08.うそつきはだれだ
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───────────……
「っ!………あれ…?」
パチンと目が覚めた蒼の瞳に映るのは、保健室の天井。
二・三度目を開閉し、重い身体をむくりと起こした。
外を見れば、すっかり辺りは暗くなっている。
文化祭準備の為、生徒たちは何人か残っているようだが…。
ほんの一・二時間ぐらいしかいないような感覚だったのに…。
それまで蒼は女性が作ったという世界にいたという事である。
「……暗い…授業…終わり………あ、鞄…」
(真昼くん…持ってきてくれてたんだ…)自分の鞄が近くにあるのが見える。
ぼうっ…と何かが脳内で映し出される…それが、蒼の意識をはっきりさせた。
「っ!!真昼くん!!桜哉くん!!」
バッとベッドから抜け出し、持ってきてくれた鞄すら置き忘れて保健室を出た。
風邪でふらふらな状態であることも忘れて…。
学校を抜け出し、街中を走り続ける蒼。
「どうして、だろう…どこの路地かも分からないのに…」場所も分からずただ走る。
だが蒼は感じていた。
感覚で、けれど確実にその場所に向かっている事を…。
間違いではない事を…。
「…っはあ……っあった!」
見つけた一つの小さな曲がり角。
直ぐ様蒼はそこを曲がり、そのまま進んでいく。
路地から出る直前で止め、どうなっているのか様子を見た。
…蒼に愕然とした表情が浮かぶ。
(……そ、そんな…っ)
リリイが右足を無くし、御園も血まみれで倒れている。
真昼の背後で桜哉が動きを封じ、首元にはナイフが宛がわれていた。
「っ…!」真昼が傷つけられてしまう、けど桜哉がそんなことするわけない。
そんな矛盾した感情が蒼の中を渦巻く。
がくがくと足が震え、動きたくても動けない…蒼は唇を噛みしめた。
(動いて…っ……動け…っ!…動けっ!!)
「真昼にはわかんねえよ。オレがずっとどんな気持ちでいたのかなんて。
…みんなで楽しく遊んだ帰り道、のどが渇いて仕方ないんだ…。
楽しければ楽しいほど、乾いて乾いて殺したくなる。
そんなとき…椿さん達に会うと安心するんだ…
オレが悪いんじゃない。吸血鬼(オレ)はそういうふうにできてるんだ。
他人を傷つけないと生きられない生き物なんだ。
…だから 傷付けるのは仕方ない…」
「傷付けても仕方ないなんてあるわけ…っ」
ドカ
「あるんだよ真昼!!」
真昼を蹴飛ばし、そのまま真昼の後頭部に足を乗っける桜哉。
睨みつける真昼。
いつも見る桜哉とはまるで別人に見えてしまう…怖い表情。
酷く悲しそうな表情で、蒼は桜哉を見た。
(……もう、ダメよ…桜哉くん。そんな…っ)
「だって後ろめたくて気持ちいいんだ!わかれよ真昼!!嘘をついたお前の言葉なんて、もう何一つオレには届かない!」
(…そんなっ…自分で自分を傷付けてるだけなのに…っ)
「さあ真昼。もっと本気でオレを殺しに来いよ。そうしないと…オレはまたお前の友達を殺すかもよ…!?」
「まっ……!!あれ…?」
止めようと、進めようとした足は、蒼の目に、一人の人物がうっすら視えたことで叶わなかった。
《─────うそつき。自分がされて悲しかったことを、彼にもするの?》
(……だれ…?………あ…)
セーラー服を着た、ポニーテールの女の子。
直ぐに消えてしまったが、蒼は気付いた。
場所も分からないのに、この路地へ来れたこと。
きっとそれは…。
《─────…》
ばっ
「っ!」
困ったように笑みを浮かべて、通り過ぎたような感じ…。
後ろを振り向いたが、そこには何者の気配もなかった。
だが彼女の微笑みで…蒼は動かなかった足が動くような感覚を覚えた。
…彼女が導いてくれた、そう信じて疑わない蒼。
キッと目を構え、(今すぐ側に行かなきゃ…!!)それだけの気持ちを持って、蒼は路地を出た。
一方で桜哉も、同じ気配を感じてばっと後ろを振り向くが、そこには姿がなく…代わりに…。