好きしか知らない 𝚙𝚝.𝟸
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【𝙹𝚒𝚖𝚒𝚗】
ぼくとジョングクは相変わらずの平行線。言葉も交わさなければ視線も交わらない、昔のぼくたちに戻ったみたいだ。だからもう、頑張るのはやめた。
テヒョンのやつが口うるさいから食欲がなくてもご飯は食べなきゃだし、ホビヒョンと同室のおかげで眠れない夜を過ごすこともない。
少しずつ、少しずつでいいから、ジョングクとの思い出やジョングクへの想いが薄れていけばいいと何でもない日常を繰り返している。ほんの少しだけ変化したことといえば、
「ごめん、待たせちゃったね。」
「お疲れさまです、ジミニヒョンの好きそうなもの適当に注文しておきました。」
「あそう?セウォンも飲むでしょ?」
「もちろん、いただきます。」
そう、カンセウォン。週に一度のペースでこの子と会うようになって、3ヵ月とちょっと。
食堂でご飯を食べたり、ボーリングやカラオケに行くことも。時にはお洒落なバーでお酒を飲んだりもする。セウォンと出かけるのはまぁ普通に楽しいけれど。ぼくはあの日、はっきりとこの子の告白を断ったはず、だった。
*****
「ったくー!うちのマンネのせいでごめんね?手伝わせちゃって。」
散らばった空き缶とペットボトルを一緒に拾ってくれたセウォン。ジョングクのやつがやきもち妬きでたまに暴走しちゃうんだよね、なんてとても言えなくてただただ申し訳ない気持ち。
ダストボックスに缶を投げ入れながらジョングクの悪口が止まらないぼくを無言でじっと見てくるから、ん?と首を傾げるとセウォンはぷぷぷと吹きだした。なんだなんだ?
「付き合ってるんでしょう?その、手のかかる面倒な彼と。」
「えっ、」
「僕、あなたのそのキラキラした瞳が好きなんです。大好きな人の目が誰を映しているかなんて、さすがに分かりますよ。それに気づくくらいには僕もあなたのことを見ていますから。」
「うん、そっか...、そうなんだ...、」
男同士というだけで恋人がいると即答できなかった自分を心から恥じたし、何の疑問も感じることなく、偏見も持たず、好きなものを好きと言えるセウォンがとても羨ましくもあった。
「僕の好きな人には恋人がいて、その恋人は誰が見ても完璧なカッコいい男で、とても敵う相手じゃないと分かっていて告白しました。気持ちを伝えずに終わるのはあまりに自分が可哀そうだと思ったからです。」
「うんぼく、恋人がいる...ジョングクと付き合ってる...ごめんでも、きみの気持ちは嬉しかったよ、ありがとう。」
笑顔で差し出された彼の大きな手に少し戸惑いを感じながらも手のひらを重ねたら、ぎゅっと握り込まれた。
「ジミニヒョン、僕はこれからもずっとあなたの一番のファンです。」
あの日のぼくはセウォンがすごくいい子でほっとしたんだ。先輩後輩としてこれからもよろしくね、って笑顔で握手を交わして。ジョングクに心配することなんて何もないんだよって。もう機嫌直せ、って頭を撫でてやるつもりだった。そしたらジョングクはいつもみたいに目尻に皺を寄せながら前歯を見せて笑ってくれるだろうって。
それなのに最後に聞いたあいつの声が棘となってぼくの心臓を突き刺した。強がりで差し出した手が空中を彷徨って、あいつの手のぬくもりすら残してもらえなかった。それくらいにぼくは、嫌われてしまった。
*****
「ヒョンさすがにペースが早すぎますって!もっとゆっくり飲みましょうよ。」
「へーきだって、メンバーの中でもぼくはいっちばんお酒に強いんだぞ。ふふふっ、」
なんて言ったものの、ぼくはわりと酔っているのかもしれない。なんていうか、すんごく楽しくなってきちゃったし。
「ヒョンが潰れちゃったときためにジョングクの連絡先教えといてください。」
「えー、ジョングギは絶対にきてくれないよ?なんでか分かるかって?あのね?ぼく、振られちゃったんだ。ははは、知らなかったでしょー。」
「何を言ってるんですか、そんなのとっくに知ってましたよ。」
「うそ?...ん?なんで??ぼく話したっけ?」
「それに気づいちゃうくらい見てるって言ったでしょう?ヒョンが元気がないと僕まで悲しくなるから、あなたに笑っていてもらいたくてこれでも頑張ってたんですけどね?褒めてください。」
撫でて、というようにぼくの方へと頭を突き出して冗談めかして笑っているけど。当たり前にこの子の前でジョングクを話題に出すことなんてないし、ちょっぴり落ち込んでいても顔や態度に出さないようには気をつけていた。
先輩面して出来たばかりの弟を可愛がっているつもりが逆に気を遣わせてたなんて、カッコ悪いにもほどがある。この子はずっとぼくを元気づけようとしてくれてたのか。
「...おまえ...いいやつだな。」
「でしょ♪へへっ、僕はジミニヒョンの笑った顔が大好きだから、出来ればずっと僕の隣りで笑っていて欲しいです...なぁんて、冗談ですよ。」
「...。」
「冗談ですってば、そんな顔しないでくださいよ。」
「違う...、セウォンがまだ、ぼくのこと好きでいてくれるなら...もしそうだったら、なんだけど...、ぼくたちのこと前向きに考えたいなって...今、思った。」
「すっ、好きですっ、大好きですっ!うわマジ、どうしよ...めちゃくちゃ嬉しいっ!」
両手の拳を口元に押しつけて、テーブルに突っ伏した拍子におでこを勢いよくぶつけて悶絶しているセウォン。ゴチン!ってすんごい音がしたけど、大丈夫?
赤くなったおでこに手を当ててだいぶ痛そうだけど、その顔はめちゃくちゃ笑ってる。この子はこんなに楽しそうに笑うんだな、とってもクールな印象しかなかったのに、不思議だ。
そんなセウォンのとびきりの笑顔を思い出しながらの帰り道、ふわふわとした小さなちいさな幸せを大事に抱えて帰宅したというのに。
リビングを通り過ぎるはずが中から聞こえる声に足を止めてしまったが最後、ドアの取っ手を握ったままで中に入ることも立ち去ることも出来なくなった。
この親友とこの弟はどうしていつもいつもぼくのことでケンカをするのか、なんでこいつらにぼくの未来を決められなきゃいけないのか。カーッと頭に血がのぼる。
「...なんだよそれっ、なんなんだよっ!!ぼくの幸せを勝手に決めるなっ!おまえになにが分かるの?分かるわけないっ!っ、着いてくんなっっ!!」
溜めこんだストレスが爆発したみたいに泣き喚く声に驚いてヒョンたちが集まってくるのを肩で蹴散らして、逆走するぼく。
部屋に引きこもろうと急いで閉めようとしたドアをジョングクが掴んで離さない。しばらく中から外から押し合いが続いたけれど、結局はぼくの方が力尽きた。力でジョングクに勝てっこない。
最後の手段で布団の中に逃げ込むつもりがそれもジョングクに阻まれて、ぼくはどうしたらいいの。がっつり両肩に手を置かれてどこを見ていいかも分からないし、もういやだ。
「覚えてる?男の子が二人欲しいって言ったよね、あなた。」
「は?」
「ジンヒョンとテヒョンイヒョンと話してるときに言ったじゃない、覚えてない?それを聞いて..おれ、」
「だからなに?ぼくがいけないの?おまえがっ、結婚とか言うからだろっ、結婚したら子供も一緒に育てたいと思うのは悪いことなのかよっ、わ、悪かったな、女々しくてっ!」
「ちょっ、ままま、待っ、」
「どうせぼくはウザくて重くて面倒臭いよっ、だったらもう蒸し返さないで放っといてくれればいいだろ!」
「違っ、ま、待ってよヒョン、一緒に育てるって?...おれたちに子供なんて、できるわけ、」
「言われなくても分かってるよ!おまえぼくをバカだと思ってんの?今どきハリウッドスターだって養子もらって育ててんじゃん。そんなことも知らないのか!バカはおまえの方だ!」
少しは勉強しろ!なんてわけの分からないことでキレているぼくもぼくだけど。くりくりの瞳をさらに丸くして口をパクパクさせてるジョングクもジョングクだ。
もういいから出てけよ!って、掴まれた肩が痛くて目の前の分厚い身体を力いっぱい突き飛ばしたけど、びくともしなかった。
「おれの勘違い?じゃあなんで、頷いたりしたの?なんで...サヨナラなんて言ったの。っ、なんで...、あなたが別れたくないって言ってくれてたらおれ、おれは...この手を絶対に離さなかったのに。」
は?ぼくが悪いの?ふざけるのもたいがいにしろ!この数ヵ月、ぼくがどんな気持ちで過ごしてきたのか、おまえに分かるの?
上手く歌いたいけど喉に何かつっかえてるみたいに声が出ないし、もっとしなやかに踊りたいのに身体が重くて言うことを聞いてくれない。ジンヒョンが作る美味しいはずの料理は何の味もしないんだから。
毎朝毎晩おまえの顔を見る度に泣きたくて泣けなくて、ずっと暗闇の中で生きてきたのに、今さら...なんで。なんで...おまえが泣くんだ、ばかやろう。
ぼくとジョングクは相変わらずの平行線。言葉も交わさなければ視線も交わらない、昔のぼくたちに戻ったみたいだ。だからもう、頑張るのはやめた。
テヒョンのやつが口うるさいから食欲がなくてもご飯は食べなきゃだし、ホビヒョンと同室のおかげで眠れない夜を過ごすこともない。
少しずつ、少しずつでいいから、ジョングクとの思い出やジョングクへの想いが薄れていけばいいと何でもない日常を繰り返している。ほんの少しだけ変化したことといえば、
「ごめん、待たせちゃったね。」
「お疲れさまです、ジミニヒョンの好きそうなもの適当に注文しておきました。」
「あそう?セウォンも飲むでしょ?」
「もちろん、いただきます。」
そう、カンセウォン。週に一度のペースでこの子と会うようになって、3ヵ月とちょっと。
食堂でご飯を食べたり、ボーリングやカラオケに行くことも。時にはお洒落なバーでお酒を飲んだりもする。セウォンと出かけるのはまぁ普通に楽しいけれど。ぼくはあの日、はっきりとこの子の告白を断ったはず、だった。
*****
「ったくー!うちのマンネのせいでごめんね?手伝わせちゃって。」
散らばった空き缶とペットボトルを一緒に拾ってくれたセウォン。ジョングクのやつがやきもち妬きでたまに暴走しちゃうんだよね、なんてとても言えなくてただただ申し訳ない気持ち。
ダストボックスに缶を投げ入れながらジョングクの悪口が止まらないぼくを無言でじっと見てくるから、ん?と首を傾げるとセウォンはぷぷぷと吹きだした。なんだなんだ?
「付き合ってるんでしょう?その、手のかかる面倒な彼と。」
「えっ、」
「僕、あなたのそのキラキラした瞳が好きなんです。大好きな人の目が誰を映しているかなんて、さすがに分かりますよ。それに気づくくらいには僕もあなたのことを見ていますから。」
「うん、そっか...、そうなんだ...、」
男同士というだけで恋人がいると即答できなかった自分を心から恥じたし、何の疑問も感じることなく、偏見も持たず、好きなものを好きと言えるセウォンがとても羨ましくもあった。
「僕の好きな人には恋人がいて、その恋人は誰が見ても完璧なカッコいい男で、とても敵う相手じゃないと分かっていて告白しました。気持ちを伝えずに終わるのはあまりに自分が可哀そうだと思ったからです。」
「うんぼく、恋人がいる...ジョングクと付き合ってる...ごめんでも、きみの気持ちは嬉しかったよ、ありがとう。」
笑顔で差し出された彼の大きな手に少し戸惑いを感じながらも手のひらを重ねたら、ぎゅっと握り込まれた。
「ジミニヒョン、僕はこれからもずっとあなたの一番のファンです。」
あの日のぼくはセウォンがすごくいい子でほっとしたんだ。先輩後輩としてこれからもよろしくね、って笑顔で握手を交わして。ジョングクに心配することなんて何もないんだよって。もう機嫌直せ、って頭を撫でてやるつもりだった。そしたらジョングクはいつもみたいに目尻に皺を寄せながら前歯を見せて笑ってくれるだろうって。
それなのに最後に聞いたあいつの声が棘となってぼくの心臓を突き刺した。強がりで差し出した手が空中を彷徨って、あいつの手のぬくもりすら残してもらえなかった。それくらいにぼくは、嫌われてしまった。
*****
「ヒョンさすがにペースが早すぎますって!もっとゆっくり飲みましょうよ。」
「へーきだって、メンバーの中でもぼくはいっちばんお酒に強いんだぞ。ふふふっ、」
なんて言ったものの、ぼくはわりと酔っているのかもしれない。なんていうか、すんごく楽しくなってきちゃったし。
「ヒョンが潰れちゃったときためにジョングクの連絡先教えといてください。」
「えー、ジョングギは絶対にきてくれないよ?なんでか分かるかって?あのね?ぼく、振られちゃったんだ。ははは、知らなかったでしょー。」
「何を言ってるんですか、そんなのとっくに知ってましたよ。」
「うそ?...ん?なんで??ぼく話したっけ?」
「それに気づいちゃうくらい見てるって言ったでしょう?ヒョンが元気がないと僕まで悲しくなるから、あなたに笑っていてもらいたくてこれでも頑張ってたんですけどね?褒めてください。」
撫でて、というようにぼくの方へと頭を突き出して冗談めかして笑っているけど。当たり前にこの子の前でジョングクを話題に出すことなんてないし、ちょっぴり落ち込んでいても顔や態度に出さないようには気をつけていた。
先輩面して出来たばかりの弟を可愛がっているつもりが逆に気を遣わせてたなんて、カッコ悪いにもほどがある。この子はずっとぼくを元気づけようとしてくれてたのか。
「...おまえ...いいやつだな。」
「でしょ♪へへっ、僕はジミニヒョンの笑った顔が大好きだから、出来ればずっと僕の隣りで笑っていて欲しいです...なぁんて、冗談ですよ。」
「...。」
「冗談ですってば、そんな顔しないでくださいよ。」
「違う...、セウォンがまだ、ぼくのこと好きでいてくれるなら...もしそうだったら、なんだけど...、ぼくたちのこと前向きに考えたいなって...今、思った。」
「すっ、好きですっ、大好きですっ!うわマジ、どうしよ...めちゃくちゃ嬉しいっ!」
両手の拳を口元に押しつけて、テーブルに突っ伏した拍子におでこを勢いよくぶつけて悶絶しているセウォン。ゴチン!ってすんごい音がしたけど、大丈夫?
赤くなったおでこに手を当ててだいぶ痛そうだけど、その顔はめちゃくちゃ笑ってる。この子はこんなに楽しそうに笑うんだな、とってもクールな印象しかなかったのに、不思議だ。
そんなセウォンのとびきりの笑顔を思い出しながらの帰り道、ふわふわとした小さなちいさな幸せを大事に抱えて帰宅したというのに。
リビングを通り過ぎるはずが中から聞こえる声に足を止めてしまったが最後、ドアの取っ手を握ったままで中に入ることも立ち去ることも出来なくなった。
この親友とこの弟はどうしていつもいつもぼくのことでケンカをするのか、なんでこいつらにぼくの未来を決められなきゃいけないのか。カーッと頭に血がのぼる。
「...なんだよそれっ、なんなんだよっ!!ぼくの幸せを勝手に決めるなっ!おまえになにが分かるの?分かるわけないっ!っ、着いてくんなっっ!!」
溜めこんだストレスが爆発したみたいに泣き喚く声に驚いてヒョンたちが集まってくるのを肩で蹴散らして、逆走するぼく。
部屋に引きこもろうと急いで閉めようとしたドアをジョングクが掴んで離さない。しばらく中から外から押し合いが続いたけれど、結局はぼくの方が力尽きた。力でジョングクに勝てっこない。
最後の手段で布団の中に逃げ込むつもりがそれもジョングクに阻まれて、ぼくはどうしたらいいの。がっつり両肩に手を置かれてどこを見ていいかも分からないし、もういやだ。
「覚えてる?男の子が二人欲しいって言ったよね、あなた。」
「は?」
「ジンヒョンとテヒョンイヒョンと話してるときに言ったじゃない、覚えてない?それを聞いて..おれ、」
「だからなに?ぼくがいけないの?おまえがっ、結婚とか言うからだろっ、結婚したら子供も一緒に育てたいと思うのは悪いことなのかよっ、わ、悪かったな、女々しくてっ!」
「ちょっ、ままま、待っ、」
「どうせぼくはウザくて重くて面倒臭いよっ、だったらもう蒸し返さないで放っといてくれればいいだろ!」
「違っ、ま、待ってよヒョン、一緒に育てるって?...おれたちに子供なんて、できるわけ、」
「言われなくても分かってるよ!おまえぼくをバカだと思ってんの?今どきハリウッドスターだって養子もらって育ててんじゃん。そんなことも知らないのか!バカはおまえの方だ!」
少しは勉強しろ!なんてわけの分からないことでキレているぼくもぼくだけど。くりくりの瞳をさらに丸くして口をパクパクさせてるジョングクもジョングクだ。
もういいから出てけよ!って、掴まれた肩が痛くて目の前の分厚い身体を力いっぱい突き飛ばしたけど、びくともしなかった。
「おれの勘違い?じゃあなんで、頷いたりしたの?なんで...サヨナラなんて言ったの。っ、なんで...、あなたが別れたくないって言ってくれてたらおれ、おれは...この手を絶対に離さなかったのに。」
は?ぼくが悪いの?ふざけるのもたいがいにしろ!この数ヵ月、ぼくがどんな気持ちで過ごしてきたのか、おまえに分かるの?
上手く歌いたいけど喉に何かつっかえてるみたいに声が出ないし、もっとしなやかに踊りたいのに身体が重くて言うことを聞いてくれない。ジンヒョンが作る美味しいはずの料理は何の味もしないんだから。
毎朝毎晩おまえの顔を見る度に泣きたくて泣けなくて、ずっと暗闇の中で生きてきたのに、今さら...なんで。なんで...おまえが泣くんだ、ばかやろう。
