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──────────……
「…………母…さん……」
うっすらと目を開ける真昼。
誰かが見下ろしていて、頭を撫でているのが分かる。
一瞬映る、母親の優しい笑顔は、直ぐに別の者へと変わった。
「……真昼くん」
「……っ…蒼…?」
近くにいたのは蒼だった。
椅子に座り、とても優しい笑みを浮かべて、頭を撫でていたのだ。
一瞬映った母親が見えて、思わず母さんと呟いたことに、少し恥ずかしさを覚えて蒼から目線を反らした。
そんな真昼に、蒼は困ったように微笑みながら「大丈夫?」と声を掛ける。
「気分はどう?」
「ん…大丈夫」
「…そっか」
そう言うと、蒼は真昼の目の下を、すいっとすくうように撫でた。
夢を見て、流れていた涙が渇いた所に触れたのだ。
その行為に、真昼は思わず蒼を見やる。
「……お母様のこと、夢視てたんだね」
「っ!…」
図星、真昼は恥ずかしさが募りバッと壁側へ身体を向けた。
「な、情けないって…笑ったっていいんだぞ……?」ムキになったように蒼に話し掛ける。
困ったように微笑む顔を絶やさず、蒼は「笑わないよ」と言った。
「真昼くんはいつも頑張ってるもの。笑ったりしないよ」
「…そんなこと……」
「それに、情けなくなんかないよ?真昼くんの中で、お母様は大事な存在だって知ってるもの。夢に視れたことは、すごく幸せだと思う」
「……」
「きっと、真昼くんのお母様も心配だったんだよ。だから、夢に出てきてくれたんじゃないかな」
「……おとぎ話みたいだな」
「…でも……嬉しかったでしょう?」
「っ……」
蒼の言葉で、真昼の頑なになっていた気持ちが、まるで糸をほどくように…。
目尻が熱くなり、また涙を溢しそうになる。
それを堪えながら、けれど本心を真昼はハッキリと口にした。
「ああっ……嬉しかった…っ」
「……うん」
もぞっと身体を動かし、真昼はゆっくりと身体を起こした。
顔は下に俯いたままだったが、チラリと蒼の顔を見てみると、そこにはいつもの優しい笑顔。
目が合った蒼はニコッと微笑んだ。
「……蒼」
「ん?」
「……あ、ありがとう…」
「どういたしまして」
そう言った蒼は、真昼の頭を優しく撫で始めた。
「真昼くんはいい子だねー」ニコニコしながら言う蒼に、真昼は照れ臭そうに「子供じゃねーっつーの」と返した。
ふふっと笑みをこぼし「もうお昼だよ?お粥作ったけど、食べれそう?」と問い掛ける。
「…うん、食べる」
「分かった。じゃあ持ってくるね」
真昼の部屋にあった椅子に座っていた蒼は、先程使っていた蒸しタオルを持って立ち上がった。
そのまま真昼の部屋を出ようとする蒼の背中をただ見つめながら、真昼の鼓動はトクントクン…と動いている。
蒼の笑顔や仕草、性格に惹かれ、今でも想う気持ちが、鼓動を大きく動かすのだ。
それは、真昼が一番良く分かっている。
少しして、蒼はクロと一緒に真昼の部屋に戻ってきた。
「おまたせ~」三人分の昼食を持って、クロは氷枕を持ちながら「大丈夫か~?」といつもの調子で問い掛ける。
「ここで食べようと思ってね~♪」
「いや、別にリビングでも…」
「いいからいいから♪真昼くん、梅干しは嫌いじゃなかったよね?」
「あ、ああ…食べれるけど」
「崩して入れておくね?熱で口がまずい時でも、少しさっぱりするから」
「あ、ありがとう」
「全部食べれそうになかったら、残しても大丈夫だから」
「いや、多分大丈夫」
「真昼がお粥だからって、オレも同じお粥を食うんだぞ…?感謝しろよ?」
「じゃあ食うな!」
「あ、待って。食べる前にこのタオル首に巻いて?」
「え?う、うん」
「お粥食べると汗かくからね。…さ、食べよ♪」
「…サンキュ、蒼」
「いっぱい汗かいて、熱下げないとね」蒼は真昼の首にタオルを巻いて、更に上着を肩にかけてあげた。
それから三人、真昼の部屋で昼食を取った。
流石に、真昼は子供の時のように舌を火傷して、水をがぶ飲みすることはなかったが…。
梅干しが入っていたことで、蒼の言う通り…口の中がさっぱりした。