三部・承太郎
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ここ最近の私の悩みを聞いてほしい。
髪型が決まらないとか、爪を切りすぎたとか、好みの服を焚き火で焦がしたとか、普段なら落ち込むことがどうでもよく思えてしまうくらい、現在進行形で新たな悩みを抱えている。
それは何かというと・・・。
「よお。また会ったな秋山」
「うわああああああーーっ」
空条承太郎、こいつの存在だ。
私は大声を上げて逃げた、情けない声だけどこの際関係ない。
逃れられればよかろうなのだ。
この学校のアイドルといっていい彼を、こいつ呼ばわりしていることを女子生徒に知られた場合のことを想像すると恐ろしいが、この際は二の次だ。
というか、私も初めはそんなつもりはなかった。
天に誓ってもいい。
しかし理由が理由だから、どうかこのことは許してほしい。
同級生だけど親しくない、何の接点もない。
だのに、どうしてなのか分からないけれど、本当になんでこうなったのか心当たりが微塵もないのだけど、ここ最近、彼と行き着く先々で上手いこと出くわすのだ。
ある日は中庭、ある日は空き教室、ある日は人気のない踊り場、ある日は・・・そう、ロッカー、あれはキツかった。
ロッカーの掃除箱を開けたら「ここは満員だ」と意味の分からない行動をとられて、あまりに衝撃的だったから大声を出すことも忘れてしまい、扉をそっと閉めて部屋を出たのはまだ記憶に新しい。
ここまできたら流石に、あいつ呼ばわりをしたくもなる。
そんなこんなで、私の精神は日に日に磨り減っていった。
何がしたい?
嫌がらせか、そうなのか?
何を目的としてここまで付きまとうのか、彼の考えがてんで理解できない。
次は何処で遭遇するんだろう。
「つ、疲れた・・・・・・」
ついぞ考える気力さえなくなり、いくら私がポジティブシンキングな性分でも拭いきれない不安を抱えながら、ふらふらと廊下をさ迷っていた。
誰か助けて欲しいと思い、ふと顔を上げると、そこには隣のクラスの花京院くんの姿が。
ちょうど角を曲がろうとしているところだが、走れば間に合うだろう。
彼とは何度か会話したことがあるし、比較的、話を親身に聞いてくれるから相談に乗ってくれるかもしれない。
私は彼に駆け寄って思い切って声をかけた。
「花京院くん、ちょっといいか、な・・・・・・相談・・・・・・」
声をかけたのだけど、かけたかったのだけど、最後の方が萎んでしまったのには訳がある。
「おや」
「ひ」
嫌でも耳にこびりついて離れないバリトンの声に、私の体が条件反射で逃げる体勢に入った。
「ひいいぃぃ!空条サンンン!!」
花京院くんは一人じゃなかった。
私をここまで悩ませる張本人、空条承太郎と一緒だったのだ。
「秋山か。初めてだな・・・お前の方から会いに来てくれたのは」
目深に被っていた学帽のつばを指先で持ち上げて、彼、空条承太郎は私に視線を合わせた。
逃げた。
私は残された体力を振り絞って逃げた。
はずなのに、どういう訳か私の襟首は空条サンに掴まれている。
まさに拾ってきた猫状態。
走って、二人がいる位置から2mは距離をとったはずなのに、私の体はさっきまでいた場所、二人の傍に戻ってきていた。
「たっ・・・」
不思議現象に脳がついに悲鳴を上げる。
「た?」
蚊の鳴くような声を聞き取ろうと、彼は手の平を耳に添えて続きを促した。
「・・・たいりょくのげんかい・・・・・・」
キャパオーバー。
疲れきった脳みそではもう何も考えることができなかった。
されるがままの私と、影で表情の見えない空条サンとを見比べて、花京院くんは物言いたげな表情をしたが、すぐに踵を返して「承太郎、先に行ってるぞ」と角先の階段を下りていってしまった。
最後の希望よさらば。
髪型が決まらないとか、爪を切りすぎたとか、好みの服を焚き火で焦がしたとか、普段なら落ち込むことがどうでもよく思えてしまうくらい、現在進行形で新たな悩みを抱えている。
それは何かというと・・・。
「よお。また会ったな秋山」
「うわああああああーーっ」
空条承太郎、こいつの存在だ。
私は大声を上げて逃げた、情けない声だけどこの際関係ない。
逃れられればよかろうなのだ。
この学校のアイドルといっていい彼を、こいつ呼ばわりしていることを女子生徒に知られた場合のことを想像すると恐ろしいが、この際は二の次だ。
というか、私も初めはそんなつもりはなかった。
天に誓ってもいい。
しかし理由が理由だから、どうかこのことは許してほしい。
同級生だけど親しくない、何の接点もない。
だのに、どうしてなのか分からないけれど、本当になんでこうなったのか心当たりが微塵もないのだけど、ここ最近、彼と行き着く先々で上手いこと出くわすのだ。
ある日は中庭、ある日は空き教室、ある日は人気のない踊り場、ある日は・・・そう、ロッカー、あれはキツかった。
ロッカーの掃除箱を開けたら「ここは満員だ」と意味の分からない行動をとられて、あまりに衝撃的だったから大声を出すことも忘れてしまい、扉をそっと閉めて部屋を出たのはまだ記憶に新しい。
ここまできたら流石に、あいつ呼ばわりをしたくもなる。
そんなこんなで、私の精神は日に日に磨り減っていった。
何がしたい?
嫌がらせか、そうなのか?
何を目的としてここまで付きまとうのか、彼の考えがてんで理解できない。
次は何処で遭遇するんだろう。
「つ、疲れた・・・・・・」
ついぞ考える気力さえなくなり、いくら私がポジティブシンキングな性分でも拭いきれない不安を抱えながら、ふらふらと廊下をさ迷っていた。
誰か助けて欲しいと思い、ふと顔を上げると、そこには隣のクラスの花京院くんの姿が。
ちょうど角を曲がろうとしているところだが、走れば間に合うだろう。
彼とは何度か会話したことがあるし、比較的、話を親身に聞いてくれるから相談に乗ってくれるかもしれない。
私は彼に駆け寄って思い切って声をかけた。
「花京院くん、ちょっといいか、な・・・・・・相談・・・・・・」
声をかけたのだけど、かけたかったのだけど、最後の方が萎んでしまったのには訳がある。
「おや」
「ひ」
嫌でも耳にこびりついて離れないバリトンの声に、私の体が条件反射で逃げる体勢に入った。
「ひいいぃぃ!空条サンンン!!」
花京院くんは一人じゃなかった。
私をここまで悩ませる張本人、空条承太郎と一緒だったのだ。
「秋山か。初めてだな・・・お前の方から会いに来てくれたのは」
目深に被っていた学帽のつばを指先で持ち上げて、彼、空条承太郎は私に視線を合わせた。
逃げた。
私は残された体力を振り絞って逃げた。
はずなのに、どういう訳か私の襟首は空条サンに掴まれている。
まさに拾ってきた猫状態。
走って、二人がいる位置から2mは距離をとったはずなのに、私の体はさっきまでいた場所、二人の傍に戻ってきていた。
「たっ・・・」
不思議現象に脳がついに悲鳴を上げる。
「た?」
蚊の鳴くような声を聞き取ろうと、彼は手の平を耳に添えて続きを促した。
「・・・たいりょくのげんかい・・・・・・」
キャパオーバー。
疲れきった脳みそではもう何も考えることができなかった。
されるがままの私と、影で表情の見えない空条サンとを見比べて、花京院くんは物言いたげな表情をしたが、すぐに踵を返して「承太郎、先に行ってるぞ」と角先の階段を下りていってしまった。
最後の希望よさらば。