09.武器を持つということ
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「……っどうして…貴方も…」
「え…?」
「わ、たし……わた…し…は…っ」ふらぁ…
「っ!」
ポスッと青年の腕に落ちる蒼。
それを見ていた真昼は「蒼!!」と駆け寄ってきた。
気を失ってしまったのは、本人も忘れていた風邪がぶり返したことが原因の様だった。
「!」腕から感じる蒼の額の熱さに気付き、額に手を当てる青年。
「…この子、風邪引いてるのに…無茶して来たんだね」
「蒼…っどうしてここに…」
「とりあえず、君は帰りなよ。この子はオレが面倒見とくから。他人を気にする程、今の君には余裕が無いだろうしね」
「っ…」
「その気になったら連絡してよ。そうすれば君は、元の普通の学生に戻れる」
蒼を抱え、青年はその場を去っていく。
ポツンと取り残された真昼は、後ろ姿を見送りながら蒼の事を思い出した。
「風邪引いてたのに…何でっ…」真昼の悔しさが表情に滲み出る。
蒼は身を呈して桜哉のもとに飛び込んだ。
それに蒼は、桜哉の何かを掴んでいるように見えた。
(結局俺は……桜哉のことも、御園も…蒼も……守れなかった…っ!)
──────────……
(……ここは…夢…?)
暗い街の中、一人佇む蒼。
建物の光りがポツポツと灯されている。
そんな建物の下、ブランコに乗る二人がいることに気が付いた。
(子供と、中学生くらいの…女の子…)
近付いてみると、蒼はハッと目を見開いた。
そこにいたのは、小学生の桜哉、そしてあの路地で見た、ポニーテールの女の子。
二人が何か会話をしているのを、蒼は耳にした。
『桜哉。今日は、お父さん帰ってくるからね。桜哉は部屋から出たらだめだからね』
『……姉ちゃんは…?』
『姉ちゃんは大丈夫だから心配しないで。物音立てたらだめだからね』
一体何の話しているのだろう、そう思う蒼の周りの背景は一瞬黒く変わった。
そしてすぐに、どこかの部屋の中という背景に変わる。
(っ!こ、ここは…)キョロキョロと見回し、ふとベランダに目を向けた。
そこには先程の女の子と、その両親らしき二人が立っていた。
嫌な予感がし、身体がふるふると震え始める。
蒼の嫌な予感は的中した。
『…私が死んだら、いくら入るの?』
(だ、ダメ……ダメよ…っ。それだけは…!)
『桜哉には、何もしないで』
『……ああ』
(何で…っダメ……そんなの…っ桜哉くんが…っ!)
『約束するよ』
女の子はベランダから飛び降りた。
蒼は透ける身体でベランダへ向かう。
桜哉も同じように、襖から飛び出す桜哉。
蒼はベランダの上から下を見下し、女の子が血まみれになって倒れているのがうっすらと見えた。
口元を抑え、がくがくと身体を震えさせる。
桜哉は父親に抑えられ、ベランダに行く事が叶わなかった。
そんな桜哉に、惨い父親は呪いの様に言葉を掛ける。
『これは事故だ。
明日警察が来たら、お前とふざけていて落ちたと言うんだ。
さもないと、お前も同じことになるぞ。
お姉ちゃんはお前を守って死んだんだ。
無駄にしたくはないだろう?』
(っ!!ひ、酷い…っ!!どうして、実の子供にこんなことっ!!……酷過ぎる…っ)
怒りを覚え、蒼は涙を流した。
桜哉も、姉を失い悲しみの涙を零す。
周りの風景は変わり、その部屋に警察が来ていた。
事情聴取を受ける桜哉と両親。
両親に脅され、彼は初めて嘘をついた。
『オレとふざけて遊んでて……』
(…子供の命を使って、お金を掴むなんて……おかしい…狂ってるっ!!)
ふるふると怒りをあらわにする蒼。
その後ろでは、まるで物語のナレーターの様に、女性の声が語った。
─────マンションの住民は、彼の家がおかしいことを知っていたはずなのに─────
─────みんな関わりたくなくて嘘をついた─────
─────彼女は街に殺された─────
─────彼は嘘つきの街で生まれた、嘘つきの子供─────
─────…そして6年後─────
─────彼に用意されたのは、姉とまったく同じ道─────
(な…っ!!)
フォンッ…
背景は変わり、蒼が目にしたのは、地面に血まみれで倒れる桜哉の姿。
そこへ現れる、椿。
コン コン コン
(!……椿、さん)
コン
『迎えに来たよ』