夜で終わるわけがない。何回私のナカで欲を吐き出すのか不安になるが、必死に思考を巡らせたとして、結局全て柊の気分で変わるんだ。考えても仕方ないだろう。
思考を放棄する合図代わりに柊の首へ腕を回す。
「優しくしてね?」
「出来る限り。」
守られることはない約束を交わし、目を閉じる。
いつ明けるかわからない夜の始まりだ。