第一章 邂逅
ここレジェンヌでは最近、人々を悩ませている暗い話題があった。
魔族の横行である。
ほぼ毎晩、魔族が街で暴れていて、その度に大量の犠牲者を出していた。
それはまるで伝説となっている妖魔の騎士のような残虐さで。
妖魔の騎士は現在では、ほとんど伝説扱いされているが、実在した妖魔の王である。
その残虐さはどの魔族と比べても抜きん出ていて、またその強さも圧倒的だったという。
彼の姿が最後に確認されたのは、このレジェンヌの隣国、大国メイディア。
西方地区では最大の繁栄を誇る国である。
それだけに彼がメイディアで起こした宴は前代未聞の規模であり、またその残虐さでも歴史に名を残すほどだったと言われている。
だが、何故か妖魔の騎士は宴を自分から中断してしまった。
近隣諸国では当時王子だったメイディアの名君、ネジュラ・ラセン王が彼を退けたとして英雄扱いをしているが。
どちらにせよ、彼は妖魔の騎士を退けたことにより、後にメイディアで名君の呼び名を受けることになる。
しかしやはり彼との戦いで無理をしたのか。
ネジュラ・ラセン王は早世している。
名君と呼ばれているが、その治世は決して長くはないのである。
そのこともまた人々を煽るのかもしれないが。
悲運の英雄として。
これは現在より50年ほど昔の話である。
50年前のメイディアでの宴以来、妖魔の騎士は姿を眩ましてしまっていて、以後、彼の姿を見かけた者はだれもいない。
だから、今このレジェンヌで起きている魔族の蛮行を、そのまま彼の宴だと結びつけるのは無理があるとショウは思う。
ショウは別に役人ではないし、ごく普通の家に住むごく普通の少年である。
だから、自分の考えをだれかに言ったことはないし、これからも言わないだろうと思っている。
しかしショウ個人の考えとしては、現王家が結びつけるほどには、関連性はないと思っている。
むしれ彼の仕業に見せたがっているように見受けられた。
「他国におもねるばかりが上手とは、国の先行きが不安だな」
呟いてショウは遠くの大通りで始まっている騒ぎに目を向ける。
ショウは町外れに構えるこの大きな屋敷にひとり暮らしをしている。
決して暮らしに不自由しているわけではないが、使用人を雇っているわけでもない。
雇えるだけの余裕はあるが、敢えて雇っていなかった。
自分で栽培した高価な茶葉であるリョガーザを飲みながら、さりげなく視線を向けている。
人々の熱狂の理由は知っている。
魔族の横行に悩まされている現王家が、とうとうメイディアへと救援を請い、ついに世継ぎの王子がレジェンヌを訪れることになったのだ。
あの大騒ぎはそのためである。
その歓迎ぶりはそれだけ魔族の横行に、みなが苦しめられている証拠でもある。
レジェンヌにはふたつの王家が存在している。
永久的な継承権をもつ旧王家ラスターシャ王家と、火事場泥棒的に成り立った現王家である。
現王家はラスターシャ王家が国と王位を捨てたときに、火事場泥棒のように現れ王位をくすねていった。
それだけに不満を抱いている者は多く、現王家は旧王家に対して常に暗殺者を放っているともっぱらの噂だった。
レジェンヌの法律によれば、旧王家の者は死ぬまでその継承権を放棄できない。
特に世継ぎが受け継ぐ継承権は絶対だとされている。
言ってみれば現王家がどれほど足掻こうと、正統な世継ぎが登場し王位の返還を望んだら、とても拒めないのである。
そのせいで暗殺の噂が消えないのだ。
現王家にとって旧王家はまさに目の上のこぶなのである。
「たしかメイディアの世継ぎの王子って、俺より3歳年上だっけ。ネジュラ・ラセン王の孫に当たるんだよな」
すこし皮肉な気分でショウは呟く。
近隣諸国では英雄で通っているネジュラ・ラセンだが、ショウには素直にそれに同意できない面があった。
彼は妖魔の騎士を退けてはいない。
そう思うからだ。
本当に退けたのなら行方不明ではなく、完全に滅んでいるべきだろう。
妖魔の騎士は自分から宴を中断した。
それは間違いないはずだ。
それはたしかに中断させたのは、ネジュラ・ラセンかもしれないが。
ショウにはふたりのあいだに、第三者は入れない事情があったような気がしてしかたがなかった。
もちろんそんなことを言って顰蹙を買う気はなかったけれど。
「顔を見に行ってみるのもひとつの経験か?」
バカ騒ぎに混じる気はなかったが、隣国の王子の姿を一目みたいという気持ちにも嘘はなかった。
「早く行かないと見える位置が確保できないな」
慌てて上着を羽織るとショウは館を後にした。
大通りまでやってくると、すでに人で賑わっていた。
最前列は確保されてしまっている。
ショウは年齢のわりに(まだ16なのだ)背が高いので、それでも馬車が通るために区分された道がはっきりみえたが。
「よかった。俺、背が高くて」
呟いたとき傍らで何度もジャンプしている奴がいることに気づいた。
覗こうとしているのか、しきりにジャンプしている。
それでもショウの肩ぐらいまでしか届かない。
可哀想なくらい小さな奴だった。
まだ子供で通るような身長だ。
年齢的にショウよりふたつか3つ年下といったところか。
なら無理もないかと思った。
おまけに悲しいくらいジャンプ力がない。
跳んでいても立っているときとほとんど差がないのだ。
これは憐れである。
露店にやってくるとショウは出来合いのおかずを中心に買い物をしていった。
ラーダはどうして肉や魚が焼いてあったり、煮込んだ野菜などを置いているのかわからなかったのだが、買い物をしているときにショウに聞いたのだ。
「どうしてそれ、焼いてあるの?」
「最近、レジェンヌで流行ってるんだよ。ひとり暮らしが増えてるから、手軽な食事の方法として出来合いのおかずを売るっていうのが」
「出来合いのおかず?」
「見たとおりすでに調理されてるおかずってことだよ。これに一工夫加えれば、ひとりでも簡単に手軽に本格的な料理が食べられるだろ?」
「便利になってるんだね」
「レジェンヌでは全盛期を迎えてる商売だけど、外国ではやってないのか?」
「俺の知るかぎりやってないよ。メイディアだってやってないと思う」
「あれ? メイディアはレジェンヌから輸入されて、この商売、すでに流行ってるって聞いてるけど」
「そうなの? 俺がメイディアにいたのって子供の頃だからね。知らなかったよ」
「子供の頃って……」
この出来合いのおかずを売るという商法が流行ったのは、今から二十年ほど前である。
当然メイディアにもすぐに伝わり、同時期に流行りだした。
ラーダの歳なら何歳のときにメイディアにいたとしても、知っていなければおかしいのだ。
ショウは疑問を持ったが、ここは問いかけることはしなかった。
自分も詮索されたくないのだ。
ラーダは詮索しないと誓ってくれた。
ショウがラーダの嘘を暴いて騒ぐのはルール違反だろう。
肉を食べたい気分ではなかったので、スープ用の野菜と焼いた魚を買ってショウは家路についた。
「この道って王都の外れに続く道だけど、ショウの家って王都の外れにあるの?」
「ああ。怖いか?」
魔族たちが頻繁に現れるのは王都の中心地だが、外れまできてしまうと違う意味で寂しい。
知り合いにもよく心配されているショウは、意地悪だなと思いつつもラーダにそう聞いていた。
「別に怖くはないよ。この時期に王都の中心に住んでいるほうが怖いんじゃない?」
「でも、回りには家はないんだぜ?」
「静かでいいじゃない」
呑気なラーダに本気でそう思っているのか、それとも虚勢かわからなくて、ショウは肩を竦めてみせた。
ふたりで歩きだしてすこしして、王都が遠ざかるとショウの住んでいる屋敷が見えてきた。
3階建ての壮麗な屋敷にラーダが感嘆の吐息をついている。
「すごい屋敷だね。あれがショウの家なの?」
「意外か?」
「意外だよ。ひとり暮らしだっていうから、もっと小さな家を想像してたから。人を雇う余裕だってあるんでしょう? どうして雇わないの? そうしたら家事をショウがやる必要もなくなるのに」
「詮索するなって言わなかったか?」
「だったね。ごめん」
謝ってからラーダは改めてショウの屋敷を見てみた。
如何にもレジェンヌらしい建物である。
柱はすべてアラベスク。
象嵌細工の飾りが、ところどころに入っていて、更に印象を華麗している。
築年数は古くもなく新しくもなくといったところだろうか。
こんな大きな家にひとり暮らしなんて、確かに家にきたら詮索したくなるだろうなと、ラーダは思う。
入ってすぐのところが吹き抜けの広間になっていて、天井には見事なシャンデリアがぶら下がっていた。
正面に左右に別れる形で階段がある。
2階へと続いているようだ。
螺旋階段になっていて更に上を見れば3階へと続いている。
ショウは入ってすぐの左側の扉へとラーダを案内した。
「中に入って待っててくれ。すぐに食事の準備をするから」
「手伝おうか?」
「平気だよ。おかずは出来合いの物にすこし手を加えるだけだから。それに」
ショウは何気なくラーダの手を持ち上げた。
水仕事なんてしたことないような手をしている。
白魚のような手とは、こういう手のことを言うのだろうか。
「この手を見ればわかるよ。家事なんてやったことないんだろう?」
「……ばれた?」
「わかるって。水仕事なんてしたことない手をしてるから」
「別に手入れをしてるわけじゃないんだけど」
「すぐに戻ってくるから中で寛いでいてくれ」
それだけ言い置いてショウの姿は館の奥に消えた。
魔族の横行である。
ほぼ毎晩、魔族が街で暴れていて、その度に大量の犠牲者を出していた。
それはまるで伝説となっている妖魔の騎士のような残虐さで。
妖魔の騎士は現在では、ほとんど伝説扱いされているが、実在した妖魔の王である。
その残虐さはどの魔族と比べても抜きん出ていて、またその強さも圧倒的だったという。
彼の姿が最後に確認されたのは、このレジェンヌの隣国、大国メイディア。
西方地区では最大の繁栄を誇る国である。
それだけに彼がメイディアで起こした宴は前代未聞の規模であり、またその残虐さでも歴史に名を残すほどだったと言われている。
だが、何故か妖魔の騎士は宴を自分から中断してしまった。
近隣諸国では当時王子だったメイディアの名君、ネジュラ・ラセン王が彼を退けたとして英雄扱いをしているが。
どちらにせよ、彼は妖魔の騎士を退けたことにより、後にメイディアで名君の呼び名を受けることになる。
しかしやはり彼との戦いで無理をしたのか。
ネジュラ・ラセン王は早世している。
名君と呼ばれているが、その治世は決して長くはないのである。
そのこともまた人々を煽るのかもしれないが。
悲運の英雄として。
これは現在より50年ほど昔の話である。
50年前のメイディアでの宴以来、妖魔の騎士は姿を眩ましてしまっていて、以後、彼の姿を見かけた者はだれもいない。
だから、今このレジェンヌで起きている魔族の蛮行を、そのまま彼の宴だと結びつけるのは無理があるとショウは思う。
ショウは別に役人ではないし、ごく普通の家に住むごく普通の少年である。
だから、自分の考えをだれかに言ったことはないし、これからも言わないだろうと思っている。
しかしショウ個人の考えとしては、現王家が結びつけるほどには、関連性はないと思っている。
むしれ彼の仕業に見せたがっているように見受けられた。
「他国におもねるばかりが上手とは、国の先行きが不安だな」
呟いてショウは遠くの大通りで始まっている騒ぎに目を向ける。
ショウは町外れに構えるこの大きな屋敷にひとり暮らしをしている。
決して暮らしに不自由しているわけではないが、使用人を雇っているわけでもない。
雇えるだけの余裕はあるが、敢えて雇っていなかった。
自分で栽培した高価な茶葉であるリョガーザを飲みながら、さりげなく視線を向けている。
人々の熱狂の理由は知っている。
魔族の横行に悩まされている現王家が、とうとうメイディアへと救援を請い、ついに世継ぎの王子がレジェンヌを訪れることになったのだ。
あの大騒ぎはそのためである。
その歓迎ぶりはそれだけ魔族の横行に、みなが苦しめられている証拠でもある。
レジェンヌにはふたつの王家が存在している。
永久的な継承権をもつ旧王家ラスターシャ王家と、火事場泥棒的に成り立った現王家である。
現王家はラスターシャ王家が国と王位を捨てたときに、火事場泥棒のように現れ王位をくすねていった。
それだけに不満を抱いている者は多く、現王家は旧王家に対して常に暗殺者を放っているともっぱらの噂だった。
レジェンヌの法律によれば、旧王家の者は死ぬまでその継承権を放棄できない。
特に世継ぎが受け継ぐ継承権は絶対だとされている。
言ってみれば現王家がどれほど足掻こうと、正統な世継ぎが登場し王位の返還を望んだら、とても拒めないのである。
そのせいで暗殺の噂が消えないのだ。
現王家にとって旧王家はまさに目の上のこぶなのである。
「たしかメイディアの世継ぎの王子って、俺より3歳年上だっけ。ネジュラ・ラセン王の孫に当たるんだよな」
すこし皮肉な気分でショウは呟く。
近隣諸国では英雄で通っているネジュラ・ラセンだが、ショウには素直にそれに同意できない面があった。
彼は妖魔の騎士を退けてはいない。
そう思うからだ。
本当に退けたのなら行方不明ではなく、完全に滅んでいるべきだろう。
妖魔の騎士は自分から宴を中断した。
それは間違いないはずだ。
それはたしかに中断させたのは、ネジュラ・ラセンかもしれないが。
ショウにはふたりのあいだに、第三者は入れない事情があったような気がしてしかたがなかった。
もちろんそんなことを言って顰蹙を買う気はなかったけれど。
「顔を見に行ってみるのもひとつの経験か?」
バカ騒ぎに混じる気はなかったが、隣国の王子の姿を一目みたいという気持ちにも嘘はなかった。
「早く行かないと見える位置が確保できないな」
慌てて上着を羽織るとショウは館を後にした。
大通りまでやってくると、すでに人で賑わっていた。
最前列は確保されてしまっている。
ショウは年齢のわりに(まだ16なのだ)背が高いので、それでも馬車が通るために区分された道がはっきりみえたが。
「よかった。俺、背が高くて」
呟いたとき傍らで何度もジャンプしている奴がいることに気づいた。
覗こうとしているのか、しきりにジャンプしている。
それでもショウの肩ぐらいまでしか届かない。
可哀想なくらい小さな奴だった。
まだ子供で通るような身長だ。
年齢的にショウよりふたつか3つ年下といったところか。
なら無理もないかと思った。
おまけに悲しいくらいジャンプ力がない。
跳んでいても立っているときとほとんど差がないのだ。
これは憐れである。
露店にやってくるとショウは出来合いのおかずを中心に買い物をしていった。
ラーダはどうして肉や魚が焼いてあったり、煮込んだ野菜などを置いているのかわからなかったのだが、買い物をしているときにショウに聞いたのだ。
「どうしてそれ、焼いてあるの?」
「最近、レジェンヌで流行ってるんだよ。ひとり暮らしが増えてるから、手軽な食事の方法として出来合いのおかずを売るっていうのが」
「出来合いのおかず?」
「見たとおりすでに調理されてるおかずってことだよ。これに一工夫加えれば、ひとりでも簡単に手軽に本格的な料理が食べられるだろ?」
「便利になってるんだね」
「レジェンヌでは全盛期を迎えてる商売だけど、外国ではやってないのか?」
「俺の知るかぎりやってないよ。メイディアだってやってないと思う」
「あれ? メイディアはレジェンヌから輸入されて、この商売、すでに流行ってるって聞いてるけど」
「そうなの? 俺がメイディアにいたのって子供の頃だからね。知らなかったよ」
「子供の頃って……」
この出来合いのおかずを売るという商法が流行ったのは、今から二十年ほど前である。
当然メイディアにもすぐに伝わり、同時期に流行りだした。
ラーダの歳なら何歳のときにメイディアにいたとしても、知っていなければおかしいのだ。
ショウは疑問を持ったが、ここは問いかけることはしなかった。
自分も詮索されたくないのだ。
ラーダは詮索しないと誓ってくれた。
ショウがラーダの嘘を暴いて騒ぐのはルール違反だろう。
肉を食べたい気分ではなかったので、スープ用の野菜と焼いた魚を買ってショウは家路についた。
「この道って王都の外れに続く道だけど、ショウの家って王都の外れにあるの?」
「ああ。怖いか?」
魔族たちが頻繁に現れるのは王都の中心地だが、外れまできてしまうと違う意味で寂しい。
知り合いにもよく心配されているショウは、意地悪だなと思いつつもラーダにそう聞いていた。
「別に怖くはないよ。この時期に王都の中心に住んでいるほうが怖いんじゃない?」
「でも、回りには家はないんだぜ?」
「静かでいいじゃない」
呑気なラーダに本気でそう思っているのか、それとも虚勢かわからなくて、ショウは肩を竦めてみせた。
ふたりで歩きだしてすこしして、王都が遠ざかるとショウの住んでいる屋敷が見えてきた。
3階建ての壮麗な屋敷にラーダが感嘆の吐息をついている。
「すごい屋敷だね。あれがショウの家なの?」
「意外か?」
「意外だよ。ひとり暮らしだっていうから、もっと小さな家を想像してたから。人を雇う余裕だってあるんでしょう? どうして雇わないの? そうしたら家事をショウがやる必要もなくなるのに」
「詮索するなって言わなかったか?」
「だったね。ごめん」
謝ってからラーダは改めてショウの屋敷を見てみた。
如何にもレジェンヌらしい建物である。
柱はすべてアラベスク。
象嵌細工の飾りが、ところどころに入っていて、更に印象を華麗している。
築年数は古くもなく新しくもなくといったところだろうか。
こんな大きな家にひとり暮らしなんて、確かに家にきたら詮索したくなるだろうなと、ラーダは思う。
入ってすぐのところが吹き抜けの広間になっていて、天井には見事なシャンデリアがぶら下がっていた。
正面に左右に別れる形で階段がある。
2階へと続いているようだ。
螺旋階段になっていて更に上を見れば3階へと続いている。
ショウは入ってすぐの左側の扉へとラーダを案内した。
「中に入って待っててくれ。すぐに食事の準備をするから」
「手伝おうか?」
「平気だよ。おかずは出来合いの物にすこし手を加えるだけだから。それに」
ショウは何気なくラーダの手を持ち上げた。
水仕事なんてしたことないような手をしている。
白魚のような手とは、こういう手のことを言うのだろうか。
「この手を見ればわかるよ。家事なんてやったことないんだろう?」
「……ばれた?」
「わかるって。水仕事なんてしたことない手をしてるから」
「別に手入れをしてるわけじゃないんだけど」
「すぐに戻ってくるから中で寛いでいてくれ」
それだけ言い置いてショウの姿は館の奥に消えた。