The Joint Investigation
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部下に同僚の死を告げた時、彼女は小さく息を呑んだ。一瞬痛ましげに固く目を瞑った後、ゆっくりと瞼を開いた。
彼はその表情を捉えると、その続きを伝えた。
「対象との会談を終えた後、車から出てきたところに別の車が突っ込んできた。
即死だったそうだ。表向きは交通事故、と言うことになるだろう」
言葉を重ねながら注意深く部下の顔を伺うが、変化はない。思った以上に鉾崎は冷静らしい、と彼は少し安心した。
同僚が捜査中に死んだことは自分たちにも衝撃だったが、それが交通事故となると、彼女にとっては少し意味が変わってくる。
同じく国際警察の刑事だった彼女の父は、十五年前、捜査中に交通事故で亡くなっているのだ。その意味を理解しない訳がないだろう。
十中八九、これは『対象』からの警告であろうが、取り乱すでもなく、落ち込むでもな
く、背筋を伸ばして立っている彼女には刑事としての意識が根づいているのだ、と納得
した彼は、その場にいる全員に明日からの配置変更を告げた。
――彼女の裡に秘められた激情を知ったのは、事件が終わってからのことである。
※※
その日、御剣怜侍は業務に追われていた。3日前、暴力団に融資をしていたとして、特別背任容疑でCII銀行日本支店の支店長が逮捕された。今回の不祥事が明るみに出たことで、国内だけでなく、取引のある海外まで波紋が広がっている。
御剣は現在勾留中の支店長を起訴するため、事件の捜査に携わっていた。今回は特に事件の証拠品、証人が多く、確認する事柄が多い。
仕事の手を止め、ふと外を見ると大粒の水滴が窓に無数の水玉模様を描いている。
耳を澄ませるとざらざらと窓を打つ音すら聞こえる。今日は大降りのようだ。
雨。
雨の日には必ず彼女を思い出す。
考えるのは、あの幼馴染は今どこにいて何をしているのだろうと言うことだ。アメリカから帰国した時に、一度彼女の家があったところに行って見たのだが、住んでいたのは顔も知らない他人だった。
今はただ、元気にしていればいい、と願っている。
少しの間、彼女とそれに連なる友人たちとの思い出に耽溺していたのだろうか、
い我に返ると口角が僅かに上がった自分の顔と窓ガラス越しに目があって、
慌てて口元を引き締め再び作業に戻った。
※
仕事が一段落着いたのはもう日付変更後の事だった。
このままいけば明日以降、計画的に仕事が進められるだろう。
執務室の鍵を閉め、エレベータに向かう。
エレベータホールには誰もいなかった。
……エレベータは苦手だ。
いかんな、と思う。嫌な思い出を振り切るように軽く頭を振った。
夜中に一人でいると思考が乱れがちだ。
ベルの音が鳴り、エレベータが到着した。
未だに嫌な記憶が頭にこびりついているような不快感が残る。いつもはそんなに感じな
いのに、今日は低気圧のせいか気分が悪い。軽く頭痛さえしてきた。
御剣は暗澹たる思いでそのまま乗り込み、駐車場の地下の階を押す。
その時だった。
ドアが閉まりかけた時、
「すみません、待って下さい!」
と、声がして咄嗟に「開」のボタンを押した。
入ってきたのはスーツに身を包んだ女性だった。
彼女はすみません、ともう一度謝ると手を伸ばして 1階のボタンを押した。
ドアが閉まり下降が始まる。エレベータには二人きり。
沈黙が落ちた。
この時間まで検事局に居るという事は事務員ではないだろう。
検事だろうか、それにしては若いなと、御剣は自分を棚に上げて思う。
それに彼女の顔は、どこかで見たような…
「あの……私の顔に何かついてますか?」
余程彼女の顔を凝視していたのだろう。怪訝そうな顔でこちらを伺われる。
「すまない、失礼」
見ず知らずの女性に不躾なことをしてしまったと、慌てて顔をそむけても尚彼女は此方を伺っている。今度は彼女が此方を凝視しているようだった。その顔に不審の色はなく、寧ろ何かを見つけているようなーーー
「あれ、もしかして…怜侍君?」
その時、彼女は確かにそう言ったのだ。
頭痛はもう消えていた。
彼はその表情を捉えると、その続きを伝えた。
「対象との会談を終えた後、車から出てきたところに別の車が突っ込んできた。
即死だったそうだ。表向きは交通事故、と言うことになるだろう」
言葉を重ねながら注意深く部下の顔を伺うが、変化はない。思った以上に鉾崎は冷静らしい、と彼は少し安心した。
同僚が捜査中に死んだことは自分たちにも衝撃だったが、それが交通事故となると、彼女にとっては少し意味が変わってくる。
同じく国際警察の刑事だった彼女の父は、十五年前、捜査中に交通事故で亡くなっているのだ。その意味を理解しない訳がないだろう。
十中八九、これは『対象』からの警告であろうが、取り乱すでもなく、落ち込むでもな
く、背筋を伸ばして立っている彼女には刑事としての意識が根づいているのだ、と納得
した彼は、その場にいる全員に明日からの配置変更を告げた。
――彼女の裡に秘められた激情を知ったのは、事件が終わってからのことである。
※※
その日、御剣怜侍は業務に追われていた。3日前、暴力団に融資をしていたとして、特別背任容疑でCII銀行日本支店の支店長が逮捕された。今回の不祥事が明るみに出たことで、国内だけでなく、取引のある海外まで波紋が広がっている。
御剣は現在勾留中の支店長を起訴するため、事件の捜査に携わっていた。今回は特に事件の証拠品、証人が多く、確認する事柄が多い。
仕事の手を止め、ふと外を見ると大粒の水滴が窓に無数の水玉模様を描いている。
耳を澄ませるとざらざらと窓を打つ音すら聞こえる。今日は大降りのようだ。
雨。
雨の日には必ず彼女を思い出す。
考えるのは、あの幼馴染は今どこにいて何をしているのだろうと言うことだ。アメリカから帰国した時に、一度彼女の家があったところに行って見たのだが、住んでいたのは顔も知らない他人だった。
今はただ、元気にしていればいい、と願っている。
少しの間、彼女とそれに連なる友人たちとの思い出に耽溺していたのだろうか、
い我に返ると口角が僅かに上がった自分の顔と窓ガラス越しに目があって、
慌てて口元を引き締め再び作業に戻った。
※
仕事が一段落着いたのはもう日付変更後の事だった。
このままいけば明日以降、計画的に仕事が進められるだろう。
執務室の鍵を閉め、エレベータに向かう。
エレベータホールには誰もいなかった。
……エレベータは苦手だ。
いかんな、と思う。嫌な思い出を振り切るように軽く頭を振った。
夜中に一人でいると思考が乱れがちだ。
ベルの音が鳴り、エレベータが到着した。
未だに嫌な記憶が頭にこびりついているような不快感が残る。いつもはそんなに感じな
いのに、今日は低気圧のせいか気分が悪い。軽く頭痛さえしてきた。
御剣は暗澹たる思いでそのまま乗り込み、駐車場の地下の階を押す。
その時だった。
ドアが閉まりかけた時、
「すみません、待って下さい!」
と、声がして咄嗟に「開」のボタンを押した。
入ってきたのはスーツに身を包んだ女性だった。
彼女はすみません、ともう一度謝ると手を伸ばして 1階のボタンを押した。
ドアが閉まり下降が始まる。エレベータには二人きり。
沈黙が落ちた。
この時間まで検事局に居るという事は事務員ではないだろう。
検事だろうか、それにしては若いなと、御剣は自分を棚に上げて思う。
それに彼女の顔は、どこかで見たような…
「あの……私の顔に何かついてますか?」
余程彼女の顔を凝視していたのだろう。怪訝そうな顔でこちらを伺われる。
「すまない、失礼」
見ず知らずの女性に不躾なことをしてしまったと、慌てて顔をそむけても尚彼女は此方を伺っている。今度は彼女が此方を凝視しているようだった。その顔に不審の色はなく、寧ろ何かを見つけているようなーーー
「あれ、もしかして…怜侍君?」
その時、彼女は確かにそう言ったのだ。
頭痛はもう消えていた。
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