08.うそつきはだれだ
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『あ、貴女が…さっきの声?』
『…ふふっ。他に誰がいる?』
『あっ…そ、そうですよね…』
白く綺麗に装飾されたアンティークのイスに座り、漆黒の外套に身を包む女性。
水色がかった銀色の髪が緩やかなウェーブでふわりとまとまっている。
白がかった灰色の瞳は、まるでモノクロームに変わった世界のよう。
きめ細やかな白い素肌が、何とも魅力的で吸い込まれそうなほど美しく鮮やかだ。
そして、喋り方が一般の女性とは違う。
全てを見通したような古風な喋り方だった。
『あ、あの…貴女は、どちら様でしょうか?』
『…語るには、これを欠かすわけにはいかぬ』
『え?』
質問に答えず、女性はパチンッと指を鳴らした。
すると目の前に白い霧が渦を巻き始める。
そこから現れたのは白いポットとティーカップ。
ティーカップには湯気が立ち込めていた。
『え?ええっ??い、いきなりカップとポットが…!』
『そなたの好物であろう?』
『へ?』
いきなり現れたことに驚く蒼。
恐る恐る恐るカップの中を覗きこむと、紅茶の香りが漂った。
ゆらゆらと揺れるその色は、宝石の様に綺麗なオレンジ色で彩られている。
カップを手に取り、じっと見つめて呟いた。
『……アールグレイ…』
『お茶会には欠かせぬものよ』
女性の方を見てみると既に同じカップが用意されており、紅茶をコクリと口にしている。
茫然と見ていた蒼も自分の持っている紅茶に目を向け、ゆっくりと口にした。
広がる紅茶の味にホッとした表情を露わにする蒼。
その様子を見た女性はふっ…と笑みをこぼした。
『どうやら、口にはあったようだな』
『…あ、あの…どうして、紅茶が好きなことを…』
『知っている。そなたの事は、よく知っている…。
優しい性格も、繊細な心を持っていることも、アイスと紅茶が好きなことも、辛いものが苦手なことも。
犠牲を厭わない行動力も、歌う事が好きなことも、星見をすることも、他人が傷つくのを嫌がることも。
…そして。
今住んでいるマンションに引っ越してくる以前の…
・・・・・
記憶が無いことも』
『っ!!?な、何でそれを…っ!!』
ガタンと立ち上がり取り乱す蒼に、女性は落ち着いている様子。
『座れ。まだ話は終わってないぞ?』となだめる女性の言葉に、蒼はカタンと静かに座り直した。
言われた蒼の表情は曇っている。
(…そう、私には両親がいなくて、あのマンションに引っ越すことになった。親の代わりに、弁護士さんが毎月の生活費を振り込んでくれている。……でも…
・・・・・・・・・・・・・
そんな人に会ったこともない。
あのマンションに引っ越す理由だって…。ただ、そうなんだって思っていただけで…)
『……』
『…ここは、どこですか?夢じゃないなら、何なんですか?』
『ここは、夢だけど夢じゃない。現実だけど現実じゃない』
『?…よく、分からないです』
『夢と現実の狭間、境目に位置する一つの世界だ』
『狭間?境目?…なんだか、想像がつかないのですが…』
『無理もない。…ここは、私が創った世界なのだから』
『つ、作った…?世界を?』言葉を繰り返す蒼。
全く頭がついていかない蒼は、頭の上に?を飾すしかなく。
そんな蒼を見兼ねた女性は『深く考える必要はない』と念を押す。
『知っているのは、私達で十分だ』
『私、たち…?貴女の他に、誰かここにいるんですか?』
『……いや、ここには私一人だ』
『…どうして、私をここに連れてきたんですか?』
『……』
蒼の質問に、女性は紅茶を口にしながら沈黙を唱えた。
カチャンと受け皿にカップを置くと、真っ直ぐと蒼を見据える。