プロローグ
初めまして。世界の名前を貰ったアルディアです!
説明が長い気がするけど、私はアルディア。
ついこの間違う世界で引き篭もっていて、そのまま死んで、だけど私がそのまま死ぬことで困る人がいたらしい。
その人は神様でラインと名乗った。
そのラインの計らいで私はこの世界で転生した。
ただ赤ちゃんではなく、十七歳の女の子に。
だって考えても見て?
一度死を迎えてるのに、今から赤ちゃんやれる?
食べる入浴、着替えなにもかもが人任せ。
しかも自我は大人だから、ありえないって!
死ぬ間際の自分は色々どうかしてた。
やけにリアルにラインとやり取りしてた気がする。
「正直夢だと思ってたのよねー。だって死にかけてたし。普通神ですっていきなり言われて、はい、信じますってならないと思うもの」
十七歳だった頃、自分がどんな喋り方をしていたか覚えていない。
そもそも転生前の記憶は、ほとんど覚えていないし。
元から引き篭もっていて変化のない毎日だったことや、年齢を重ねると月日の流れがどうとか、あまり意識しなくなる?
これは普通に生きている人も同じだと思う。
自分の年齢からして気にならなくなるというか。
まして毎日ひとりだったら、まあ記憶が曖昧になっても仕方ない。
ましてあれは正真正銘。
臨終間際だったし。
「でも、こうして肌に風を感じたり、道端に咲く花を眺めるなんて、いつ以来の体験かしら?」
あまりに幼い頃に人生に挫折してしまって、自分の部屋しか記憶にないから。
でも。
「健康って大事だったのね。自分の足で立って歩ける。走ることもできる。苦しくもならない。前世の私に言ったら、どんな顔をするかしら」
クスクスと声を殺して笑うと聞いたばかりの声がした。
「少しは前向きに生きる気になった?」
振り返ればラインだった。
「ライン様! どうしてここにっ⁉︎」
「転生するときに召喚などの混合系を選んだら、天界からマスコットがつくって言っただろう?」
言った。
確かに言った。
でも、普通マスコットって、こんなにカッコいい男の子じゃないし、ましてや神様じゃない!
天界からのマスコットなら、普通はエンジェルじゃないの⁉︎
気付けば叫んでいたらしく、それにラインは苦い顔を返した。
「ボクも最初はエンジェルに擬態する気だったよ。だけどおじいさまが」
「おじいさま?」
「あ。いや。なんでもない」
言いかけた言葉を飲み込んで、ラインはアルディアの姿をじっと見つめた。
「想像以上に可愛くなってるけど、自分の姿は確認した?」
「いいえ? 髪が亜麻色でとても長いくらいしか」
「鏡持たせてなかったっけ? まあいいか。ほら」
ラインが片手を差し出して手のひらを上に向けると水鏡が出現した。
そこに映っているのは腰まで届く亜麻色の髪に緑色の大きめの瞳が目立つ可愛い女の子だった。
想像していたのとかなり違う。
「私、平均よりちょっと上くらいがいいって言ったわよね?」
「ごめん。これはボクのミス」
「ライン様?」
「美男美女を見慣れすぎてて平均よりちょっと上、ってよくわからなくて」
そうだった。
この人。
物腰は柔らかいけど、立派に神様だった。
人を異世界に転生させるくらいお手の物な神様だった。
きっと周囲にいたのは、みんな美男美女だ。
それはまあ無理難題だっただろう。
そもそも平均がわからないのではないか。
そう考えて問いかけたい気もしたけど、ここは我慢することにした。
「じゃあ。もしかして聞かれた能力。スキルも‥‥‥」
「え? 普通のスキルだよ?」
体力はちょっと人よりあるけどと言われ、一番不安なことを問いかけた。
「あなたが創造系のスキルって納得したスキルの方よ! まさかとは思いたいけど」
「ああ。そっち? 絵心とか欲しいって言ってたから、問題ない能力だと思うよ?」
「一体どんなスキルなの?」
口にするのも怖い一言を頑張って問いかけた。
「うん? 創造系のスキル?」
このとき、私は決意した。
創造系のスキルだけは、決して人前では使うまいと。
こんな変身だけじゃない。
神様にされてしまうから、と。
このとき、私はまだ知らなかった。
前世からの保持スキルで、自分が聖女であることを。
ここから始まる。
半人前創造系スキル持ち聖女と、聖女の守護役の半人前神様の行く先の定まらない旅が。