05.信じてたもの
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──────────……
病院にて、診察を終えた蒼。
雨が強くなるという情報が流れていた為か、診察待ちの人はそれほどいなかった。
早めに終わった蒼は、包帯とガーゼと薬を渡され、会計を終えて病院のドアを開けた。
「わぁ…凄い雨。さっきより強くなってる…早く帰らないと」
真昼くんとクロ、帰り大丈夫かな…そんな事を考えながら、傘を差して雨の中を歩き始めた。
時間を見れば、もうすぐ約束の七時を迎えようとしている。
しばらく商店街を歩いていき、ふと顔を上げると、遠い所で見知った後ろ姿を蒼の目が捕らえた。
「あ、あれは…」小走りでその後ろ姿の元へ向かった。
「桜哉くん?」
「っ!!」
あまりの驚きだったのか、ビクリと肩を大きく上げ震わせた。
思わず蒼も立ち止まり、ゆっくりと桜哉に近付いた。
けれど桜哉は、蒼の方に振り返ることはなかった。
「どうしたの?雨凄いのに、傘も差さないで…お買い物は終わったの?傘無いの?」
「……っ蒼、こそ…病院に行ったんじゃないのかよ」
近付いた桜哉に、後ろから傘を差してあげた蒼。
学校を出る前、怪我をして病院に行くから買い物に行けない事を先に告げていた為、まさか鉢合わせするとは思っていなかった桜哉。
未だに顔を蒼の方に向けない。
「行ってきたよ?近くの病院。こんな雨だし人が少なくて、診察も早く終わったの」
「……そ、そっか…」
「?……あ…」
下を見てみると、無造作に壊れたビニール傘が転げ落ちているのを目にした。
もう一度桜哉を見やる。
震えは止まっていない…流石に蒼も不安になり「ねえ、桜哉くん」と名前を呼んだ。
またビクッと肩を上げる桜哉は硬直したままだ。
いつもの明るくて楽しい桜哉じゃない、こんなに震えていて、不安なオーラを出している桜哉は見た事がない。
「ねえ?…どうして、こっちを見てくれないの?」
「……っ…」
「何かあったの?」
「……っ……オレ…っ」
蒼は桜哉の前へと移動した。
「っ!!?」そして目に映ったのは、服に飛び散っていた赤いもの。
それが血だという事は、一目見て分かり、ばっと服を掴んだ。
「桜哉くんどうしたの!?これ、血じゃない!!怪我してるの!?やっぱり何かあったんじゃ…!?」
「……っ!蒼、どうして…」
顔をゆがませる桜哉。
よりによって、何でこんな所で…。
そんな風に思っていた桜哉だったが、蒼から出て来た言葉は全く予想しない言葉だった。
「どうして早く言わないの!!?」
「っ!?」
「怪我してない!?どこか痛い!?」
「あ…いや…」
「もうっ!ダメよ、ちゃんと言ってくれないと!」
「……蒼」
ポケットからハンカチを取り出し、顔にも飛び散っていた血を拭き取る蒼。
「顔は…ただ血が付いてただけみたいね」ホッとしたような表情。
あっけらかんとしている桜哉は、ただされるがままに血を拭きとられていた。
顔に付いていた血を拭き終わった蒼は、桜哉と目が合う。
「怪我は?どこにしたの?」
「……っ」
「……あ、手首っ」
左手を持ち上げると、切り傷が見えた。
「はい、これ持ってて?」傘を桜哉に持たせ、ハンカチで優しく包んで結んであげる。
キュッと結んであげると、蒼は困ったように優しく微笑んだ。