このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

みの恭

六畳一間の城の夏


その日はやけに暑かった。
みのりを自分の城に招き入れ、いつものように酒を飲む。ただそれだけでよかったはずなのに、酔いのせいか、距離が近すぎるせいか、
恭二はつい口を開いてしまった。

「好きです」

突然、ぽつりと呟いた主語のない言葉。
狭い城の中、肩が触れる距離でその言葉を口にすれば、何に、誰に向けられたものなのか子供でもない限り分かりきったものであろう。
暑さとは別に、身体中から汗がぶわっと噴き出した。
グラスの中の氷がからんと音でも立てるような雰囲気だったが、この城の中ではそんなことは起こらない。
机上に置かれた缶ビールと酎ハイが恭二と同じようにただ汗を流すだけだった。

「……そっか。それで?」

みのりは口を開く。
若者の気持ちは真摯に受け止めなきゃね、と動じることもなく、いつもの飄々とした笑みを浮かべるままだった。
恭二はそれがどうしようもなく悔しかった。

「恭二はさ、俺とどうなりたいの?」

汗をかいた缶ビールを持ち上げ、一飲みする。
缶はクシャリと音を立て、机上に戻された。

気持ちを伝えてしまっただけでも精一杯なのに、どうなりたいかと問われ、すぐに答えられるほど鷹城恭二という人間は出来ていなかった。
みのりに触れている肩が、熱くて仕方ない。

「恭二の気持ちは嬉しいけど、好きなだけだったら、好きなままでいいんじゃないかな」

やんわりと、否定される。
俺の好きはみのりさんの思っている「好き」ではない。そうすぐに口に出せれば、どれほどよかったことか。この先の展開が読めず、口を開きかけては閉じる。

「俺はね、恭二のこと好きだよ」

さらりと、当たり前のように口から零れたその言葉は、先程恭二が放った言葉と比べ物にならないほど、あっさりとしていた。

「恭二は、きっと勘違いしてるよ」

みのりの口からそんな言葉が聞こえたかと思うと、突如、恭二の視界が奪われた。
よいしょ、という掛け声が聞こえてきたかと思うと同時に恭二は下半身に人の重さを感じる。
密着した肌と肌が、ジリジリと焦げていく。
「みのりさん、なにして……っん」
語尾はみのりの唇によって吸い取られてしまった。

「恭二は、一回痛い目見とかないと……ダメだよ」


瞼を覆うみのりの手のひらは、やけに熱かった。
3/10ページ
スキ