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ヒュッ
(え…?)
蒼は真昼の中へ吸収されていったのだ。
そこは暗闇の世界、透けた蒼の隣には、あの小さな真昼も立っている。
辺りは真っ暗、自分の足元しか光っていない。
まるでそこは、今いる自分の世界だ…真昼はまたもしゃがみ込み、その場所から動かず震え始めた。
きっと泣いているのだろう…。
……すると……。
『人の子よ…何を泣いている?』
『え…?』
『しくしく、しくしく、と…声が聞こえたものでな』
『…おねえさん、だれ?』
『私の事は気に留めなくとも良い。…人の子よ、何がそんなに悲しいのだ?』
(…真昼くん、姿が見えてるの?)
蒼には声の持ち主の姿が見えない。
だが確かに、真昼は顔を上げて目の前の誰かと話をしている。
そしてその声は…ズームインされた時に聞こえた、あの声に少しだけ似ていた。
…けれど、さっきの声とは、話し方が違う……とても落ち着いていて、まるで遙か昔から生きているような…そんな口ぶり。
『…母親を、亡くしたのであろう?』
『!なんで…っ』
『そんな事を気に留める必要はない。…何か、言われたのか?…学校とやらで、何かされたのか?』
『ううん…何も……』
『では、何故だ…?何故そんなに悲しいのだ?』
女性はしゃがみ、真昼の頭に優しく手を添えた。
泣きながらも、真昼はゆっくり言葉を続ける。
『みんな…優しかったのに。遊ぼうって言ってくれたのに…なんでだろ。なんか…なんにもしたくないんだ…』
『そうか…己の気持ちが分からぬまま、涙を流しているのだな』
うずくまる真昼の両肩を持ち上げ、気を使って泣き顔を見ないようにしながら自分の胸へ優しく抱きしめる女性。
そして真昼の頭を優しく撫でた。
『……今気付かなくとも、目を覚ませば分かることだ』
『…?…どういう、こと?』
『何も考えなくて良い。…ここには、私とそなたしかおらぬ。時間も空間も、何もかもから切り離された世界。だから…』
『…?』
『思う存分、泣くが良い。強さを得る為には、泣かぬ事が一番だが…泣いて分かる強さもある』
『……っ』
『泣いた分だけ、人は優しくなれる。そうやって、人は様々な事を知り、学び、そして成長してゆくのだ』
『う……ひっく…』
『今は……ただ…泣けば良い。それがいつしか…誰かと向き合う時に、必要になるのだから』
『うっ……ひっく…うぁ……うぅ…っ』
『大丈夫…大丈夫だ』
(……なんて、優しい声。でも、寂しそうな声……そっか…真昼くんは、この人に支えられて…今があるんだ…)
真昼はその女性の服にしがみつき、大声を上げて泣いている。
誰かに抱きしめられている真昼の姿を見守り続ける蒼。
その誰かは、全く持って見えないが…確かにそれは、真昼の中で、一つの支えとなっているのだ。
泣き疲れた真昼は、女性の膝の上に頭を乗せ眠っている。
女性は、真昼の頭を優しく撫でていた。
蒼には、眠っている真昼しか見えないが、一緒に頭を撫でてあげた。