05.信じてたもの
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「きっと、変な人に襲われたんでしょう?」
「え…」
「だって桜哉くん、警告してくれてたもんね。でも警告してくれたのに、その本人が襲われちゃうなんて…ついてないね」
「……蒼、オレ…」
「服も、血が付いてるだけみたいだね。破れてないし…大怪我じゃなくて良かった…」
「……っ蒼…オレ…オレっ…」
「?……桜哉くん…?」
俯く桜哉を不安そうに見守る蒼。
まるで子をあやす親の様に、ふわりと桜哉の頬を撫でてあげた。
「他に、どこか怪我してるの?」問いかける蒼の目に映ったのは、目をぎゅっと閉じて今にも泣きそうな表情の桜哉。
首を横に振る桜哉の身体は未だに震え続け、蒼も困ったような表情だったが、すぐに笑顔を取り繕い、囁くように優しく言葉を紡いだ。
「大丈夫、大丈夫よ?…もう怖がらなくていいんだよ」
「っ……蒼っ!」
桜哉は蒼を強く抱きしめる。
放り投げるように、蒼の傘は地面に落ちて水しぶきがパシャンと飛び散る。
強い雨のせいで、蒼はすぐにびしょぬれになった。
だがそんな事などお構いなしに、桜哉は蒼を抱きしめている。
「さ、桜哉くんっ!?」
「……っ蒼…蒼…っ」
「…よしよし、怖かったね…。大丈夫、もう大丈夫よ」
震え続ける桜哉の背中をさする蒼。
蒼の優しさに触れ、桜哉は己の虚像に虫唾が走った。
だが同時に、安心もしていたのだ…細い通り道に隠された“あるもの”に蒼が気が付かなかった事に…。
桜哉は蒼の肩を掴み、離れてようやく、ちゃんと蒼を見た。
すると蒼はふっと笑い「良かった…」と呟く。
「…?」
「ちゃんと、見てくれたね」
「……蒼…」
「ん?」
「……ありがとう…」
まだ泣きそうな顔で、けれど精一杯の笑顔を見せる桜哉。
落ちた傘を拾い、蒼に持たせた。
「わりぃな、制服…濡れちまったな」
「…ううん、それは桜哉くんもだよ。家まで送ってくよ、傘壊れたんでしょう?」
「っはは、それは男がやることだろ?オレは大丈夫だから、蒼は早く帰れよ。風邪引いちまうだろ?怪我だってしてるし」
「…でも」
「大丈夫だって、な?オレも早く帰るからさ」
「………うん、分かった…」
どこか腑に落ちないまま、蒼は桜哉と分かれた。
しばらく歩いていた蒼だったが、桜哉の表情が気になっていた。
「ありがとう」と言った時の無理した笑顔、今まで見た事がない泣きそうな表情。
我慢ならず、一度曲がった道をもう一度引き返そうと、蒼は後ろを振り向き桜哉を追いかけようとした。
「…え……?」
道の角で隠れるように先の道をこっそりと見る蒼。
ずるずると何かを引きずる桜哉が、どこかへ歩いて行く。
さっきはなかった、まるで人の形をしているよう。
雨のせいで視界が悪く、遠目の為姿ははっきり見えない。
こっそりと、後をつける事にした。