09.武器を持つということ
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ぶつぶつ
「─────…─────…」
「ジェジェはすぐ撃ってきやがる。怖いね━━━アベルー?やだやだ」
自分の発言のせいだと分かっていながらもそういう青年。
端っこでぶつぶつと、多分ジェジェは文句を呟いているのだろう…。
それを余所に、ひょいとクロを持ち上げ真昼に渡した。
「はい、君の猫。めった撃ちにして悪かったねー」
「あ…」びくっ
真昼は一瞬化け物の事を思い出したようで、身体を強張らせながらも受け取る。
そんな真昼に冷たい視線を浴びせながら「桜哉(かれ)を壊してあげたら良かったのに」と言い放つ。
「彼は君に殺されたいと望んでいたのにね」
そう言い放った青年を、困惑した表情で見上げる真昼。
青年は言葉を続けた。
「そんな覚悟なんてなかったと自覚しただけでも良かったかな…?
・・・・・・・
友達だったものを壊す覚悟なんてできなくて当然…。…そこで、だ。
キミと吸血鬼(サーヴァンプ)の契約を解除する方法を教えるよ。替わりにその“怠惰”をオレに渡さない?」
「取り返しがつかなくなる前にさ」何かを知っている風に話す青年。
勿論そんな言葉に戸惑う真昼は「なん…なんですか」と返すしかない。
「あなたは…?誰────…」
「いやあ…ただのお節介なんだけど」
と薄笑いを浮かべながら帽子に手を当てる。
「キミが…吸血鬼(ちから)をもってしまったこと、後悔してないかと思ってね」
「俺…は、ただ…クロと、みんなを、守れたら…って、思って…」
「だってそのせいでキミと親友は敵対することになったんでしょ?」
「……っ」
少し離れた場所で聞いている蒼。
胸の辺りをぎゅっと掴み、その言葉を聞いて考え込んだ。
持たなければ良かったのだろうか…拾わなければ良かったのだろうか…。
最初から、遭遇しなければ良かったのだろうか…本当に、それが正しいのだろうか…。
そして更に聞こえる青年の言葉。
「何の覚悟もなく力を使い、“怖い” “力なんていらない”と思ってしまえば、吸血鬼(サーヴァンプ)は君をまるごと食っちゃうんだよ」
(じゃあ…あの沼は、食べてしまおうとしてたのかな。真昼くんを…でも、私は沼に引きずられたのに…どうして)
そこでハッとする蒼は、いつも身に付けているループタイを手に取った。
蒼く輝く石が埋め込まれている、愛用のループタイ。
沼で光が現れ、蒼を沼から守った…女性が言っていた『身に着けておけ』という意味を理解した。
…だが、するとそこでまた疑問が生まれてしまう。
(…何の疑問も持ってなかったな…ずっと身に着けていたこと。何でか、身に着けておかなきゃいけないって……なんで…?)
─────これが、守ってくれる…─────
キ━━━ンッ
「っ!!……ま、また…耳鳴りが…っ」
浮かぶ一瞬の映像を垣間見るが、蒼に耳鳴りが大きく響き、一瞬にして映像は消えた。
どうして…?何で?何かが見えるといつも…そう思う蒼に耳鳴りの響きが止まらず、片手だったが思わず両手で抑える。
これが、女性の言っていた、守ることなのだろうか。
つらそうに苦しむ蒼、その様子をちらりと横目で見ていた青年は真昼に…。
「…オレの持論をひとつ披露しようか?『力を持ち始めた無知な子供は恐ろしい』…なんてね?」
そう残した。
結局、自分の名前も明かさずに。
そして青年が向かった先にいる蒼の前にしゃがみ込んだ。
「君、大丈夫?」
「え…」
声を掛けられ、蒼が見上げるとそこには青年がいた。
一瞬目を見開く青年だが、瞬き程の早さで普通に戻す。
「頭痛いの?頭痛薬あるよ?世界旅行が趣味だからね、持ち歩いてるんだ」
「……い、いえ…大丈夫…です…」
「そう?」
「は、はい。あの…ありがとう、ございました……助けて、頂いて…」
「…どう致しまして」
にっこりと微笑む青年。
その笑みは、蒼の中の何かを思い出していた。
「…!」一瞬浮かぶ、椿の微笑み…優しく、けれどどこか切なさを交えた瞳。
椿よりかはとてもごく僅かで見えにくいけれど、確かに蒼はそれを察知した。
今にも泣きそうな表情に変わる蒼、青年は思わずぎょっとする。