好きしか知らない 𝚙𝚝.𝟸
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【𝙹𝚒𝚖𝚒𝚗】
泣いたり、怒ったり、笑ったり、ほんっと忙しいやつ。今度は拗ねてんだか落ち込んでんだか知らないけど、タクシーに乗った途端だんまりを決めこんで。まじ疲れるわ。
あいつ可愛いですね、って同級生にちょっと小バカにされてたぞ、おまえ。確かに分かりやすくて可愛いんだけどさ。
「すみません、降ります。」
宿舎も目前というところで突然タクシーを降りるジョングクに唖然としていたら、運転手さんがぼくを振り返るからしかたなく後に続いた。
少し歩きませんか、って降りちゃったんだから歩くしかないだろ。早足でジョングクを抜かしたらすぐ後ろから足音がついてくる。そういえば昔、ぼくのあとをついて回るこの足音をいつも聞いてたっけな。
「ジミニヒョン。」
「なに。」
かけられた声に立ち止まらず、振り返りもせずに返事をした。ジミニヒョン、と低く掠れた声がぼくの名前を何度も、何度も、繰り返し呼ぶものだから、あーもーしつこいな!
「だからなに?」
「もう...あいつと...会ってほしくない。」
「はぁ?おまえには呆れるわ。」
「もし会うってんなら、おれ、また着いてく。あなたを取られたくない。」
「ぼくのこと、さんっざん無視してたくせに...なんなの?ほんと勝手なやつだな。ぼくがどんな気持ちでっ、」
「ごめんなさい、ごめん、ごめんねヒョン、何度でも謝るから、もう一度だけ...おれを信じてほしい。」
「ぼくはずっとジョングクのこと信じてたし疑ったことなんか一度もない。ぼくを信じられなかったのはおまえの方じゃないか。」
「違う、そうじゃない...そうじゃなくて...、」
しどろもどろになるジョングクを置いてぼくはまた歩みをすすめた。宿舎までの距離を黙って後ろをついてくるジョングク。子供の頃からこいつはぼくに口喧嘩では勝てない。
べつに意地悪をしているわけじゃなくて、一度上手くいかなかった恋が二度目に上手くいくはずがないと思うから。2回も振られることになったら、ぼくはもうこのチームにいられないよ。
あの頃のぼくたちに戻ってやり直したい、言いたいことが言えないまま玄関で靴を脱いでいると、ジョングクが沈黙を破った。
「おれの部屋で飲みなおさない?」
「まだ飲むの、おまえ。」
「飲みたいわけじゃなくて、ジミニヒョンともう少し話がしたい。ずっと話してなかったから。」
「分かったよ、冷蔵庫から適当に飲み物取ってくるから先に戻ってて。」
あんなにしょんぼりした顔されたら、ぼくがジョングクを突き放せるわけがないんだ。はぁ、相変わらず末っ子に振り回されてるのを自覚して溜め息を吐きながらリビングのドアを開けた。
おかえり!とキッチンから美味しそうな匂いとともにジンヒョンの明るい声。うわぁ、美味しい匂いの正体はサムギョプサルだった。
「珍しいね、こんな時間に食べるのヒョン。」
「料理番組見てたらどうしても食べたくなっちゃってさぁ、お前もどう?」
「あージョングギが食べるかも。部屋で飲むって言ってるから貰ってっていい?」
「お前たち二人で?」
「んーまぁ、」
「そーかそーか、あの子の熱い想いはジミニに届いたか。うちの末っ子はいつまでたっても不器用で見てるこっちがハラハラするわ。」
「いや、ぼくそんなこと言ってな、」
「最近のあの子は昔の泣き虫ジョングクそのものだったじゃん。」
「それもよく分かんないけど、」
「ほら昔、お前がフルーツがゴロゴロ入ってるゼリー買ってきたことあっただろ?1個しかないからジョングギにあげるって。したらあいつ、宝石みたいだぁーってすんごい喜びようでさ。」
「あー思い出した!ジョングギのやつ、もったいぶって冷蔵庫に入れっぱなしにしてたもんだからテヒョンイに食べられちゃって。」
「そう!あいつ、3時間も泣き続けたんだよ。」
「あはははっ!さっさと食べればいいのにバカだよねぇ。」
「あの食いしん坊のジョングギがどうしてあのゼリーを大事に取っておいたか、知ってる?」
「宝石みたいで食べるのもったいなかったのかな。」
「違うよ、好きな人が初めて自分にくれた贈り物だったからね。あの子がそれまで生きてきた中で一番大切なプレゼントだったんだ。」
「それって...、ぼくのこ、と?...あの頃から?」
「そうなんだろうね、口にこそ出さなかったけどメンバーみんなで見守ってきたんだよ、末っ子の恋心を。そして、その末っ子が男らしく成長するにつれ、どんどん惹かれてく可愛いかわいい、この弟もね。」
「全部ぜんぶ知ってた、の?ぼく不思議に思ってたんだ、なんでヒョンたちは認めてくれたのかなって。だって、普通だったら反対するよね?」
「大事なときに味方になってやれないのが防弾?そんな無責任な男はうちのチームに誰一人いないよ。ただ、困ったのはテヒョニでさ、お前をジョングクに取られるのが寂しかったんだろうね、手がかかって大変だったわ。あいつは厳しく育てるつもりが、めちゃくちゃ甘やかしちゃったな。」
ジョングク用のお皿にサムギョプサルを盛りつけながら楽しそうに笑って昔話をするジンヒョン。初めて聞かされる話ばかりだったけど、改めてこの人たちにずっと守られてきたんだと気づかされる。
ありがとうジンヒョン、ありがとうシュガヒョン、ありがとうナムジュニヒョン、ありがとうホビヒョン。ありがとう、ジョングクを見守ってくれて。ありがとう、テヒョンを甘やかしてくれて。本当にありがとう、ぼくのヒョンでいてくれて。
ぎゅうぅぅーっ、感謝の気持ちが溢れてジンヒョンを抱きしめた。それからひと切れのお肉を口の中に放り込まれて、ジョングギが今ごろそわそわしながら待ってるから早く行ってやれって。
ジンヒョンが持たせてくれたトレイの上にサムギョプサルと焼酎とグラスを乗せて。よいしょ、と部屋のドアを開けたら目の前にジョングクが突っ立ていて驚いた。さすが!うちの長男はなんでもお見通しだ。
「ぼくが遅いからそわそわしてた?ふふっ、」
「遅いとは思ってたけど、そわそわなんてしてない。」
「あそう?」
「ほっ、ほんとだって!ほんとにそわそわなんかしてないってば!」
「分かった分かった。」
「なんで遅かったの?サムギョプサル焼いてたから?」
「ジンヒョンがね、ぼくは見てただけ。」
「食べていい?」
「もう食べてんじゃん。」
両方のほっぺを丸くしてジョングクはよく食べる。その分ストイックに筋トレも欠かさないから、痩せたと思ってもすぐに身体は大きくなって。厚い胸板が男らしくて、逞しい太股はぼくのお気に入り。
硬く盛りあがった筋肉が好きでつい、ふにふにと触れてしまう。ただひとつの欠点はジョングクの膝枕は硬すぎて首が痛くなっちゃうってこと。ハッとして無意識に撫でていた手を引っこめた。心なしかジョングクの目が泳いでいる。
「ごめん、なんかまた太くなった気がしたからさ。」
「ジミニヒョンは細すぎ。」
「そう?」
今はべつにダイエットなんかしてないんだけどな、ひとり言みたいに呟いたらガシッと両手で腰を掴まれた。
めちゃくちゃ細くなってるよ!となぜかキレ気味に腰回りを測るように触られて、こらやめろ!とジタバタ暴れて抵抗する。
「もうっ!擽ったいってば!」
「昔のジミニヒョンはぽちゃぽちゃしてて可愛かったのにな。」
「またバカにしてる?」
「してない、本気で言った。」
「そ。」
そんな風に真剣な顔で返されるとどんな反応をすればいいのか分からなくなる。真っ直ぐにぼくを見る強い眼差しはあの頃からずっと変わらないのに、ぼくだけが、ぼくのここだけがザワザワしていた。
泣いたり、怒ったり、笑ったり、ほんっと忙しいやつ。今度は拗ねてんだか落ち込んでんだか知らないけど、タクシーに乗った途端だんまりを決めこんで。まじ疲れるわ。
あいつ可愛いですね、って同級生にちょっと小バカにされてたぞ、おまえ。確かに分かりやすくて可愛いんだけどさ。
「すみません、降ります。」
宿舎も目前というところで突然タクシーを降りるジョングクに唖然としていたら、運転手さんがぼくを振り返るからしかたなく後に続いた。
少し歩きませんか、って降りちゃったんだから歩くしかないだろ。早足でジョングクを抜かしたらすぐ後ろから足音がついてくる。そういえば昔、ぼくのあとをついて回るこの足音をいつも聞いてたっけな。
「ジミニヒョン。」
「なに。」
かけられた声に立ち止まらず、振り返りもせずに返事をした。ジミニヒョン、と低く掠れた声がぼくの名前を何度も、何度も、繰り返し呼ぶものだから、あーもーしつこいな!
「だからなに?」
「もう...あいつと...会ってほしくない。」
「はぁ?おまえには呆れるわ。」
「もし会うってんなら、おれ、また着いてく。あなたを取られたくない。」
「ぼくのこと、さんっざん無視してたくせに...なんなの?ほんと勝手なやつだな。ぼくがどんな気持ちでっ、」
「ごめんなさい、ごめん、ごめんねヒョン、何度でも謝るから、もう一度だけ...おれを信じてほしい。」
「ぼくはずっとジョングクのこと信じてたし疑ったことなんか一度もない。ぼくを信じられなかったのはおまえの方じゃないか。」
「違う、そうじゃない...そうじゃなくて...、」
しどろもどろになるジョングクを置いてぼくはまた歩みをすすめた。宿舎までの距離を黙って後ろをついてくるジョングク。子供の頃からこいつはぼくに口喧嘩では勝てない。
べつに意地悪をしているわけじゃなくて、一度上手くいかなかった恋が二度目に上手くいくはずがないと思うから。2回も振られることになったら、ぼくはもうこのチームにいられないよ。
あの頃のぼくたちに戻ってやり直したい、言いたいことが言えないまま玄関で靴を脱いでいると、ジョングクが沈黙を破った。
「おれの部屋で飲みなおさない?」
「まだ飲むの、おまえ。」
「飲みたいわけじゃなくて、ジミニヒョンともう少し話がしたい。ずっと話してなかったから。」
「分かったよ、冷蔵庫から適当に飲み物取ってくるから先に戻ってて。」
あんなにしょんぼりした顔されたら、ぼくがジョングクを突き放せるわけがないんだ。はぁ、相変わらず末っ子に振り回されてるのを自覚して溜め息を吐きながらリビングのドアを開けた。
おかえり!とキッチンから美味しそうな匂いとともにジンヒョンの明るい声。うわぁ、美味しい匂いの正体はサムギョプサルだった。
「珍しいね、こんな時間に食べるのヒョン。」
「料理番組見てたらどうしても食べたくなっちゃってさぁ、お前もどう?」
「あージョングギが食べるかも。部屋で飲むって言ってるから貰ってっていい?」
「お前たち二人で?」
「んーまぁ、」
「そーかそーか、あの子の熱い想いはジミニに届いたか。うちの末っ子はいつまでたっても不器用で見てるこっちがハラハラするわ。」
「いや、ぼくそんなこと言ってな、」
「最近のあの子は昔の泣き虫ジョングクそのものだったじゃん。」
「それもよく分かんないけど、」
「ほら昔、お前がフルーツがゴロゴロ入ってるゼリー買ってきたことあっただろ?1個しかないからジョングギにあげるって。したらあいつ、宝石みたいだぁーってすんごい喜びようでさ。」
「あー思い出した!ジョングギのやつ、もったいぶって冷蔵庫に入れっぱなしにしてたもんだからテヒョンイに食べられちゃって。」
「そう!あいつ、3時間も泣き続けたんだよ。」
「あはははっ!さっさと食べればいいのにバカだよねぇ。」
「あの食いしん坊のジョングギがどうしてあのゼリーを大事に取っておいたか、知ってる?」
「宝石みたいで食べるのもったいなかったのかな。」
「違うよ、好きな人が初めて自分にくれた贈り物だったからね。あの子がそれまで生きてきた中で一番大切なプレゼントだったんだ。」
「それって...、ぼくのこ、と?...あの頃から?」
「そうなんだろうね、口にこそ出さなかったけどメンバーみんなで見守ってきたんだよ、末っ子の恋心を。そして、その末っ子が男らしく成長するにつれ、どんどん惹かれてく可愛いかわいい、この弟もね。」
「全部ぜんぶ知ってた、の?ぼく不思議に思ってたんだ、なんでヒョンたちは認めてくれたのかなって。だって、普通だったら反対するよね?」
「大事なときに味方になってやれないのが防弾?そんな無責任な男はうちのチームに誰一人いないよ。ただ、困ったのはテヒョニでさ、お前をジョングクに取られるのが寂しかったんだろうね、手がかかって大変だったわ。あいつは厳しく育てるつもりが、めちゃくちゃ甘やかしちゃったな。」
ジョングク用のお皿にサムギョプサルを盛りつけながら楽しそうに笑って昔話をするジンヒョン。初めて聞かされる話ばかりだったけど、改めてこの人たちにずっと守られてきたんだと気づかされる。
ありがとうジンヒョン、ありがとうシュガヒョン、ありがとうナムジュニヒョン、ありがとうホビヒョン。ありがとう、ジョングクを見守ってくれて。ありがとう、テヒョンを甘やかしてくれて。本当にありがとう、ぼくのヒョンでいてくれて。
ぎゅうぅぅーっ、感謝の気持ちが溢れてジンヒョンを抱きしめた。それからひと切れのお肉を口の中に放り込まれて、ジョングギが今ごろそわそわしながら待ってるから早く行ってやれって。
ジンヒョンが持たせてくれたトレイの上にサムギョプサルと焼酎とグラスを乗せて。よいしょ、と部屋のドアを開けたら目の前にジョングクが突っ立ていて驚いた。さすが!うちの長男はなんでもお見通しだ。
「ぼくが遅いからそわそわしてた?ふふっ、」
「遅いとは思ってたけど、そわそわなんてしてない。」
「あそう?」
「ほっ、ほんとだって!ほんとにそわそわなんかしてないってば!」
「分かった分かった。」
「なんで遅かったの?サムギョプサル焼いてたから?」
「ジンヒョンがね、ぼくは見てただけ。」
「食べていい?」
「もう食べてんじゃん。」
両方のほっぺを丸くしてジョングクはよく食べる。その分ストイックに筋トレも欠かさないから、痩せたと思ってもすぐに身体は大きくなって。厚い胸板が男らしくて、逞しい太股はぼくのお気に入り。
硬く盛りあがった筋肉が好きでつい、ふにふにと触れてしまう。ただひとつの欠点はジョングクの膝枕は硬すぎて首が痛くなっちゃうってこと。ハッとして無意識に撫でていた手を引っこめた。心なしかジョングクの目が泳いでいる。
「ごめん、なんかまた太くなった気がしたからさ。」
「ジミニヒョンは細すぎ。」
「そう?」
今はべつにダイエットなんかしてないんだけどな、ひとり言みたいに呟いたらガシッと両手で腰を掴まれた。
めちゃくちゃ細くなってるよ!となぜかキレ気味に腰回りを測るように触られて、こらやめろ!とジタバタ暴れて抵抗する。
「もうっ!擽ったいってば!」
「昔のジミニヒョンはぽちゃぽちゃしてて可愛かったのにな。」
「またバカにしてる?」
「してない、本気で言った。」
「そ。」
そんな風に真剣な顔で返されるとどんな反応をすればいいのか分からなくなる。真っ直ぐにぼくを見る強い眼差しはあの頃からずっと変わらないのに、ぼくだけが、ぼくのここだけがザワザワしていた。
