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みの恭

眠れないのは


『ねぇ、起きてる?』

寝ようか、寝まいか。
微睡みながらもスマホの明かりを見つめていたら、そんなメッセージが飛んできた。
「エスパーかよ」
と思わず口に出してしまったが、それに応えてくれる人はいない。
『起きてる』
短くそれだけ打って、すぐに返事をした。


『風がうるさくて眠れなくてさ。恭二の家は平気?飛ばされてない?』
ややあって、安否を心配する内容が届いた。
飛ばされていたら呑気に「起きてる」なんて返事はできないだろう。
現在、東京には台風が接近しており暴風域の中に入っていた。夜の内に過ぎ去るらしいのだが、恭二の住む六畳一間の城は、さっきからひっきりなしに風と雨を受けて、今まで聞いたこともないような音を立てていた。
先ほどのメッセージは、送り主の冗談ということが分かっているので、自分もお返しに面白い返事をしようと恭二は文字を打った。
『まだ飛んでないけど、今にも飛ばされそうっす』
画面の向こう側で、送り主のみのりがクスリと笑う様子を目に思い浮かべた。


またややあって、ピコン、とスマホが鳴った。
今度はびっくりしたカエルのスタンプが送られてきた。
それはカエールに似ていると言って、みのりが恭二とピエールにプレゼントしてくれたスタンプだった。
『まだ飛んでないから大丈夫っすよ』
一緒に、Vサインをしているカエルのスタンプを添えて返信した。


みのりの返事はいつも少しだけ時間がかかる。
そろそろ午前3時を過ぎようとした頃、瞼を閉じながら握っていたスマホが、続けて2回、ブルっと震えた。



『もし飛ばされちゃったらさ』

『一緒に住もうか』



気が付いたら暴風雨はとっくに過ぎ去っていて。
外はいつものように深夜の静寂を取り戻していた。
なのに、どうしてだろうか。
恭二の頭の中はずっと嵐のように騒がしいままであった。
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