02.椿
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「あ」
思い出したように一言、龍征は自分の鞄から袋を取り出した。
それを蒼にずいっと差し出す。
「蒼、これ」
「…え?なに?」
「…止血に使ったタオル、あれ洗ったんだけど血が落ちなくてさ。ウチにあった貰いもんのタオルだけど」
「……」
「わりーな。あれ、愛用してたやつだろ?」
何も言わずにカサカサと袋を開け、タオルを取りだした蒼。
あ…と思わず声が零れる。
白く綺麗なタオルの端の真ん中には、♪のマークが刺しゅうされていて、蒼は龍征をもう一度見直した。
「…龍征くん」
「あ?」
「本当に、もう大丈夫なのね?」
「あ、あぁ…」
「そっかぁ…良かったぁ…」
手を口の前で合わせ、思わず涙がほろほろと零れる蒼、それでもホッとした為笑みを浮かべた。
感情が高まり泣いてしまった蒼に、「おい、泣くなよ」と困ったように言う龍征は、ポンポンと頭を撫でてやる。
虎雪も桜哉も、やれやれといった表情で見守っていた。
「ありがとう、タオル。大切に使うね?」
「おう。つか、礼を言うのは俺だろ……さんきゅ」
「…うんっ」
HRが始まり、授業が始まっていく。
蒼はさっきの話が気になっていた。
変な話、吸血鬼に会ってはいない代わりに、首の怪我は事故のせいだとされている。
蒼はいたが、真昼はいない。
思い出せば、あれだけ騒動があったにも関わらず、野次馬もいなければ警察すらいなかった。
(無理矢理、辻褄が合わされている…合っている事といえば、私が止血した事だけ…)
ちらりと真昼の机を見てみるが、今日の登校時間までに、真昼は姿を現さなかった。
きっとまだ寝ているのかもしれない。
あれだけの騒動があって、訳の分からない事が立て続けに起こったのだから、無理もない。
(……真昼くん…)
外の景色をぼんやり見ながら、真昼が心配でたまらないままの気持ちが蒼の表情を曇らせた。
──────────……
そして昼休み、廊下からだだだだだだと走ってくる音が聞こえた。
勢い良くバンッと扉が開かれ、そこには血相抱えて来た真昼の姿。
「龍征っ!?」
「あ、真昼くんっ」
「おー真昼!もう昼休み…」
「蒼っ、桜哉っ…二人だけ!?龍征は!?」
「あ…………あ――――――…」
真昼の表情が強張る…。
まさか…と、信じられない瞳で絶望的な感情。
それをすかさず蒼は声を掛けた。
「あ、あのね?真昼くん、龍征くんは…」
「桜哉!おらコロッケパン!これでいいんだろ!」
購買すげー並んだんだぞ!!、怒鳴り声と共にコロッケパンが桜哉の頭にべし、と当たった。
いてっと桜哉が声に出し、蒼は跳ね返ったコロッケパンをキャッチしようとするが… 。
「あ、あわっ…あ、あ~~…」ボトッ…
手で跳ね返り、まるでお手玉のように一・二度跳ね、結局落とした。
しくしく…悲しそうにパンを拾う蒼は、「どうして、私はこう、いつもキャッチが下手で…」とパンを撫でる。
正確にはパンを入れている袋を撫でて話しかけている。
後ろにいたのは、パンを持ってコロッケパンを投げつけた龍征と、一緒に購買に行っていた虎雪がいた。
「龍征!?」
「あ?」
「あっ真昼、来たんだー?」
桜哉の言おうとしていた雰囲気とは打って違い、首に巻いている包帯以外は大丈夫そうにしている。
「………さっきのは何だよ」
「いや――、なんか真昼がマジだったんで乗っかってみました…♡いたたたたごめんなさいごめんなさい」
あ~~~~っと必死に床をばしばし叩く桜哉に、ぎり…と足を持ち逆エビをくらわす真昼。
真昼の様子に?しか出ない龍征に、真昼は昨日のやられた所が心配で問いただしてみた。