02.椿
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「なんだよお前、さっきからジロジロ見てんじゃねーぞォ!!」
ビクゥッ
「はいぃっ!!ごめんなさいっ!!」
手品師の人形は、じっと見やる蒼に向かって叫んだ。
いきなりの大声と怖い言葉遣いにしゃがみ込み、思わず謝罪する。
「アハハハ☆こんなのでビビッてやんの!人間てホント馬鹿だよねェ~☆」ケラケラと手品師の人形は笑っている。
その間に蒼はゆっくり立ち上がり、そろそろ…と人形が置いてあるテーブルに近付いた。
「あ、あの…」
「あァ?」
「あ、貴方誰ですか?どうして、真昼くん達に?」
「そんなこと知ってどうすんの?何にも出来ない無力な人間のくせに」
「う…」
「アハハハハッ☆キミって馬鹿なのォ?さっきも無力で馬鹿な人間を庇ってさァ!」
「なっ、ば、馬鹿じゃありませんっ!テストの点はいいです!……体育以外は…」
「はあァ?そういうことじゃねぇよォ!体育ダメとかなにソレェ~~~!アハハハハハッ☆」
ムッとする蒼。
すると人形をがしっと掴み、ゆっさゆっさと縦に揺らした。
「ちょっ!やめろよォ!」頭や手足が縦に思いっきり揺れることに人形は抵抗ができない。
それでもやめない蒼。
「あ~もう~!なんか気持ち悪くなってきたしィ~!おえェェ〜…!」
人形は泣き叫ぶように制止を乞うた。
「…馬鹿って言わないでください」ゆっさゆっさ
「分かった、分かったからァ!もうやめろよォ…!…うえっ、さすがに気持ち悪く…なってきた……」
「…じゃあ、もう言わないですか?」ゆっさゆっさ
「言わないよォ~~約束するからァ~~…」
「……分かりました。約束ですよ?」
揺らしていた手を止める蒼、と同時に…。
「バーカバーカ!やーい騙されたァ~~~!!ギャハハハハッ☆★」
「………っ…」
「へ?…な、なんだよォ~…」
手品師の目に映ったもの…それは…。
「……言わないって、約束したのに…っ」ポロッ
蒼の瞳から涙がぽろぽろと零れていた。
手品師が泣かせた。
まるで小学生のやりとりのようだ。
好きな子ほどいじめるという、幼き日の男子…それが今正に手品師というわけだ。
蒼の涙に手品師は慌てふためき、手をバタバタさせた。
「なっ、なんでそんなことで泣くんだよォ~~!ジョーダンでしょォ~~?」
「ダメ……冗談でも、傷付くんだから…」
「~~っあ゙~~~~もうっ、分かったよ!もう言わないから!ゴメンてェ!」
「……本当に、もう言わないですか?」
「言わない言わない!言わないからァ…泣かないでよォ~~…」
「…本当に?」
「本当に!」
手品師の声は、本当に困ったような様子だった。
「……うん」蒼は涙を拭い取り、ふっと笑うと、人形をそっと抱いた。
そして手品師は思う。
(…普段ならこんなに慌てないのに……あっても“あの人”くらいなのに…)
間違いをしちゃった後、ダッツ一個じゃ許してくれなくて、機嫌を直してもらおうと二個に増やしたら機嫌が直る。
手品師の中で思い浮かべる“椿”その人だ。
この娘にも、似たような感じを受けた…と、それが何故かは、分からないまま。
今抱かれていて、何故かとても心地が良いことも…。
「何でかな、私……ごめんなさい、困らせちゃって…」
「はあ?自分で泣いといてなに言ってんのォ?」
「…う…っ」しゅん…
「っあ〜〜もう〜〜!別に困ってるとか言ってないジャン!ゴメンて言ったジャン!なんならお互い様でショ〜!?」
「…ふふっ、優しいんですね」
「はあァ?」
「あの…聞いてもいいですか?」
「なんだよォ」