02.椿
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「ありがとうございました。真昼くん以外で、こんな夜中に楽しく話せたの初めて♪…本当にありがとうございます」
「……キミさァ」
「また、変な人間ですか?」
「……」
「?」
「優しいんだねェ。変なの、人間のくせに」
「人間にも優しい人はいますよ。そりゃあ、悪い人も多いけど…」
「ボクは人間なんて信じてないから。人間なんて、みんな死んじゃえばいいっ…」
「……」
その言い草は、まるで誰かを思うが故にそう言っているように聞こえた。
多分、椿という名の人の事だろう…。
そう思わせるほどのカリスマ性があるのだろうか?
きっと何かあったのだろう、だからそう言うのだろう。
きっと、その椿という人に、救われることがあったのだろう…。
ぎゅっ…
「?…なに?」
手品師の人形を抱きしめる蒼。
その行動に理解が出来ないとでも言いたそうな様子の人形。
蒼は人形の背中を優しく撫でてあげた。
「きっと、つらい事があったんですね。そう思ってしまうほどの事が」
「……」
「私には何も分からないし、何も知らない。だから…言ってあげられる言葉が見付からなくて。…ごめんなさい」
「何でキミが謝るのォ?何もしてないジャン」
「そう、ですね。何もしてないし、何も言えないし…何も出来ないから、でしょうか」
バツが悪そうに「私が聞いても、意味なんてありませんでしたね。えへへ…」と苦笑した。
悲しそうな笑みが、手品師の心を大きく揺さぶらせた。
何故、他人の事なのに…自分ごとの様に考えて、悲しそうにするんだろう?
どうしてそんなにも、つらそうに、でも無理に笑顔でいるんだろう?
さっきからそうだ…この娘はどうして、そんなにも。
そして何で…?…手品師は手を伸ばした。
ポムッ
「!」
「…そんな事、言うなよォ…」
伸ばした手は、蒼の頭をポムポムと叩いてあげた。
まるで子供をあやすように…。
そんな行動に、蒼もポカンとしてしまったが、意外な行動に思わずクスクスと笑った。
「ありがとうございます。私、そろそろ帰りますね」
「え~ボクも連れてってよォ~」
「ダメです」
「ケチィ。そういえば、怠惰の主人(イヴ)と親し気だったみたいだけど、どういう関係なのォ?」
「どういうって…お隣さんですよ?私、この部屋の隣に住んでるんです」
「…ふぅ~ん。じゃあいいじゃ~ん!連れてってよォ~!」
「ダメです」
「チェ…ケチィ~」
「はいはい。私はケチですよ~」
人形をテーブルの上に置く…どこか名残惜しそうに。
リビングを出る時に、蒼は振り向き手品師に尋ねた。
「貴方は、何者なんですか?」
「…相手に聞く時は、自分から名乗るのが礼儀なんじゃないのォ?」
「あ、そっか…ごめんなさい。私は蒼、夜明蒼です」
「蒼、かァ」
「貴方は?」
「ボクはベルキア。串刺し公ベルキア様だ」
「ベルキア様さん、ですね」
「いやいや!様まで名前じゃねーヨ!」
「じゃあベルキアさんですね。おやすみなさい」
パタン…とリビングのドアを閉めた。
既に出て行った蒼に向かって、はあ…と溜息をつくと「ホント…変な奴…」と、ベルキアは呟いた。
暗がりの部屋、手品師の胸は未だに熱い。
ドクン、ドクン…と、大きく動いている。
何故あの娘が悲しそうにしてたり、困っていたり、無理に笑顔を作っていたりすると、こんなにも動揺するのだろう…。
何よりも、あの歌…あの歌声を聞いて、どうしてこんなにも胸が熱くなったのだろう…。
分からない思いが、手品師の中を渦巻いた。