今日の私と明日の私と
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「瑞穂!さっき、ボーッとしてたでしょ??大丈夫??」
「ん?あぁ、春休み最終日も結局部活かぁって思ってただけだよ……」
「あ……ああまあ、春休みも部活づくめだったもんね……」
楽器を音楽室に搬入し終え、倉庫の鍵をかける。先生から預かった鍵が音を立てる。制服のポケットに入れ、上の階に隔離された音楽室から校門近くの体育館に戻る。まだ椅子の片付けが残っているので、先に戻った先輩や二年に進級した部活の同級生達を手伝うために、体育館への階段を下る。
倉庫搬入を手伝ってくれた沙織は1年の時に同じクラスの同じ部活の同じトランペットということでいつも一緒だった。プリクラにはズッ友!まぢかゎぃぃなどを書いてしまった。今後卒業までに派手な喧嘩をして黒歴史にならないことを願うばかり。ちなみに私は現時点で恥ずかしい。
「まだ片付けしてるかな~~~?」
行事や式典の後にバスケ部の練習があると、バスケ部も手伝うが、そうではな今回のようなは場合、片付けは吹奏楽部が行うことになっている。ただ、青道高校吹奏楽部の八割は女生徒である。楽器を持っているから体力と腕力あるんだろー?みたいな安直なことを度々言われるが、そんなことは無い。か弱いか弱い女子高生だ。私たちだけだとなかなか終わらないし、今日の午後からある練習時間も削られる可能性が高い。そして何より、私たちのお昼ご飯の時間が遅くなる。
「戻りました!!」
先生や先輩達に向けて声をかけた。
だが、
「あれ、終わりそう??ってか、人数多くない?あの人たちって野球部??」
「瑞穂ちゃん、沙織ちゃんお帰り!」
トランペットパートのリーダーの先輩が入口付近にいた私と沙織を出迎える。
「今回以降、片付けを野球部も手伝ってくれることになったんだって~。先生が、野球部の片岡先生に交渉したら、学校に行事で貢献することも野球部の務め、ってことで快く野球部貸してくれたってさ」
私たちもさっき先生から聞いて知ったんだけどね、と締めくくった先輩は片付けが早く終わった嬉しさからかいつも以上の笑顔だった。
確かに野球部の……なんだっけ、御幸くん?あ前園くんと倉持もいる。あれ、レギュラーメンツまでいるんだ……普通レギュラーだけは練習させるとか試合の映像見せるとか筋トレとか、そういうのやりそうなのにね、差をつけないんだ、やだ片岡先生すご……好き。
「さすが男子、すぐに片付け終わったよ~。今やってるモップ掛けが終われば片付けは解散ね。じゃあ、折角戻ってきてくれたし……野球部と吹奏楽部の2年だけでモップ掛けてくれてるから、参加してきて。3年は先に戻ってま〜す。」
先輩に元気に返事をし、モップを手に取る。
体育館のワックスがかかった面の大半はモップが掛けられているようで、まだやっていなそうな体育館前方の壇上、演台へと向かう。校長やら祝辞に来たお偉いさんのための台はすっかり片付いており、体育の授業で見るいつもの光景になっていた。明日の始業式からまた学校生活が始まるのだと思えてくる。
「あれ」
壇上に上がったところで、上手の幕から声が聞こえた。顔をそちらに向けると人がおり、沙織が呼びかける。
「御幸くんじゃん」
去年、クラスも違うし部活も違うな男子生徒の名前なぞあまり覚えていない。それでも彼は有名だった。野球の強豪校である青道高校、その野球部で1年生レギュラー且つ正捕手。沙織が顔が好きとか言っていたし、私も綺麗なお顔だこと、と思っていた。そして何より
「……あ、狙い撃ちの人か」
と私は記憶していた。ヒッティングマーチで吹いていたからどうしてもその印象が強い。
「はっはっはー、俺の印象そんななんだ、さすが吹奏楽部だな」
何が流石なのかよく分からんが、楽しそうでなにより。
モップを手にした状態でこちらを見てくる御幸くん。俺こっち掛けたから、お前らそっちやって。人差し指を私と沙織の奥に向け話しかけてきた。はーい、と伸びた返事で沙織が奥に向かい、私は真ん中の演台があった辺りにモップを滑らす。
彼、御幸くんと話をするのは初めてで、野球部と、野球部の応援に駆り出される吹奏楽部、その関係でしかないし、私も野球部の人をそんなに覚えているわけではない。去年クラスが同じだった倉持と前園くんくらいしかわからない。そして憶える気もあんまり無い。そんな適当な気持ちが御幸くんに伝わったのか、真面目にモップ掛けしている私たちに話しかけてきた。
「なぁ、お前らって倉持と同じクラスだったよなー?」
「去年ね」
「吹奏楽部の小林瑞穂ってお前だよな?」
「え、そうだけど……なに?」
名前が知られていることにとっても驚く。何故野球部のイケメンレギュラーキャッチャー御幸くんに知られているのか、何を吹聴した、倉持。碌でもないことしか流そうとしないだろうと勝手に思っているが、事実そうだったようで
「いや。前に倉持が小林がめちゃくちゃ面白いって言ってたの思い出してさ。1回、試合後に倉持と話しているの見かけたことあったし」
「は?アイツホントに変なことしかしないな……勝手な吹聴やめろよ」
「あっはっはっ、小林って口悪いんだな」
「ごめん、気分悪いよね、直そうとしてるんだけど」
「いや、別に気になんねぇよ」
あっはっはっと笑い声が続いた。何がそんなに面白いのか、御幸くんの笑いのツボがわからない。
倉持は去年のクラスで出席番号順、つまり苗字の五十音順で私の前に座っていた、そして話しかけてきた、そんなスタートだった。見た目不良っぽいイカつさがあったが、不良は大体雨の日に猫を拾うし、その猫にお前も一人ぼっちなのかと話しかける良い子だと思っているから極々普通に対応した。ら、めちゃくちゃ気に入られた。それだけだった。多分それから仲良くなって、よく喋る方だけど、なぜ御幸くんにこんなに笑われているのか……。まあ、別にあまり絡むことはない人種だろうからどうでもいいや
「いやー、お前居たら面白そうだな、今年は同じクラスだと楽しめそう」
よく言えばニコニコ、悪く言えばニヤニヤとした顔つきでこちらを見遣る。なんだか、嫌な予感がする。明日の始業式のクラス分け、気になってきた。クラス分けに一喜一憂するタイプではないし、そのクラスでベストを尽くそうと考える人間だが、何でか、嫌な予感が止まらないわ。
「そうなんだ」
と言って苦笑いを浮かべることしか私はできなかった。
「ん?あぁ、春休み最終日も結局部活かぁって思ってただけだよ……」
「あ……ああまあ、春休みも部活づくめだったもんね……」
楽器を音楽室に搬入し終え、倉庫の鍵をかける。先生から預かった鍵が音を立てる。制服のポケットに入れ、上の階に隔離された音楽室から校門近くの体育館に戻る。まだ椅子の片付けが残っているので、先に戻った先輩や二年に進級した部活の同級生達を手伝うために、体育館への階段を下る。
倉庫搬入を手伝ってくれた沙織は1年の時に同じクラスの同じ部活の同じトランペットということでいつも一緒だった。プリクラにはズッ友!まぢかゎぃぃなどを書いてしまった。今後卒業までに派手な喧嘩をして黒歴史にならないことを願うばかり。ちなみに私は現時点で恥ずかしい。
「まだ片付けしてるかな~~~?」
行事や式典の後にバスケ部の練習があると、バスケ部も手伝うが、そうではな今回のようなは場合、片付けは吹奏楽部が行うことになっている。ただ、青道高校吹奏楽部の八割は女生徒である。楽器を持っているから体力と腕力あるんだろー?みたいな安直なことを度々言われるが、そんなことは無い。か弱いか弱い女子高生だ。私たちだけだとなかなか終わらないし、今日の午後からある練習時間も削られる可能性が高い。そして何より、私たちのお昼ご飯の時間が遅くなる。
「戻りました!!」
先生や先輩達に向けて声をかけた。
だが、
「あれ、終わりそう??ってか、人数多くない?あの人たちって野球部??」
「瑞穂ちゃん、沙織ちゃんお帰り!」
トランペットパートのリーダーの先輩が入口付近にいた私と沙織を出迎える。
「今回以降、片付けを野球部も手伝ってくれることになったんだって~。先生が、野球部の片岡先生に交渉したら、学校に行事で貢献することも野球部の務め、ってことで快く野球部貸してくれたってさ」
私たちもさっき先生から聞いて知ったんだけどね、と締めくくった先輩は片付けが早く終わった嬉しさからかいつも以上の笑顔だった。
確かに野球部の……なんだっけ、御幸くん?あ前園くんと倉持もいる。あれ、レギュラーメンツまでいるんだ……普通レギュラーだけは練習させるとか試合の映像見せるとか筋トレとか、そういうのやりそうなのにね、差をつけないんだ、やだ片岡先生すご……好き。
「さすが男子、すぐに片付け終わったよ~。今やってるモップ掛けが終われば片付けは解散ね。じゃあ、折角戻ってきてくれたし……野球部と吹奏楽部の2年だけでモップ掛けてくれてるから、参加してきて。3年は先に戻ってま〜す。」
先輩に元気に返事をし、モップを手に取る。
体育館のワックスがかかった面の大半はモップが掛けられているようで、まだやっていなそうな体育館前方の壇上、演台へと向かう。校長やら祝辞に来たお偉いさんのための台はすっかり片付いており、体育の授業で見るいつもの光景になっていた。明日の始業式からまた学校生活が始まるのだと思えてくる。
「あれ」
壇上に上がったところで、上手の幕から声が聞こえた。顔をそちらに向けると人がおり、沙織が呼びかける。
「御幸くんじゃん」
去年、クラスも違うし部活も違うな男子生徒の名前なぞあまり覚えていない。それでも彼は有名だった。野球の強豪校である青道高校、その野球部で1年生レギュラー且つ正捕手。沙織が顔が好きとか言っていたし、私も綺麗なお顔だこと、と思っていた。そして何より
「……あ、狙い撃ちの人か」
と私は記憶していた。ヒッティングマーチで吹いていたからどうしてもその印象が強い。
「はっはっはー、俺の印象そんななんだ、さすが吹奏楽部だな」
何が流石なのかよく分からんが、楽しそうでなにより。
モップを手にした状態でこちらを見てくる御幸くん。俺こっち掛けたから、お前らそっちやって。人差し指を私と沙織の奥に向け話しかけてきた。はーい、と伸びた返事で沙織が奥に向かい、私は真ん中の演台があった辺りにモップを滑らす。
彼、御幸くんと話をするのは初めてで、野球部と、野球部の応援に駆り出される吹奏楽部、その関係でしかないし、私も野球部の人をそんなに覚えているわけではない。去年クラスが同じだった倉持と前園くんくらいしかわからない。そして憶える気もあんまり無い。そんな適当な気持ちが御幸くんに伝わったのか、真面目にモップ掛けしている私たちに話しかけてきた。
「なぁ、お前らって倉持と同じクラスだったよなー?」
「去年ね」
「吹奏楽部の小林瑞穂ってお前だよな?」
「え、そうだけど……なに?」
名前が知られていることにとっても驚く。何故野球部のイケメンレギュラーキャッチャー御幸くんに知られているのか、何を吹聴した、倉持。碌でもないことしか流そうとしないだろうと勝手に思っているが、事実そうだったようで
「いや。前に倉持が小林がめちゃくちゃ面白いって言ってたの思い出してさ。1回、試合後に倉持と話しているの見かけたことあったし」
「は?アイツホントに変なことしかしないな……勝手な吹聴やめろよ」
「あっはっはっ、小林って口悪いんだな」
「ごめん、気分悪いよね、直そうとしてるんだけど」
「いや、別に気になんねぇよ」
あっはっはっと笑い声が続いた。何がそんなに面白いのか、御幸くんの笑いのツボがわからない。
倉持は去年のクラスで出席番号順、つまり苗字の五十音順で私の前に座っていた、そして話しかけてきた、そんなスタートだった。見た目不良っぽいイカつさがあったが、不良は大体雨の日に猫を拾うし、その猫にお前も一人ぼっちなのかと話しかける良い子だと思っているから極々普通に対応した。ら、めちゃくちゃ気に入られた。それだけだった。多分それから仲良くなって、よく喋る方だけど、なぜ御幸くんにこんなに笑われているのか……。まあ、別にあまり絡むことはない人種だろうからどうでもいいや
「いやー、お前居たら面白そうだな、今年は同じクラスだと楽しめそう」
よく言えばニコニコ、悪く言えばニヤニヤとした顔つきでこちらを見遣る。なんだか、嫌な予感がする。明日の始業式のクラス分け、気になってきた。クラス分けに一喜一憂するタイプではないし、そのクラスでベストを尽くそうと考える人間だが、何でか、嫌な予感が止まらないわ。
「そうなんだ」
と言って苦笑いを浮かべることしか私はできなかった。
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