一部
アリシア
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「まあ。ジョジョぼっちゃま、いつのまにお帰りに」
「ただいま、みんな。さっき帰ってきたばかりさ」
ジョナサンが次の話題を振ろうとしたであろう、ちょうどその時、第三者の声が広すぎる空間に転がり込んだ。
覗き込めば顔が映りそうなくらい曇りのない大理石の床を、複数の足音が丁寧に音を響かせながら近づいてきた。
さっきのメイドが戻ってきたのだ。
「おかえりなさいませ、ぼっちゃま」
「おかえりなさいませ。本日のお散歩はもうよろしいので?」
「うん、今日も楽しかったよ。できたばかりの喫茶店に行ってきたんだ。あそこの紅茶はなかなか美味しかったから、行ってみるといいよ」
この屋敷に使えているメイドや執事らしき人たちが、口々に出迎えの言葉をかけていく。
わたしは背筋を正して彼らと向かい合った。
こういうのを、そうそうたる顔ぶれというのだろう、誰もが自信に満ち溢れた顔つきをしていた。
これから仕事を教えてもうことになるかもしれない、顔を会わせて間もないメイド・・・彼女も当然、その一人である。
こちらの視線に気づいた彼女と視線がかち合えば、彼女は不敵な笑みを浮かべた、ように見えた。
早くも頭が上がりそうにない。
わたしたちの間に立つ形になったジョナサンはというと、相も変わらず微笑をたたえている。
「アリシア、ぼっちゃまへの自己紹介はもう済ませましたね?」
不意にかけられた言葉に、とっさに「はい」と返した。
上ずった声にならなかっただけ上出来だと思う。
「よろしい。では紹介しましょう。こちらは、このお屋敷に仕えている使用人たちです。みなが仕事に誇りを持ち、ジョースター家を支えることに尽力を尽くしています。分からないことがあれば、彼らにも尋ねるといいでしょう」
「わたしどもにお任せ下され」
「ご心配なく」
「いまは不在のジョースター卿からの伝言のこともあります。みなさんも、慣れるまでの間は、この子のことを頼みましたよ」
ある人は軽く会釈し、ある人は、首もとの蝶ネクタイを傾いてもいないのに指でいじった。
と、ここで、じっと何かを促すように見つめてくる彼女に、そういえば自己紹介がまだだったと気がつかされて、慌てて口を開く。
「自己紹介が遅れました。父の紹介で、本日よりお世話になります、アリシア・フェリシスタスです。どうぞよろしくお願い致します」
「・・・あなたのお父様のことは既にジョースター卿からお話を伺っています。大変な時期に辛いでしょうけれど、いつでも胸を張っていられるようになりなさい」
これはご両親のためでもあります、と力強く彼女は言った。
父は、ジョースター卿にどこまでを打ち明けたのだろう。
自分のこと、娘が一人いること、母が亡くなったこと、今後のこと全てかもしれない。
わたしの知らないところで交わされた約束を、いまさら、当人の了解をなしに違えることはできない。
なにより、これは父が望んだことなのだから、それに従うのが、いまできる唯一の親孝行だろう。
わたしは静かにうなずいた。
「さあ、時間は有限です。それぞれ持ち場に戻って・・・。あなたは、こちらへおいでなさい」
「はい」
いっそ夢であればいいのに。
そんな気持ちを打ち消すように、肩に置かれた暖かい手の平が、私を支えるように背中の方へ滑り込んで屋敷の奥へと誘う。
そのまま私は歩みを進めた。
「アリシア、またあとで・・・・・・」
背後からぽつりと聞こえた声は、静かな空間に溶けて消えた。
「ただいま、みんな。さっき帰ってきたばかりさ」
ジョナサンが次の話題を振ろうとしたであろう、ちょうどその時、第三者の声が広すぎる空間に転がり込んだ。
覗き込めば顔が映りそうなくらい曇りのない大理石の床を、複数の足音が丁寧に音を響かせながら近づいてきた。
さっきのメイドが戻ってきたのだ。
「おかえりなさいませ、ぼっちゃま」
「おかえりなさいませ。本日のお散歩はもうよろしいので?」
「うん、今日も楽しかったよ。できたばかりの喫茶店に行ってきたんだ。あそこの紅茶はなかなか美味しかったから、行ってみるといいよ」
この屋敷に使えているメイドや執事らしき人たちが、口々に出迎えの言葉をかけていく。
わたしは背筋を正して彼らと向かい合った。
こういうのを、そうそうたる顔ぶれというのだろう、誰もが自信に満ち溢れた顔つきをしていた。
これから仕事を教えてもうことになるかもしれない、顔を会わせて間もないメイド・・・彼女も当然、その一人である。
こちらの視線に気づいた彼女と視線がかち合えば、彼女は不敵な笑みを浮かべた、ように見えた。
早くも頭が上がりそうにない。
わたしたちの間に立つ形になったジョナサンはというと、相も変わらず微笑をたたえている。
「アリシア、ぼっちゃまへの自己紹介はもう済ませましたね?」
不意にかけられた言葉に、とっさに「はい」と返した。
上ずった声にならなかっただけ上出来だと思う。
「よろしい。では紹介しましょう。こちらは、このお屋敷に仕えている使用人たちです。みなが仕事に誇りを持ち、ジョースター家を支えることに尽力を尽くしています。分からないことがあれば、彼らにも尋ねるといいでしょう」
「わたしどもにお任せ下され」
「ご心配なく」
「いまは不在のジョースター卿からの伝言のこともあります。みなさんも、慣れるまでの間は、この子のことを頼みましたよ」
ある人は軽く会釈し、ある人は、首もとの蝶ネクタイを傾いてもいないのに指でいじった。
と、ここで、じっと何かを促すように見つめてくる彼女に、そういえば自己紹介がまだだったと気がつかされて、慌てて口を開く。
「自己紹介が遅れました。父の紹介で、本日よりお世話になります、アリシア・フェリシスタスです。どうぞよろしくお願い致します」
「・・・あなたのお父様のことは既にジョースター卿からお話を伺っています。大変な時期に辛いでしょうけれど、いつでも胸を張っていられるようになりなさい」
これはご両親のためでもあります、と力強く彼女は言った。
父は、ジョースター卿にどこまでを打ち明けたのだろう。
自分のこと、娘が一人いること、母が亡くなったこと、今後のこと全てかもしれない。
わたしの知らないところで交わされた約束を、いまさら、当人の了解をなしに違えることはできない。
なにより、これは父が望んだことなのだから、それに従うのが、いまできる唯一の親孝行だろう。
わたしは静かにうなずいた。
「さあ、時間は有限です。それぞれ持ち場に戻って・・・。あなたは、こちらへおいでなさい」
「はい」
いっそ夢であればいいのに。
そんな気持ちを打ち消すように、肩に置かれた暖かい手の平が、私を支えるように背中の方へ滑り込んで屋敷の奥へと誘う。
そのまま私は歩みを進めた。
「アリシア、またあとで・・・・・・」
背後からぽつりと聞こえた声は、静かな空間に溶けて消えた。