三部・承太郎
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「ポッキーゲームゥ?」
ポッキーの端を二人で咥えて徐々に食べていき、先に顔を離した方が負けとかいうアレだ。
世の中はなんてくだらない風習を思いつくんだろう。
くだらなさ過ぎて反吐が出る、なんて言わないが、とにかくまあ呆れた。
「そんなくだらないゲームのために、ポッキーを浪費するのは賛成しかねるわね。・・・で、その手に持っているのは」
「ポッキーだな」
「だろうね、見れば分かるよ。あとやらないから」
「おれもやらん。今朝、おふくろから無理やり持たされただけだからな。これは普通に食う」
「あっそう。じゃあ一本ちょうだい」
承太郎の許可を得る前に、開封された袋からポッキーを一本だけ引っこ抜いた。
サクサクのビスケット部分と甘いチョコレートの絶妙なハーモニーが口内に広がっていく。
うまいうまいと味わっていると、廊下から女子生徒たちの声が聞こえてきた。
「ジョジョー!どこなのー!?」
「あたしとポッキーゲームしましょー!」
「だめよ!ジョジョとポッキーゲームするのは!わたしなんだから!」
「言ったわね、このメス猫ッ」
「おっと」
騒がしい集団の声が徐々に遠のいていくまでの間、わたしと承太郎は息を潜めてその場をしのぐことにした。
言い忘れていたけれどここは空き教室だ。
もちろん、この教室は無断使用だ。
ちなみに時刻は・・・放課後とだけ言っておこう。
だから薄暗い室内でも、気づかれないためにも電灯を点けていないし、窓は擦りガラス製なので、覗きこみでもされない限りは外から気づかれる心配はない。
わたしたちが二人してここにいるとこを女子生徒にばれた時の面倒くささといったら、まあ、想像上でしかないが、恐らくとんでもないことになるだろう。
「行ったね」
遠のいていく喧騒に、屈めていた体を起こした。
もうすぐ夕陽が沈む。
そしたら、あっという間に辺りが暗くなる。
そうなる前に、そして教師に気づかれる前に帰ったほうがいいだろう。
「わたしたちも、そろそろ帰ろうか」
既に先ほどより薄暗さが増した室内を見渡しながら、椅子から立ち上がる。
教材の入ったままの鞄を掴もうと腕を伸ばした。
ところがそれを、横からにゅっと伸びてきた大きな手に掴まれたので、わたしはぎょっとして顔を上げた。
闇が濃い教室で、外側の窓ガラスから辛うじて差し込む夕陽が承太郎の横顔を照らしだしている。
その口元に咥えられている棒状のものを認識するより早く、その冷たい先端がわたしの唇に触れた。
意思に反して押し込まれたチョコレートが唇に付着して、同時に、承太郎との距離が急速に縮まっていった。
わたしからかじることはしない。
だのに、もうすぐそこまで終わりが近づいている。
さっき、やらないって言ったのに。
ついに彼は、わたしが言おうとした言葉まで食べてしまった。
ポッキーの端を二人で咥えて徐々に食べていき、先に顔を離した方が負けとかいうアレだ。
世の中はなんてくだらない風習を思いつくんだろう。
くだらなさ過ぎて反吐が出る、なんて言わないが、とにかくまあ呆れた。
「そんなくだらないゲームのために、ポッキーを浪費するのは賛成しかねるわね。・・・で、その手に持っているのは」
「ポッキーだな」
「だろうね、見れば分かるよ。あとやらないから」
「おれもやらん。今朝、おふくろから無理やり持たされただけだからな。これは普通に食う」
「あっそう。じゃあ一本ちょうだい」
承太郎の許可を得る前に、開封された袋からポッキーを一本だけ引っこ抜いた。
サクサクのビスケット部分と甘いチョコレートの絶妙なハーモニーが口内に広がっていく。
うまいうまいと味わっていると、廊下から女子生徒たちの声が聞こえてきた。
「ジョジョー!どこなのー!?」
「あたしとポッキーゲームしましょー!」
「だめよ!ジョジョとポッキーゲームするのは!わたしなんだから!」
「言ったわね、このメス猫ッ」
「おっと」
騒がしい集団の声が徐々に遠のいていくまでの間、わたしと承太郎は息を潜めてその場をしのぐことにした。
言い忘れていたけれどここは空き教室だ。
もちろん、この教室は無断使用だ。
ちなみに時刻は・・・放課後とだけ言っておこう。
だから薄暗い室内でも、気づかれないためにも電灯を点けていないし、窓は擦りガラス製なので、覗きこみでもされない限りは外から気づかれる心配はない。
わたしたちが二人してここにいるとこを女子生徒にばれた時の面倒くささといったら、まあ、想像上でしかないが、恐らくとんでもないことになるだろう。
「行ったね」
遠のいていく喧騒に、屈めていた体を起こした。
もうすぐ夕陽が沈む。
そしたら、あっという間に辺りが暗くなる。
そうなる前に、そして教師に気づかれる前に帰ったほうがいいだろう。
「わたしたちも、そろそろ帰ろうか」
既に先ほどより薄暗さが増した室内を見渡しながら、椅子から立ち上がる。
教材の入ったままの鞄を掴もうと腕を伸ばした。
ところがそれを、横からにゅっと伸びてきた大きな手に掴まれたので、わたしはぎょっとして顔を上げた。
闇が濃い教室で、外側の窓ガラスから辛うじて差し込む夕陽が承太郎の横顔を照らしだしている。
その口元に咥えられている棒状のものを認識するより早く、その冷たい先端がわたしの唇に触れた。
意思に反して押し込まれたチョコレートが唇に付着して、同時に、承太郎との距離が急速に縮まっていった。
わたしからかじることはしない。
だのに、もうすぐそこまで終わりが近づいている。
さっき、やらないって言ったのに。
ついに彼は、わたしが言おうとした言葉まで食べてしまった。