02.椿
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一方で、蒼はもう一度真昼の部屋を覗く。
さっきと変わらない光景、すー…と眠っている真昼とクロ。
ホッとした蒼は、小さく「おやすみなさい…」と言って静かに扉を閉めた。
そして真昼宅を出ていき鍵を閉める。
因みに真昼と蒼は、お互いにそれぞれの部屋の合いカギを所有している。
信頼し、何かあった時の為にと、それぞれ渡しているのだ。
「ふぅ〜…疲れたなあ」
自分の部屋に戻った蒼は明日の準備を済ませ、どっと疲れが出てきたのかベッドに入ると直ぐ様眠気に襲われる。
さっきとは打って違い、静寂に包まれる部屋。
やっぱりさっきの人形を連れておけばよかっただろうか…なんて事を考えたが、クロや真昼、龍征達を襲った人。
だがさっきの言葉を聞いて、それほどでも悪い人ではないと思いもしたが…。
嗚呼…頭がぼうっとする
眠い…眠ろう……
蒼は静かに眠りについた。
──────────……
次の日の朝、すっと目が覚める蒼。
朝陽がカーテンの隙間から零れ、むくりと身体を起こした。
時計を見れば、まだ6時頃…起きるにはまだ早い時間。
はっきりした意識の中、カーテンを開けて朝陽を浴びた。
「準備しなきゃ…」呟く蒼は部屋着から制服へと着替え、学校用のショルダーバッグを持って自分の部屋を出た。
準備が整い、静寂に包まれる部屋を出て、鍵を掛けた後に動きをピタっと止める。
隣の真昼の部屋を見て、チャイムを鳴らそうとしたが、寸前で鳴らす事を止めてそのまま学校へ向かうことにした。
朝早すぎてしまった為、気を使って先に行こうと決めた蒼は、とりあえず真昼の携帯へ先に行くとメッセージを送り、とことこと歩き始める。
早い時間の教室は誰もいない。
ポツンと一人、自分の椅子に座り、机に頬杖をついて考え込んでいた。
“SERVAMP”
“椿”
“異質”
この言葉に どうしてか反応してしまう…
聞く度に、心臓の鼓動が大きく揺れる。
“SERVAMP”…自分も何か、深い関係がしてならない、知っているような言葉。
“椿”…懐かしい、でもとても切ない気持ちになる。
“異質”…この言葉が胸に引っかかる…まるで、魚の骨が突っかかってるみたいに。
分からない…もやもやした感情が渦巻く。
答えが出ないまま、はぁ…とため息をつくしかなかった。
段々と同じクラスの人たちが入ってくる。
おはようと挨拶を交わし、真昼がいないのと朝早くから来ている事に珍しいと多々言われる蒼。
そんな中、桜哉が入ってきた。
「おーっす、蒼ー」
「あ、おはよう桜哉くん」
「あれ?真昼は?一緒じゃねーの?」
「…うん。私が朝早く起きちゃったから、起こすの悪いなと思って先に来たの」
「そっか。…蒼?」
「ん?」
眉をひそめる桜哉は、蒼の前髪をスッと上げて顔を覗きこんだ。
「なに?どうしたの?」きょとんと問い掛けてきた蒼に、桜哉は心配そうに言う。
「疲れた顔してっけど、大丈夫か?学校休んだ方が良かったんじゃねーの?」
「…ありがとう、心配してくれて」
「蒼…」
「ありがとうね、桜哉くん」
ふんわりした微笑みに、不安は募ったが桜哉は安心し、「あんま、無理すんなよ」と言いながらぽんぽんと頭を撫でてやる。
…すると、虎雪と龍征の二人が入ってきた。
「おはよー蒼、早いねぇ」
「おーっす」
いつもと変わらない虎雪と、首に包帯を巻いている龍征。
二人の姿を見た蒼はガタンと席を立ち、勢い良く走り寄った。
「虎雪くん!龍征くん!あっ龍征くん大丈夫なの!?」
「へ?あーこれか、別に大丈夫だけど…」
「大丈夫って…だって昨日、あんなにっ」
「蒼が直ぐに止血してくれたから、龍ちゃん大丈夫だったんだよ~」
「え…」
・・・・
「交通事故に遭ってさ、近くにいてくれて良かったよ。
・・・
止血して直ぐに救急車呼んでくれてさ」
「え?……交通、事故…?救急車?」
「病院の人も褒めてたよ?早急な処置だったって」
「え、え?待って?だって昨日、ベルっ…へ、変な人が襲ってきて、その人に首を噛まれて…でも、真昼くんが助けてくれて」
「えー?何言ってんの蒼、まるで吸血鬼が出たみたいに。桜哉みたいな事言ってるよ?」
「つーかそもそも、真昼はいなかっただろ?」
「っ……」
自分の知っている出来事と、虎雪たちの言っている出来事が異なっている。
昨日は手品師の吸血鬼に首を噛まれて、襲われた龍征のもとへ虎雪と真昼と蒼の三人が駆け寄っていた筈なのに…。
茫然として目を見開いている蒼に、桜哉は近付き「蒼?」と声を掛けてみるが返事がない。
信じられないのだ…自分の知る現実と、虎雪達の言う現実が違っている事に…。