06.よみがえる幻影
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「忘れていた方が、蒼にとっては幸せかもしれないよ?」
「もしそうだとしても…その幸せが、何かの犠牲の上にあるのだとしたら」
「!」
「…私は、その犠牲という罪を…背負っていかないといけない。そう思うんです」
「……蒼…」
「…もし、その罪がとても大きくて、潰れてしまいそうでも…私は…」
椿は蒼が言い切る前にぎゅっと抱きしめた。
突然の事に驚く蒼だが、元の不安な表情に戻った。
一方で椿は、蒼自身を抱きしめてはいるが、その先にある“何か”を見据えて抱きしめるように、力を入れる。
守る様に、すがる様に…色んな想いが、椿を渦巻いた。
(……●●●●)
「椿…さん?」
「…ああ、ごめん。苦しかった?」
「い、いえ…大丈夫です…」
「そういえば、頭も怪我してるね。痛くない?」
「は、はい。大丈夫です」
「…そう」
蒼を離した後、椿はベッドに座った。
椿の行動をそのまま目に焼き映し、自然と蒼の背には夜景が背景となる。
消灯していない明るい部屋のせいで、椿から見える蒼は、まるで暗闇の中へ吸いこまれていくように見えた。
椿の悲しそうな表情を見た蒼は、ゆっくり目を閉じて胸の前で手を組む。
それは、神に祈る修道女のようで…。
少しの沈黙が流れた後、蒼は言葉を紡ぎ出した。
「山に育む緑、木陰に沈む夕日は、我らを包む。
流れる波の音色、磯に砕けるしぶきは、我らに語る。
闇に瞬く光、深々と降る姿は、我らへ贈る。
全ては私達を導く、星のしるべ…」
「…え……蒼…?」
「届けましょう…この唄を。与えましょう…貴方を救いたいと願う唄を…」
背筋をピンと伸ばす蒼は、スーっと息を吸い、静かに歌い始めた。
「♪♪♪─────♪───♪♪──────…」
「っ!」
日本語でも、外国語でもない、全く知らない言語が、蒼の歌声によって響き渡る。
蒼の歌い始めた曲を聞き、椿は目を見開いた。
脳裏によみがえる、一つの思い出が椿を包み込む。
蒼を通して思い浮かぶ、一人の姿がそこにいた。
──────────……
『……●●●●、僕は…何の為にいるんだろう。何でずっと、ここにいるんだろう』
『…悲しい?』
『…分からない』
『…私に、出来ることはあるかしら?』
『……』
『大丈夫よ?椿は独りじゃないもの。私がいるわ』
『……けど…』
『…なら、貴方に唄を届けましょう。唄は、言葉も人も種族も、何の隔たりも無いのだから』
『……うた…?』
『そう、唄。唄はね?時代も世界をも越えて、いつまでも遺せる素晴らしいものだわ…!』
『時代も…世界も…』
『山に育む緑、木陰に沈む夕日は、我らを包む。
流れる波の音色、磯に砕けるしぶきは、我らに語る。
闇に瞬く光、深々と降る姿は、我らへ贈る。
全ては私達を導く、星のしるべ…』
『…●●●●…?』
『届けましょう…この唄を。与えましょう…貴方を救いたいと願う唄を…』
『…僕を、救う…?』
『ええ。…今の貴方に、必要だと思ったから』