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「……ずっと、待っていたよ…」
「え…?」
椿の言葉に目を見開く蒼。
どういう意味なのだろう?その回答も貰えないまま、今度は真昼の腕へコンと着地する。
「蝶とか蛇とかいろいろいるよ?」
猫の姿になっているクロと、真昼の背中の上で尻尾をべしっべしっと叩き合った。
「なっ…。いててててっ、人の上でケンカすんなっ」
そしてコンと鳴き、またくるりと一回転する椿。
それを見た真昼は身近な動物を連想した。
「犬…!?じゃないか、しっぽ…」
「…あはっ。ひどいなあ、狐だよ?」
人の姿に戻る椿は、下駄をコンッと鳴らし着地した。
「あははははっ犬だなんて!!あっは!!あはははははははははは」
「何だよっ、何がそんなにツボだった…」
真昼が頬を紅潮させながら言っても、椿は笑いを止めない。
だが先ほどと同じようにピタっと止まり「あ――――面白くない。」と口元に袖を添える。
ふう…と溜息付きで。
「…なんかこいつ、すげームカつくな」
「まあまあ、落ち着いて真昼くん」
苛立ちを見せる真昼をなだめる蒼。
よじよじと上る猫のクロと目が合った蒼は、どこかぎこちない笑みを見せる。
椿に何か言われたのか、どうした?と言いたげなクロだが、それを余所に真昼は椿に叫びかかる。
「お前っ、クロの兄弟ならどうしてクロを攻撃するんだよっ」
「?人間だって兄弟ゲンカするじゃない」
まるでなに当たり前な事を言っているんだ?とでも付け足しているような表情をする椿。
「そいつは昨日、椿に言われて来たって言ったんだ」
「おいおい…」
「お前が…俺たちや他の人間を襲うように言ったのか」
「お前…こいつと話あんの?じゃあオレその辺で待ってるからごゆっくり…オレ関係ないんで」
「ちょ、だ、ダメよ!人の話は最後まで聞かないと!」
「いや、オレ関係ねーし…」
人の姿に戻っていたクロがそそくさと立ち去ろうとするところを、蒼は引き留めようと手を握り声を掛けた。
すかさず真昼はクロの服を引っ張り「逃げんな」と引きとめる真昼。
「戦争しよっかって何だよ…シンプルに答えろ。『吸血鬼』って噂の通り魔も…お前の命令か?」
「…真昼くん」
「…“椿”。人を殺してるのか?」
椿は冷やかな笑みを露わにした。
真昼の質問にまるでそんなの関係ないとでも言っているかのように…。
「だったら何?僕、人間は好きじゃないんだ」
「……っ」
椿の言う言葉一つ一つに、蒼の表情は険しくなっていく。
胸をぎゅっと握り、まるで自分自身がそう感じているように思ってしまう。
様子がおかしい蒼を、クロはただジッと見ていた。
「君だって吸血鬼が嫌いだからこの子をやっつけたんでしょ?」
「つばきゅ~~~ん。このガキひどいんだよォ~~。ボクのこと八つ裂きにしてさァ~~~~っ」
椿に襟をつままれたままのベルキアは、ぺっぺっとつばを飛ばすような動作で口を尖らせ、不快な表情を見せた。
「お互い様じゃない?」そう言う椿の言葉は続く。
「ねぇ、城田真昼。昨日この街で何人死んだか知ってる?知らないよね?
じゃあそのうち何人を僕らがやったとかやらないとか…どうだっていいよね?」
逆に真昼に問いかける椿。
ただ聞くしかない蒼は、もし真昼の立場が自分だったとしたら…きっと何も答えられない。
知る由もない。
誰が死んだか、何人死んだか…この世界、この時間、この一分、この一秒、何人死んでいるのかなんて、わかるものではない。
まるで全てが自分を責めているかのような…そんな気持ちに侵されていく。
震える身体、それが握っているクロに振動した。
「……“蒼”…?」
名前を呼んでみたものの、自分の気持ちに必死な蒼は返事など出来る筈もなく…。
真昼は椿の問いかけに答えることなく叫んだ。