06.よみがえる幻影
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「あ、あの…貴女は…?」
「…私は「ギリオトって言うんだよォ~~!」
「へ…?」
「……」
折角名前を伝えようとしたところを、ベルキアが遮り邪魔をする。
怒りを静かにこみ上げるオトギリは片手でベルキアの両頬をギリギリとつまんだ。
「ちょっとぅおゥ(ちょっと)~~!ぬぉにするんどよォ(なにするんだよォ)~~~!!」
「…困ります。私はオトギリです」
説得するオトギリ。
蒼は「あ、あの…落ち着いてください」となだめた。
「あの、私は蒼です。夜明蒼と申します。よろしくお願いします、オトギリさん」にこっ
「!……よろしく、お願いします。…蒼さん」
蒼のふんわりした笑顔に、オトギリはほんのわずかだが目を見開く。
まるで足跡一つ無い真っ新な雪原のような、晴天に浮かぶ白い雲のような…そんなイメージだった。
オトギリの鼓動もドキンと動かされ、思わず目を逸らしてしまう。
そんな二人の様子を見て、椿はふと笑みを零すと、「ごちそうさまでした…」と手を合わせた。
──────────……
「ふ~…」
お寿司を御馳走になり、ベルキアたちは帰っていくのを見送った後、蒼は手洗い場にて手を洗っていた。
置いてある紙タオルで拭いた後、鏡に映った自分と目を合わせた。
思わず手が止まり、そして鏡に手を当てて、そっと呟いた…。
「…私、何を忘れているんだろう。……私の、何を…」
蒼は先程の椿達との食事風景を思い出した。
みんなで騒ぎながら寿司を食べて、きっと…自分にも家族がいたら、あんな風に賑やかな食事風景があったのだろうか…と。
(……真昼くんには伝えてないけど…私の、両親は…。いや、そもそも私には…)
蒼には両親がいない。
事故で亡くなったのだと思ってはいるが、原因も理由も何もかも、蒼自身は知らない、というより…。
ただ、どちらも優しい人達で、優しい笑顔を浮かべていたような、そんな記憶だけは残っている。
ゆっくりと目を閉じ、もし両親がいたらどんな風景だっただろう…と、想像してみた。
テーブルを囲んで…
笑顔を絶やさずに…
ご飯を食べて…
おかずを口の中に入れてくれて…
端についたおかずを取ってくれて…
─────『沢山食べてね』─────
─────『慌てずにゆっくり食べるんだよ?』─────
「え…?」
目を見開く蒼の脳裏に聞こえた、ふんわりした口調の女性の声、落ち着いた口調の男性の声。
それがなんなのか考える暇も無く…!!
キ ―――――――― ン ッ !!
「っ!!?…っま、また……耳鳴り…っ!」
大きな耳鳴りが蒼の中を走る。
両耳を抑える蒼の中に、誰かの声が聞こえた。
─────まだだめよ…─────
─────まだだめよ…─────
「え!?……今のは…ダレ…?」
響くように聞こえた声の主が分からないまま、蒼の表情は曇り続ける。
耳から手を離し、下を向きながら鏡に手を当てた。
「…まだ、だめ…?」聞こえた言葉を、一言繰り返して…。
最後に響いた声の主にかき消されたように、蒼の記憶には既に二人の声は無くなっていた。
未だ鳴り続ける耳鳴りを抑える為、紅茶が入ったポットの蓋をカチャンと閉じるように…蒼は思考を停止させた。
…すると。